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聖女とついでに他の三人の入学を、学園側に要望すると、すんなり話が通った。諸々の費用は、聖女の分は薬の収益から引き出される。そして、形式上の入学試験を受けることになった。
学力や適性を見極めるもので、結果は気にしなくてもいい。貴族と同じ待遇だ。俺の筆記試験はどうしようもない成績だったが、魔法の適性検査を受けると、試験官の教師はざわついた。
「こんなに魔法の才能が乏しい人、初めて見た。
いや、ごめん、気を悪くしないで。魔法の才能がまったくない人は珍しくない。君には、ほんのちょっとだけある」
訓練すれば魔法を使えるようになるかもしれない。
「頑張ればきっと、日常のちょっとしたときに役立つ魔法なら使えるようになる」
希望を抱いた俺を、教師は傷つけず無茶な期待を抱かないように励ました。
「いいな。私は魔法が効かないし、使えないから」
フルルにとっては、そんな俺でも羨ましいようだ。
フルルも聖女と侍女も、上下の差が激しい貴族と比べれば問題ない成績だったが、競争を勝ち抜いて入学してくる庶民とは比較にならなかった。聖女は、そのことに負い目を感じていた。
初めて授業を受ける日。聖女と侍女は制服に着替えた。
「どこか変じゃないかな?」
「似合ってます。可愛いです。たまりません」
「何それ、本当かな」
帽子を深く被る聖女は、努めて気丈に振る舞っているように見えた。
学園に通うと決めてから、聖女は誰かと一緒に出歩くようになった。それでも落ち着かない様子の聖女の手を、侍女は握る。
「緊張するので、手を繋いでいってもいいですか?」
「仕方ないなぁ」
聖女と侍女は、手を繋いで歩いた。仲のいい微笑ましい生徒同士に見える。
その光景に感化されたのか、フルルに俺の手を掴まれた。
「緊張してるだろうから、手を繋いであげる」
大丈夫だと言っても構わず、フルルは俺の腕をぶんぶん振り回した。
聖女と侍女の二人が教室に入り、俺とフルルは別室に待機して時間を潰した。別室には俺たちだけではなく、貴族のお供の人もいた。
とりあえず俺も勉強をした。わからないところはフルルに聞いた。女神の恩恵は、頭も良くしてくれないだろうか。
授業が終わって出てきた聖女は、落ち込んでいる。
「全然わからなかった……。授業に追いつけるように、自習を頑張らないと……」
前途多難なようだった。




