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 海水浴を終え、疲れたのか聖女と侍女が寄り添い眠る中、竜の庭へ出発した。


 孤島というには竜の庭は、圧倒されるほど大きい。中央に高い山がそびえ立ち、その裾野に森が広がっている。


 海岸に船着き場があった。接舷された船の上に、継ぎ接ぎドラゴンによく似たマリオネットがいるように見えた。しかし、よく見るとマリオネットではなく、生きている。


 荷物を首からぶら下げるそのドラゴンは、船から飛び立った。こちらに気づくと、触れられるかと思うほど近づいてきた。知性的な目と目が合う。見慣れない俺やフルルが珍しいのか観察したあと、継ぎ接ぎドラゴンを操るバロートや、手を振る勇者に挨拶するように一鳴きして、飛んでいった。


「あれがドラゴン。どう、可愛いでしょ?」


 迫力が凄くて、可愛いとかそれどころではなかった。


 ドラゴンを追って、船着き場の先の開けた居住区域へ向かう。そこでは、小さい人型の何かが、ちょこまかと動き回っていた。


「彼らは、竜の庭の管理人さん。初めて見ると思うけど、モンスターじゃないから安心して」


 初めてではない。俺は彼らを、ゴーレムを知っている。


「ゴーレムを? どうしてあなたが」


 勇者は困惑していた。


 居住区域の広場に下りると、数体のゴーレムに歓迎された。ゴーレムがたくさんいる。ハチの魔石を懐から取り出して、ゴーレムに見せた。


 びっくりしたゴーレムは、これをどうしたのかジェスチャーで必死に知りたがった。ハチと同じ愛くるしい仕草だ。


「それをどこで手に入れた?」


 そう聞いてきたのは、バロートだった。


 説明する必要がある。ゴーレムたちに囲まれながら、バロートと話をした。先史文明の遺跡に迷い込んだときのこと、女神のことを話すと、バロートはしばらく言葉にならない様子だった。


「……何もかもが懐かしい。君が迷い込んだのは、この世界とは別の世界、異世界だ。よく戻ってこれた」


 女神のおかげだと言うと、バロートは笑った。


「女神か。そう呼ばれるのを嫌がっただろう?」


 その通りだが、まるで女神を知っているかのような口ぶりだ。


「君の女神とは違うが、同じ存在に会ったことがある。複数いるんだ、彼らは」


 女神が他にもいる。これほど驚かされたのは人生で初めてだ。


「彼は女神と呼ぶにはほど遠かったから、それぞれ個性があるんだろう。彼は、自らを監視者と呼んだ。そして、ゴーレムを守護者と呼んだ。監視者と守護者は、同じ主に仕えた従者だった」


 バロートは、遠い目をしている。


「私も、彼らの主から自由を与えられた。やがて彼らの主がいなくなる前に、彼らも自由を与えられた。私たちが何者だったのか、すべては時の流れとともに遥か遠い過去となり、私たちは今の私たちになって今日を生きている。不思議な気分だ。

 久しぶりに当時を思い出した。ありがとう、女神の鉄球」


 よくわからないが、感謝されたのだからよかったのだろう。


「監視者……いや、女神をその身に宿す君と私が出会ったのも、何かの縁だろう。私にできることがあれば言ってくれ」


 こんな話を知っているバロートは何者なのか、聞きたくなった。


「今はこんな姿だが、私は元々ドラゴンだった」


 さすがに俺でもそんな嘘には騙されない。こうなってくると、さっきの話もどこまでが本当なのか怪しい。


「本当なのに。なあ、ゴーレム?」


 ゴーレムたちは、バロートの味方だった。


 すべて真実だというのか。頭を抱えるしかなかった。



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