デビル種覚醒〜自己中心的な長老の末路〜
「………どうしようかなー」
「先輩、何を悩んでいられるのですか?」
「あ、セクレバ君、お疲れ様ですー。
……ノエルに、あの事を伝えるべきか考えてるんですー」
「ノエルのお母さんの事………ですよね」
「うん………。」
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「そういや聞くけど、ノエルの両親はどうしたんだ?まさか殺したわけでもないと思うけど」
「母親のことは……知らん。あんな奴に近づかせることなどできるか!
父親は、里に戻らせた後、魔物との戦いで……死んだ。あいつには、妻も子もいたというのに」
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「伝えられない、かなー。あいつが嘘をついている可能性もあるし」
「考えたくはないですけど、その可能性もありますよね……」
「それに、仮に本当だとしても、お母さんのほうが生きているかどうか……最悪、もう死んでいる可能性も、ありうるから……」
「ああ、もう、なんであんなお爺さんがまだ生き残っているんですか?!」
「どうにかして利用しようとしてるんだ〜。
今の所、何も思いつかないけど〜。」
「……お母さんが生きているかもしれないということは、言わないんですか?」
「できれば確定した上で伝えたいな〜、と。
そう考えているんだ〜……。」
「街とかは、エオムさんの奥さんたちの仕事……
になっているんですよね。」
「手がかりがないから、どうしても時間がかかるよね。」
「何だ……?誰だ、ここに来たのは?」
「私です、お祖父様」
「ノエル……何のつもりだ。」
「お父さんとお母さんは、今どこにいるのですか?」
「……そうか。何も伝えられていないのだな。
なら教えよう。お父さんはな、儀式をしてもらったのだ」
「儀式………?」
「そうだ。お前の父さんを浄めるために……
我らは火の中へと投げ入れたのだよ」
「え………?」
「愉快だったぞ。あ奴が叫びながら火に焼かれるのを見るのは!
そしてあの女は、我らの慰み者になったのだ!
まあ度が過ぎて、あの女は壊れてしまったがな!」
「そ……そんな………」
「これも全部お前が生まれてきたからだ!
お前が生まれなければ、あの二人は死ぬことはなかったがな!まあ、そのお陰で我らは楽しめたがな!本当に良い孫娘を持ったものよ!
ハハハハハ!!」
「私が………生まれてきたから………お父さんも………お母さんも死んだ………?
………嫌………………嫌ぁぁぁぁ!!」
「ノエル!?」
「な、何が起きたというのかね?!」
「…………!!!!」
「やはり貴様、嘘をついていたのか!!」
「そうだよ。まあ、お主らが馬鹿なおかげで上手くいったようだからなぁ!!」
「貴様………!どれだけ」
ギュギャァァァァァァァァアア!!!!!
「キサマァァァァァ!!!!
こんのドグサレがァァァァァァァァ!!!」
「ゴハァァァァァァァ!!?」
「え………ヴィルク、殿…………?」
我が見たのは、今まで見たことのないヴィルク殿でした。
あまりの怒りに、一瞬飲み込まれそうなほどの殺気、全ての爪が長く伸び、明らかに殺意しかない姿でした。
そして何より、怒るときはあれど静かな怒りが特徴のヴィルク殿とは真逆の、激しく凶暴で、苛烈で、暴虐的なその表情に、絶句してしまいました。
「コロス……………………………………………コロス」
明らかに自制できていないですよこれ!
「何事なのですか!?」
「思わず来ちゃったけどこれは!!?」
ボルザ殿、リスフィー殿、どうか止めてくだされ!手遅れになる前に!
「うん、うん!ヴィルク君、まずは落ち着いてください!」
「!!!!………………」
「貴殿は、いやテメェは寝とけ」
「駄目ですよヴィルク君。彼女が傷ついているのに、放って置くなんて!ダメダメですよ!」
「…………!!
………ご、ごめんね……ノエル……」
な、なんとか………全然無事じゃないけど収まりました………。
「おはよう、ございますー……。」
「ヴィルク、ようやく起きたか。
………ノエルは、今日も、なのか?」
「……………はい」
「そうか………これで5日連続、か………」
あの騒動が起こってから、ノエルさんは部屋から出てこなくなった。ノエルさんの側にいれるのはカミーユたちと、同じ部屋のヴィルクのみだ。
「………ま、俺がどうにかできるかと言われたら、どうにもできんからな。あいつの分の飯を作るぐらいしか、できねぇ。
どうにかできるやつといったら………お前だけだ、ヴィルク。頼りになるのは、お前しかいない。」
「でも………僕になにかできるのでしょうか……ノエルよりも、自分の感情だけを優先した僕に……」
「そりゃお前次第だが……自分の感情だけを優先した、ってことは少し違う」
「え?」
「お前が優先したのは、自分の感情じゃなくて、あれ以上ノエルが傷つかないこと、だと俺は思ったぞ。
俺だって、シデアが傷つけられたらキレるし、もう傷つかないでほしいと思う。だからこそ、サクッと殺ることで、そうしようとしたんじゃないかな……というのが俺の感覚なわけだ。」
「ノエルが、傷つかないでほしかったから………」
「あいつのことが大事なら、自分の気持ちを話すべき……だと思うぜ?俺はな。
はい、飯ができたから、頼むぜ」
「分かった。ありがとうございます〜。」
ヴィルクが出ていくと、俺はため息をついた。
「やれやれ……結局助言してるし。俺ってお節介焼きだなぁ、本当。」
「私は、そんなあなたが好きなんだけどね?」
「いやいたのか、シデア………」
「ノエル、ご飯持ってきたよ」
「………うん。いただきます。」
「………ノエル」
「………なあに?」
ごめん
「……え……?」
「ノエルの事、信じてあげられなかった。
お母さんの事、伝えてあげられなかった。
その所為で、ノエルを傷つけてしまった。
………ごめんなさい。」
「謝ることなんてない!」
「……!」
「ヴィル君は、私のことを思ってくれた!
私が傷つかないように、悩んでくれた!
私が笑顔でいられるように、私のことを支えてくれた!
私が、お母さんと会いたいとか言っちゃったから、私は、私は……!
う……うわぁぁぁん!」
ノエルは、僕に抱きついてきた。
泣いている彼女を見て、ただ抱いて頭を撫でることしかできなかった。
僕は、ただただノエルが好きなわけじゃない。
ノエルの事を……ノエルの心を、守りたかったんだ。
それ程までに、ノエルの事を思っていたから……ノエルの事を、愛していたから、あんな力を出せるようになったんだ。
「ノエル」
「………なあに、ヴィル君?」
「こんな時に、ごめんね」
チュッ
「!!ヴィル、君……?」
「何をすればいいのか、僕には全然分からないんだ。どうすればノエルが泣き止んでくれるのか、どうすればノエルが喜んでくれるのか……
思いついたのが、こうしてキスすることかな、って思ったんだ。」
「……………」
「ご、ごめん………急にこんなことして」
「……………(ウルウル)」
「あぇ!?泣くほど嫌だったの?!」
「うぇ、違、えっ、なんで………」
いきなり泣きそうになって、思わずオロオロしてしまった。
「あの……その………。………初めて、キス、してくれたから………嬉しく、なったの………。
嬉しすぎたのかな……泣いちゃった。」
「ノエル!!」
「ふわぁ!?」
思わず抱きついてしまった。どうしよう。
「あの、ヴィル君……?」
「僕も、嬉しいよ……ノエルの事、愛しているから」
「あ、あ、愛してるって………\\\」
「お世辞なんかじゃない!本当のことなんだ!
本当に、ノエルの事が大好きで、あ…愛しているんだ\\\」
「……………じゃあ、…………もう一度、私に、キス……してくれる?」
そういわれて、すぐに口づけをして。
彼女がとても、愛おしくて。
袖を引かれて、口を離したら……
「………………♡♡」
世界で一番愛している人が、笑顔になってくれた。
「もう大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
昼になってから、二人が部屋から出てきた。
上手くいったようで、一安心だ。
「あの〜……もうそろそろ、いいですよね〜?」
「だめ」
「見られてるから、恥ずかしいんですが〜?」
「やだ」
「腕を組まなくても歩けますよね?」
「やだ!」
「やだじゃなくてですね!」
「やだやだ!離れたくない!」
「離れたくないって……全然離れないんですが」
「………だめなの?(ウルウル)」
「…………はぁ。ご飯食べるときは駄目ですからね?」
「………えへへ〜♡」
バカップルがまた増えているな………俺たちもだがな。
というか幼児退行してないか?いくらなんでも驚きだわ。
「幼児退行というわけではないんですよー………目を見てくれません?」
目………あ!ハートになってる!
「その………余りに愛が強すぎた故僕の罪というかなんというか……
あ、もうご飯の時間だから、離れてね?」
「は~い。」
嫌な予感がするが………
「はいヴィル君、あーん」
「ファ!?」
「むー………あーん」
「あ、あーん」
「…………♪(満面の笑み)」
「………ほら、あーん」
「あーん♪」
「…………♡(満面の笑み)」
だと思ったわ………
「ごちそうさま………」
「ごちそうさまでした。ヴィル君、ちゅーして?」
唐突だなオイ!?
「急だね!?………まあでも、いっか。部屋行こ」
「うん♡」
…………なんだろう。俺たちが霞んで見えるくらいのバカップルだな。
「ヴィル君……!早く、早く♡」
「急かさないでよ………ほら、ここ座って?」
「………?膝の上?」
「いいから、ほら」
「うん、わかったよ。よっと……」
「んっ」
「んむっ?!」
油断している彼女に、キスをする。それだけじゃなく、少し遊ぶ。
「んっ………んふっ、ちゅっ………」
顔が赤くなってきているので、離してあげる。
「ぷは………はぁ、はぁ………♡」
目がとろんとしている。頬は上気して、耳まで赤くなっている。
こんなに可愛い彼女を知るのは僕だけなんだと思うと、嬉しさと独占欲が湧いてくる。
彼女のこの可愛さは、僕だけのものだ、と。
「ゔぃる、くん、だい、すき」
「僕も、大好きだよ、ノエル」
そう言ってまた、口づけを落とす。
しょうがないじゃないですか、こんなにも可愛いのですから。
可愛がらない方がどうかしてますよ。
「…………しあわせ♡」
今回の話、シリアスから一点ラブラブカップルのイチャイチャになったからなぁ………
書いてて胸が締め付けられる思いでした、色んな意味で。
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