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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
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白銀の女王


 「もうすぐ1年になるのか……」


 鋭い眼、深い青の瞳がより鋭さを際立たせている。

 黒い長い髪を頭の後ろで束ね、白い豪華な騎士装束に身を包むその男は鬱屈していた。

 首からかけている金のロケットを開く。

 そのロケットに入っていたのは、小さな写真だった。

 この世界での写真は高級品だ。

 『写絵(コピアイマジン)』という魔法があり、火魔法と光魔法に精通した者でしか使いこなせないため、希少価値が高い。

 写真を持っていることから、男はそれなりの地位に就く者だろう。

 写真には黒髪の少年と赤茶色の長髪の女性が映し出されていた。

 男は写真を見ると、目元を和らげる。


 「早く帰りたいな……」


 男は辟易したように愚痴をこぼしながら遠くを見つめる。

 その方向に故郷があるのだろうか。

 任務を無事に終え、故郷に帰る自分を憧憬する。


 「しかし、これは弱き人族を守る為に必要な苦難、甘んじて受け入れよう」


 男は自分に言い聞かせる。

 家族に自分と同じ思いをさせてなるものか、と。

 

 ――男は物心がつく前に孤児になった。

 彼の村は人族の領土の中でも辺境の地だった。

 悪魔族襲来。

 そう聖都キリシスムに伝わる頃に、村は業火に包まれていた。

 元冒険者の両親。彼の両親は村の守りの要だった。


 両親は逃げ出さなかった。

 村を守るため最後まで戦い続けた。

 幼いながらに彼は気づいていた。両親は死ぬ気なのだ、と。

 まだまだ幼く未熟な自分。

 両親がいなければ生きてはいけないだろう、と。

 ならばせめて最後まで一緒にいたい。


 「納屋に隠れていなさい」父からの言いつけを破り、両親の元へ向かった。

 彼が駆け付けた時、両親は既に死んでいた。

 四肢を引き裂かれ、臓物を引きづりだされ、苦痛に歪んだ顔で死んでいた。

 彼の両親の死体で遊ぶ醜悪な悪魔。

 悪魔は彼に気づいた。そして嗤った。彼の母親の頭部を彼の前に投げ捨てながら。


 彼は生き残った。なぜ生かされたのかはわからない。

 悪魔にとって彼は取るに足らない存在だったのだろう。

 聖都キリシスムからきた騎士団に彼は言った。

 「悪魔を殺したい」と。


 騎士団員は彼に人神教直轄の孤児院を紹介した。

 彼はそこで憑りつかれた様に訓練を始める。

 自分の命を削るように過酷な訓練に身を投じる彼を周囲の者は疎んじた。


 学校に通える年齢になり、生活に変化が訪れたがその習慣は変わらなかった。

 学校でも彼は異質で孤児院と同じように疎まれる学生生活を送った。

 学校を卒業し、「人神騎士団」に所属すると彼は狂った様に悪魔族を狩りだす。

 悪魔族を見ると殺したい衝動を抑えられない。


 彼の殺し方には一つの特徴があった。

 それは、殺した獲物の首を引き抜くこと。

 数えきれない程の悪魔族の首を引き抜いた彼は聖騎士団へと推薦される。

 付いた神名は『首狩り』。

 ――『神名持(レリジアスネームド)』の”首狩りエリオス”と。


 周囲はエリオスを蔑んだ。

 高潔な神名にあるまじき異名。

 罵倒される日々。

 しかし彼は気にならなかった。

 彼の痛みを理解してくれる者がいたから。


 孤児院で一緒に育った赤茶色の髪の少女。

 少女は無茶な訓練ばかりするエリオスを何かと気遣った。

 エリオスは最初こそ疎ましく思っていたが、段々と打ち解けていった。

 彼女も同じく両親を悪魔族に殺された者だったからかもしれない。


 悪魔の首を引き抜く彼を周囲が疎んじ離れていった時でも、彼女だけは彼の理解者でいつづけた。

 彼にとって彼女は希望で光だった。

 誰にも理解されなくていい、彼女がいてくれれば。

 そしてエリオスと彼女は結ばれ、一子を授かった。


 そんな折に指名依頼が入った、『人類を救う任務へ向かえ』と。

 聖騎士団団長カストールは言った。


 「魔族をできるだけ苦しめて殺して欲しい。そして魔力を集めてくれ。これは人族の未来につながる任務だ。頼んだよ」


 気乗りがしないエリオス。

 子供を授かってからというもの、家族が愛しくて愛しくてたまらなかった。

 今迄、妻しか大切な物がなかったエリオスであったが、大切な物が2つに増えた。

 ――離れたくない。

 それが彼の本音だった。


 しかし、人族が害されることがあれば、それは自分の大切な物が巻き込まれるかもしれないということ。

 エリオスはそれを分かっていた為、断れなかった。

 

 カストールからエリオスは2つの物を預かった。

 1つは『吸魔の髑髏(シャレコウベ)』。大気に漂う”純なる魔力”を吸収し蓄える魔法アイテム。

 そしてもう1つは――


 「薄気味悪いな」


 エリオスの吐息が白く曇る。

 そこには、一面白銀の世界が広がっていた。

 その光景を見た者は、まるでおとぎの国に迷い込んだよう錯覚するだろう。


 白銀の世界に佇む、一脚の豪華な椅子。

 それは全て透き通った氷でできていた。

 まるで氷の玉座だ。


 氷の玉座に座る少女。

 白銀の髪に、無機質な碧い瞳。

 瞬き一つせず、少女の周りだけ時が凍っているように感じさせる。

 エリオスは少女の無機質な目を見て震えた。

 同時に彼は少女を形容する言葉が脳裏によぎる。

 

 あれは少女なんて生易しいものではない

 ――全てを凍らす『白銀の女王』


読んでくださってありがとうございます。

2章もこれで終了です。

いかがだったでしょうか。

面白いと思っていただけたら嬉しいです。

3章も頑張って書いていくのでよろしくお願いします。


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