表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/83

35


「聖女から本を借りてきたから、読み聞かせて」


 フルルは俺にそう言ったが、俺もほとんどの字を読めない。


「じゃあ、侍女に頼もっか」


 忙しいだろうに、侍女は快く引き受けてくれた。


 国家に仕える女将軍の話だった。戦いの中に生きる彼女の壮絶な人生と、戦友や王子、敵将までをも巻き込むラブロマンスが描かれている。


「恋愛ってやつか……」


 フルルは難しい顔をしている。


「二人は恋愛をしたことがあるの?」


 そういうのとは縁がない人生だった。


「わ、私も」


「聖女はどうなのかな。聖女ー!」


 フルルは聖女の部屋に駆け込んだ。


「……あるわけない」


「なんだよー。誰も経験ないのかー。

 じゃあ聖女、私と恋愛してみる?」


 フルルは聖女に顔を近づけた。フルルの外見は大したものなので、様になっている。


「し、しない! からかわないで! 出てって!」


 侍女を残して、フルルと俺は追い出された。


「本気だったんだけどな。怒らせたかな」


 フルルは反省していた。


 侍女が戻ってきた。


「フルルさん。聖女様ともう一度話をした方がいいと思います。お二人には仲良くなってほしいです」


「うん……」


 フルルは、とぼとぼと歩いていく。体を隠して、こっそり部屋を覗いた。


「聖女、怒ってる……?」


 辛そうな聖女は、首を横に振る。


「怒鳴ってごめんなさい」


「私こそごめんね。まだ友だちって思っててもいい?」


「……うん」


 聖女は、悲しそうなフルルにうなずいた。


「私、変だよね。聖女は私たち、オートマタを知ってる?」


「オートマタ?」


「人間の形をした作りもののこと。お母様と私たち姉妹の他には、数えられるくらいしか意思を持ったオートマタはいない。会う機会もほとんどなくて、ずっとお母様と城に二人きりだった。

 城に、人間が捕らえられたことがある。こっそり会って、話をした。私に外の世界を教えてくれた。もっと外の世界と人間を知りたくなったから、ここにいる。

 みんなと違いすぎて、時々思う。私はここにいてはいけないんじゃないかって」


 聖女はフルルの手を取った。


「友だちになってくれて、ありがとう。本当は、嬉しい。私も変な人間だから、私を嫌いになるかもしれないけど、それまで友だちでいてくれる?」


「いーや、私の方が変だから、先に嫌いになると思う」


「私の方が変」


 しょうもない言い争いをした二人は、笑い合った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ