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帰り道、勇者は別れまでのひとときを、聖女のそばで過ごした。
人と物であふれる王都に戻ってきた。天空の竜のクラン本拠地に降り立つ。
「また会いに行ってもいい?」
別れ際、勇者は聖女に尋ねた。
「うん。今度会うときは、違う顔を見せられるといいな」
「聖女様には、みんながついているから大丈夫。私も、一人では挫けそうだったとき、助けてくれた人たちがいたからこうしていられる。
どっちかというと、私の方が危ういかも。今度会ったとき、依頼で疲れ果てた顔をしていても、笑って迎えてくれると嬉しい」
「そのときは私が励ませるように、頑張る」
勇者は、楽しみにしていると返事した。
なぜ聖女は勇者にそう言ったのか、学園の居室に戻った聖女は宣言する。
「学園に入学して、生徒になりたい。
私は、ここにいれば自分を守れると思っていた。違う、みんなが守ってくれているだけだった。そんなみんなの力になりたいのに、何もできない。
私には、聖女の力の他に何もない。他に何かできないか探したい。いろんな人がいて、いろんな選択肢がある、学園に通いたいと思った」
聖女の決意に、侍女は嬉しそうだった。
「私は、聖女様が明るく過ごしてくれればそれでいいです。学園に入学するのがそれに繋がるのなら、ぜひお側に仕えさせてください」
「そうじゃなくて、みんなで一緒に入学とか、できないかな?」
侍女とフルルと三人で顔を見合わせた。それぞれ自分が生徒になる道など思いもしていなかった。
聖女は、申し訳なさそうだった。
「みんな私のために時間を費やしてばかりだから、もっと自分のために費やせるかと思って」
「それでいいから一緒にいるんです。気にしないでください」
「一緒に学園生活を送れたら楽しそうだなって。だめかな……?」
涙目の聖女に、侍女は観念した。
「そう望むなら、そもそも入学できるかは別にして、侍女としての仕事に差し支えない範囲でついていきます」
「それは私も同じ。でも、今はだめでも次はわからないし、別の道を考えることもできる。私一人じゃ挫けそうだから、みんなを頼ってもいい?」
「どこまでもついていきます。ただ、身の回りのお手伝いくらいしかできませんが……」
声を落とす侍女に、フルルが胸を張る。
「このフルル様と、ついでに女神の鉄球もいる。何でも任せて。力仕事しかできないと思うけど」
想像もつかない学園生活は置いておいて、フルルのついでらしいが、俺も何でも任せてほしいと思った。




