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 監獄に到着した。看守にコレクターの監房へ案内される。

 コレクターの監房は、ミスリルという貴重な金属で作られていた。魔力を通さない点は他の金属と同じだが、最大の特徴は、透明であるという点だ。

 透明なため、コレクターの様子が一目でわかる。本を片手にくつろぎながら、菓子を食らう姿に、居合わせた誰もが、看守さえも唖然とした。


「わっ、みんなどうしたの! ボクに会いに来てくれたの! 嬉しい!

 え、これ? 何言ってるんだ、君がくれたんじゃないか、看守さん」


 必死に否定する看守を、コレクターは笑う。


「冗談だよ、冗談。クビにされたんじゃ、たまったもんじゃないよね」


 コレクターを前にして、古の勇者は緊張していた。


「今度は誰をたぶらかしたの、コレクター」


「人聞きの悪い、そんなことはしていない、時と場合によるけど。君には、ボクはいつだって真摯に接してきた。こんなちっちゃい頃からのよしみじゃないか、ボクをここから出してくれないか?」


 古の勇者は、声を荒げる。


「ふざけるな。私たちに何をしたのか、忘れたとは言わせない」


「苦労する君の家族を見かねて、助けてやった」


「二人とも、私を、忘れてしまった。どうして、あんなことを」


「悪魔と天使という禁断の恋に落ち、駆け落ちまでした君のご両親。慎ましくも幸せな家庭を夢見ていたのに、可哀想に、生まれたのは君だった。

 思い出せ。この子さえいなければと、そんな目で君を見たことがなかったか。ボクは、その願いを叶えてやっただけだ」


 ショックを受ける古の勇者は、何も言葉にできなかった。

 その様子に、コレクターは楽しそうだった。


「嘘だよ、嘘。君のご両親は、最後まで君を守ろうとした。だから記憶を消しただけだ、よかったな」


 古の勇者が顔を手で覆い隠して嗚咽を漏らす中、コレクターの笑い声が監房に響いていた。

 ぶん殴って黙らせようとすると、コレクターは怯えた。


「か、考えてみろ! 我が子がボクと一緒に封印された姿を、無念に死ぬまで見続けるより、こっち方がマシだろ! 優しさだよこれは!」


 忘れてしまうことと、どっちがマシなのだろう。

 そもそもコレクターさえいなければ、そんなことは起こらなかった。


「いなかったらよかったのにな! いるんだから仕方ないさ! ボクはこんなやつなんだから! ハハハハ!」


 足元がおぼつかない古の勇者は、ふらりとコレクターに近づく。


「……私が、お前と一緒に封印を? どういうこと?」


 古の勇者は、コレクターと一緒に封印されていたことを知らなかった。


「ボクにもいろいろあってね、君と一緒ならいいと思ったんだ。別に理解してもらおうとは思わないよ」


「そう……。どうでもいいか……。お前さえいなくなれば……」


 古の勇者は、コレクターの首元へ向けて、なぞるように手を動かした。

 コレクターの首に一筋の線が走る。線から血が滲むと、コレクターの頭がずるりと地面に落ちた。



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