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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
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雷様は練習台

 

 ―タナカ サイド―


 「大したことないな」


 雷様が太鼓ではなくシンバルを打ち鳴らすごとに雷撃が発生する。

 雷撃がまるで蛇の様な動きをしながらタナカを襲うがそれを難なく躱すタナカ。

 雷撃がバリリッと激しい音をたてながら、闘技場の地面をえぐる。

 当たればそれなりのダメージを負うであろう雷撃を首を軽く曲げることで、ヒョイと躱しながら、つまらなそうに愚痴をこぼす。


 「ひねりがないんだよ、ひねりが」


 タナカはスズキとの一戦に比べ、手ごたえのなさに興ざめしていた。

 『雷を操る』――字面にすると強そうだが、どうということはなかった。

 タナカがいる地点へと雷を放つ。

 ただ、それだけ。

 フェイントもなければ、タナカの動きを予想して攻撃を組み立てるわけでもない。

 機械的な攻撃。


 もしもスズキが雷を操る能力を持っていたのであれば、最初の何発かで、タナカの回避する時の癖を探ろうとするだろう。

 右方向へ回避することが多いのか、左方向へ回避することが多いのか、それとも後ろか、はたまた前方か。

 回避する方向に癖があるのなら、一撃目は回避させるために放ち、回避先へと渾身の一撃を放つだろう。

 雷撃を自在に操れるならば、タナカの頭上で拡散させ、どの方向へ回避しても必中するよう攻撃を仕掛けることも面白いかもしれない。


 そういった試行錯誤が目の前の雷様にはない、それ故、タナカは冷めてしまっていた。

 今迄の戦いで、タナカは相手の動きを多少コントロールすることができるようになっていた。

 つまりは勝負の駆け引きが上達していたことが冷めさせる要因の一つとなっているのかもしれない。


 「それなら、経験でも積もうか」


 タナカは雷様の攻撃を躱しつつ、『不死王の剣』と『不死王のローブ』をアイテムストレージにしまう。

 そして、代わりに紫色一色で染まった両刃剣を取り出した。

 『死者の剣』――ミーナにピアスのお礼としてもらった剣だ。

 効果は死者が使うことで、斬撃に腐食効果が乗る。

 ステータスが上昇したり、特殊なスキルが使えるようになるわけでもないアンコモンの剣。

 腐食効果が付く程度の効果しかない素朴な剣だが、タナカは気に入っていた。

 

 タナカは回避しやすい体勢の時に、わざと静止して隙を晒しつつ、雷様に攻撃をさせた。

 軽々躱しながら、雷様へと距離を詰めるタナカ。

 タナカに攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか更に激しくシンバルを打ち鳴らす雷様。

 シャーン、シャーンとなる美しい音色がタナカのどす黒い心の汚れを洗い流していく。


 『ライライライライッ! イラッ!』


 相当苛ついているのであろう、『ライライ』言いながら攻撃していた雷様に、『イラ』が混ざる。

 そんな雷様のイライラを気にする様子もなく、タナカの斬撃は雷様のシンバルへと入る。


 『ライライライッ! イタッ!』


 ジュウゥーと金属が溶ける音が闘技場に響く。

 雷様は溶けていく自分のシンバルを悲しそうな瞳で見つめる。

 タナカは素早く雷様から距離を取ると、ポツリと呟く。


 「後5個か……」


 タナカが悪魔の様な顔で嗤いながら、雷様のシンバルを見つめる。

 雷様の背中に背負っているシンバルは全部で6個だった。

 一つ溶けて、残りは5個。

 タナカのやろうとしていることがわかってしまったのだろう。

 雷様は泣きそうな顔で言った。


 『ライライライライ……イヤッ!』


 雷様の願いは届くことなく、シンバルは溶けていった……。




 「ふぅ。難なく倒せたな」


 タナカは一仕事終えたサラリーマンの様に呟きながら、アイテムストレージへと『死者の剣』をしまい、『不死王の剣』と『不死王のローブ』を取り出し、装備する。


 「さてと……先を急ぐか」


 闘技場の自分が入ってきた通路とは別の通路へとタナカは消えていった。

 闘技場の中央にはシンバルを全て溶かされ、体育座りでガタガタと震える雷様の姿があった……。


 

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