第五十一話 新魔法実験
「では、処刑ということでよろしいか」
「いや、やり過ぎだろ」
気絶したペルナを介抱しながら
プラプリは似合わない冗談を言った。
・・・冗談だよな。
念のために釘を刺しておくか
人間と違って転生が可能なせいか
エルフの生死感はどうもお手軽だ。
「俺の提案した勝負を正々堂々と
やってのけた。この件に関して
彼を罰する事は俺との勝負への侮辱になるぞ」
ついでだ
追加効果も入れておくか
ストレージから簡錫を出し
暴走陣を引く
「まだ文句のある奴は前へ出ろ
全員まとめて相手してやる」
背後、修練場一杯にスパイクを
全力で出した。
何かが破壊される音。
大勢の顔が引きつり
短い悲鳴も上がった。
あれ
失敗したか
恐る恐る振り返ると
修練場は棘の森になっていた。
多少、範囲が広すぎた
修練場脇の物置が串刺しになり
半壊して10m程、持ち上がっている。
威力が上がっているな。
「滅ぼすの?助けるの?」
一人、呑気なミカリンがそう聞いて来た。
「助ける為だったんだが・・・あれ」
つい、エルフの恐怖が美味しくて
いかんな。
訓練はそこまでになって。
昼メシまで休憩だ。
初めての魔法だ。
今日はここまででイイんじゃないか
午後は無しにしよう
エルフ達の体調に何か変化が
生じるかもしれないし
根を詰めて取り返しの付かない
事態になる方がヤバい
俺とミカリンは残って自主練だ。
効果時間が切れると棘の森は
幻の様に消え去るが
ぶっ壊れた物置が事実だったと
主張していた。
俺はメニュー画面開きっぱなしで
新しく覚えた呪文を試していく
ファイアーボールは
ミカリンに笑われる程
威力が弱かった。
居るならミカリンに
任せた方が良いな。
居ない時
ミカリンだけでは手が足りない時用だ。
ふん火はどうせミカリンがいるもんね
大本命はこっちだ
水
水系
これは初だぞ。
俺だけだぞ。
メニュー欄を良く見ると
火ともども命名効果となっている。
「・・・お前の名付のせいかも」
「へ」
火はミカリン
水はキャスタリア
名付された方の効果は分かっていたが
名付した方にも収穫があった。
まぁそうでなければ
するだけ損だしな。
となるとアルコの効果はどうなんだろう
俺は自分の爪を眺めてみるが
鋭く伸びる気配は無い。
咄嗟にズボンの中を確認するが
地毛のビキニパンツも出来ていなかった。
まぁその内なんかあるだろう。
どれどれ
キャスタリアに感謝しつつ
水の魔法を発動。
「ウォーターシュート!!」
杖の先から
5m程かな
水が
シャーって
ミカリンが腹を抱えて
笑い転げている。
俺も
怒るより一緒に笑ってしまった。
「何コレ!?何しろっての」
マジで家庭菜園とかイジメとか
そん位しか使い道が思いつかないぞ。
魔法が終了しても
地面が濡れている。
魔法の水を作り出すのではなく
物理的な水を生成する魔法のようだ。
スパイクやファイアーボールと
違い後に残る。
「喉乾いた時はいつでも言ってくれ」
まだ笑っているミカリンに
俺はそう言ったが
キャスタリアの水筒があるので
出番は無さそうだ。
くそ
外れか
俺はミカリンの爆笑が治まるまで待つ
次はお前の番だ。
ヒートアローの呪文を教える。
ミカリンは詠唱を一発で覚えた。
ファイアーボールの時もそうだったが
ミカリンは記憶力が良い。
「どんな呪文なの?」
メニューに解説が無い。
「うーん。大体読んでその通りだから」
ファイアーボール=火球
ウィンドエッヂ=風の刃
ウォーターシュート=水鉄砲
「ヒート・・・熱い、アローは矢」
「魔法の火矢ってトコかな」
ミカリンにも説明したが
ファイアーボールより消費が大きく
攻撃力が低い、あまり期待は出来ない
ミカリンもそれを分かっているので
ワクワクは低めだ。
「まぁやってみれば分かるよね」
その通りだ。
ミカリンはそう言って
呪文の詠唱に入った。
「ヒートアロー!」
ビームライフルかと思った。
赤く輝く1m程度の光線が
もの凄い勢いで飛んで行った。
威力は低いのかも知れないが
飛んでいくスピードは段違いに速い
何より
かっこいい
いいなぁ俺も撃ちてぇ
「当たった・・・よね」
ミカリンは感動薄目だ。
くそ
ビームライフルは男のロマンだな。
「のハズだが・・・」
的にした土壁は破壊される事無く
突っ立ったままだ。
「行ってみよう」
俺はミカリンを連れて
土壁の所まで行く。
土壁はど真ん中に穴が開いていた。
「貫通したのか・・・。」
スピードの遅いファイアボールは
土壁を木っ端みじんに吹き飛ばすが
弾速の速いヒートアローは
貫通してしまうのだ。
「これは硬い敵に有効だぞ」
ファイアボールは頑張れば
盾で弾く事が出来そうだが
これは瞬間で盾を貫通し
ダメージを与えてくれそうだ。
小躍りして喜ぶミカリン
いいなぁ
使える呪文ばっかりで
羨ましがる俺に振り返るミカリン。
どうせ馬鹿にしてくると思いきや
顔が緊張に強張っていた。
「どうした?」
ミカリンの予想外の反応に
俺は素直に尋ねる。
ミカリンは返事の変わりに
俺の背後を指さす。
「火事だ」
振り返ると土壁の奥
修練場の囲いが燃えていた。
「・・・まさか」
そのまさかだった。
貫通したヒートアローは
勢いが衰える事無く
修練場の壁に突き刺さり
そこでヒートし続けたのだ。
「どどっどおしよう」
「おおおおお落ち着けおちつk」
ゴウゴウ音を立てて見る見る
火の柱が成長していく
木や紙が自然発火するのは
およそ500度を超えた辺りからだ。
ヒートアロー本体はそれ以上の
温度と言う事か
なんて冷静に分析してる場合じゃない。
「みみみみみ水だ」
「水?」
ありがとうキャスタリア。
お蔵入りする予定だった魔法が
早速、役に立った。




