第五十話 魔法VS魔法
これだけ目の当たりにしても
俺もミカリンも風の呪文が
開放されない。
ミカリンに限っては火系統以外
さっぱりだ。
メニュー画面で分かっているのだが
その画面が見られないミカリンは
何度か試していた。
「やっぱりダメだねぇ。アモンはどう」
俺は返事の替わりに
お手上げポーズをしてみせた。
「え?先生、出来ないのダッセー」
一人のエルフがからかってきた。
得手不得手というものがあってだな
俺が何か言う前にプラプリが
血相を変えて怒った。
「ペルナ!救世主様を侮辱する事は
里長である私が許さんぞ」
あまりの怒りっぷりに
俺もビックリした。
別に機嫌を損ねてはいないぞ。
そんな怒らなくても
「アモン。申し訳ない、彼は
転生組でない新規だ。」
前世の記憶や人格を受け継いでいない
本当に子どもって意味だ。
「だって本当じゃん。もう俺のが強いね」
本人には伝わっていないようだ。
懲りる様子もなく挑発をしてきた。
怒りを再点火させ振り返るプラプリ。
俺はその肩を掴んで止める。
「ようし、ペルナ君。勝負しようじゃないか」
こういうタイプは痛い目を見ないと変わらない。
ただ俺の提案は各方面から反対を受けた。
「部族の恥は長である私が教育する」
プラプリを始めとする転生組の
俺への傾倒はハンパじゃない
が、逆にそれが原因でもあるのだ。
なんでこんなショボい奴にヘコヘコするの
て感じだ。
「不利ですよ・・・。」
プルは魔法の知識がある
火←水
↓ ↑
風→土
の四行相
俺の土は風に対して不利なのだ。
それは術者の実力が同程度の場合だ。
圧倒的差の前には微々たる影響しかない。
「負けたらカッコ悪いよ」
ミカリンは完全に面白がっている。
安心しろ
もっと面白くしてやる。
アルコがいたら
何て言うだろう。
彼女は今、別行動だ。
字を習う為、別の建物に居る。
以上を「うるさい、もう決めた」と
却下すると、俺はペルナを伴い
修練場の真ん中まで行く。
ペルナは不敵な態度だ。
結構、肝が座っているな。
普通はもっとビビるものだが
将来が楽しみだ。
「ルールを説明するぞ。攻撃は魔法のみ
参ったするか行動不能で負けだ」
「殺しちゃったら?」
おお
俺を殺す気か
気に入った。
「死んだ方の負け」
ペルナは若干、俺より背が高い
見下ろす様にふんぞり返っている。
少しでも威嚇するつもりなのか
自身を奮い立たせているのか
うーん
舐められるのは、俺の外見にも
問題があるのかな
俺は説明を続けた。
「俺が使う呪文は二つだ。
一つはお馴染みの壁だ」
そう言って俺は土壁を発生させ
その陰に隠れてみせた。
「俺にダメージを与えるには
壁を壊すか、見える位置まで
回り込むんだ」
俺は壁から少し離れ
ペルナが視認出来る位置まで
体を横に移動させる。
ウィンドエッヂは曲射が出来ない。
標的を直線上に捕捉し
遮蔽物が無いといけない。
お
真剣に聞いている
バカめ
「で、攻撃はこの魔法だ」
俺はペルナの前、1m程の所に
スパイクを発動させる。
身長程度の棘が数本
直径1mの魔法陣から
勢い良く伸びる。
「生える前に、必ず地面が光る。
うまく避けないと串刺しだ。」
お
ペルナの恐怖が流れ込んで来る。
これに串刺しにされた自分の姿を
想像したのだろう。
「光ってから生えるまでの
タイミングは一定だ。良く覚えろ」
俺は、すぐ隣にスパイクを発動させる。
「壁も棘も一度場所を確定させると
移動出来ない。違う場所には
新たに唱え直す必要がある。
何か質問はあるか」
「この二つしか使わないんだよね」
「そうだ。」
「じゃ、大丈夫だよ」
俺は修練場の端まで移動し
声を掛ける。
丁度、練習で的までの距離
約20mと言った所か
十分に命中させられる自信の
ある距離だろう。
「プラプリ。合図よろしく」
観衆が固唾を飲んで見守る。
もしかしたらこの世界初の
対人魔法戦闘かもしれないな。
「では、双方よろしいか・・・始め!」
開始の合図と共に
ペルナは俺の右に回り込む様に
横に走った。
新生組は本当だな。
回り込むなら左側だ。
弓ならば背になる。
これでは正面に来るぞ。
そう思った瞬間、
左側に回り込む様に方向を変えた。
ほう
考えてはいるのだな。
俺は様子をじっくり観察する。
早くもペルナは焦っていた。
「走りながら呪文は無理だぞ」
ペルナの敗因その1
自身の能力をキチンを把握していない。
襲われたのならともかく
勝負するかしないかの選択が出来た状況で
今は戦闘するべきじゃあ無い。
「行くぞ、土壁」
ペルナの敗因2
俺の話を素直に聞いてしまった。
俺が敵を有利にさせる訳ないだろ
全て罠だ。ヒャッハー
俺はペルナの走る方向を遮る様に
土壁を発生させる。
ペルナは慌てて減速し
衝突を回避した。
俺は説明の時
壁に隠れて見せたが
壁を盾替わりに使うつもりはない
相手からその発想を奪うために
わざと隠れてみせたのだ。
いかにも
こうして攻撃を防ぐぞ
と思ってもらう為だ。
思考誘導っていうのかな
体当たりすればイイものを
ぶつからない様に止まってしまったな
俺は続けてペルナの背後に土壁を
発生させる。
見ても変わらない
むしろ次の対処が遅れるのに
つい振り返ってみてしまう。
本当に戦いに馴れていないんだな。
振り返ってくれたお陰で
余裕で次の土壁が間に合った。
俺は今度は空いた横に発生させる。
強度より速さを優先させている
体当たりで突破出来そうなモノだが
ペルナに壁の強度を確かめる余裕は無い
囲まれた。
もう俺と正対する正面しか空いていない。
咄嗟に俺と目が合う。
俺は指で「来いよ」と挑発した。
ペルナは覚悟を決めたのか
ウィンドエッヂの詠唱に入った。
馬鹿だねー
俺は四枚目の土壁でペルナを閉じ込めた。
2m四方の壁4枚
イイ感じに立方体だ。
土壁の一部から土煙が上がる。
練習の時とは大違いの弱い威力だ。
運動と焦りで効果率が極端に落ちている。
この状況で成就させただけでも
褒めるべきだろう
焦ってトチ狂って
普通なら失敗する。
「光ったら、避けろよー」
さてトドメだ。
ニヤニヤが止まらない。
避けられるモンなら避けてみやがれ
俺は直径10m程度の魔法陣を
立方体を中心に発生させる。
もっと広範囲で出せるのだが
これで十分だろ。
箱の中のペルナが悲鳴を上げた。
良い恐怖だ。
もっとよこせ
「フハハハ串刺しになっちまえええええ」
観衆も悲鳴を上げている。
うーん、やっぱり知能レベルの
高い種族の恐怖程
美味しいなぁ
ポン
2cm程度、軽石以下の強度の
大量のスパイクが間の抜けた音で発生した。
威力は最低にしておいた
カエルも倒せないスパイクだ。
「おい、参ったしないと
本当に串刺しにするぞ」
10m魔法陣で参ったをしてくれる
予定でいたのだが
悲鳴だけで参ったは聞こえなかった。
それどころか今は恐怖も流れてこない。
「・・・おーい」
ペルナは気絶していた。




