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宿の食堂で夕食を頼んだ。
「私たちは、水を飲むだけで生きていける。味を楽しめるから食事も好きだけどね。
これ、美味しいです」
当然のように隣りに座って食事をとるフルルは、宿の主人にそう言った。
「ありがとう。
……とんでもない子を連れてきたな、鉄球。くれぐれも今日がこの宿の最後にならないようにしてくれよ」
宿の主人は、ドーターを知っているようだった。
今日は精神的に疲れたからさっさと寝よう。そう思って部屋に戻る。
当然のようについてくるフルルをさすがに止めた。ここに泊まりたいなら別の部屋を借りればいい。
「お前は何でそんなに人間離れしているの?」
俺の力では止められなかった。ベッドに座ってくつろぐフルルと話をした。
「もっとお前の話を聞かせて」
生まれ育った故郷や王都までの旅路、王都での日々をつらつらと語った。
俺ばかり話すのもなんだと思って、寝そべるフルルにも話を聞いた。
「お母様は私を大事に大事に育てた。そんな世間知らずのオートマタは、人間の世界に足を踏み入れて、助けられたり、騙されたり、いろいろ経験した。刺激的で退屈しない毎日だった。
今日もお前と会えた。明日は何があるのかな……」
目を閉じたフルルは、寝息を立てた。ドーターも眠るらしい。宿の主人に別室を借りて、俺も寝た。
翌朝、魔石漁りにフルルもついてきた。考古学者のところに行かなくてもいいのだろうか。
「あのおっさんは、元々一人で第三拠点より深くへ潜っていたから、私がいてもいなくても関係ない。パーティを組んでからも、二人なら倍の広さを探索できるって言って、別々に行動していたし。お金より先史文明のことばかり考えている変なおっさんだった。
人間の世界は、お金がないと何もできない。冒険者ギルドでたまたま紹介されたパーティがあのおっさんだったってだけ。お金がもらえるなら何でもいい」
フルルと一緒なら第三拠点からでも二人で探索できるかもしれないが、試しに第二拠点から出発した。
現れるモンスターを、フルルは舞うように倒していく。体が羽でできているかのように、ふわりと床や壁を蹴って飛び、強烈な蹴りの一撃で仕留める。身をもって知っているその威力に、背筋が寒くなった。
換金を終えて分前を多く渡すと、フルルは返してきた。フルルがほとんどのモンスターを倒したのだから当然だと思った。
「そういうの面倒くさい。半分こがいい」
気が合いそうだと思った。




