もう一人の勇者
ちょろゴンのイグナイルを説得してリゼの逃走を助ける手助けをすることになった。
本来なら走って逃げるところだが、ドラゴンを使い魔としているなら、召喚して乗っていくのが一番効率が良い。
(おい、ちょろゴンとは我のことか?)
お前以外に誰がいるんだよ………ちょろゴン。お前のチョロさはどこかでまた使えそうだな。
一方、リゼの方はというとドラゴンに乗ったのは初めてなのか、目をキラキラさせて下の景色を眺めている。
俺みたいになるなよー。落っこちたら大変だからな。
と、思った矢先。
「きゃっ!」
リゼが足を滑らせ、イグナイルの胴体から滑り落ちていく。
言わんこっちゃない。
そして、落ちたリゼはイグナイルの手によって捕まえられた。人間を覆えるほどの手を持つドラゴンなら人間を持つことも容易にできる。
(しっかりと見ておけ。この娘はお主より危なっかしい)
「今の楽しかった!!もう一回やらせてください!!」
ん?なんて?もう一回?
「死ぬよ?バカなの?」
「はい!」
あ、ダメだ……この子あれだ。ちょっとだけおかしい子だ。
厄介な子の手助けをしてしまったな………
さっきから感じる鱗の熱がやけに鬱陶しい。女の子を乗せて興奮でもしてるのか?
おい!何興奮してんだ!女の子初めて乗せなとか?
(興奮の熱じゃない……警戒の熱だ。下を見てみろ。我たちの存在がバレてしまった。娘を乗せているのがバレた以上追いかけ回されるであろう)
え?まじ?
うわっ!?めっちゃ人いる!追い人何人いんだよ。1…10……やめだ。数えても無駄。
「おいお嬢様、何人に追いかけられてんだよ………」
「あ!あれはアイクさん!お父様の指示で動いてるんですよきっと!アイクさんは勇者です!」
アイクと呼ばれた一際目立っている騎士。
遠くからでもわかるイケメンなやつやん!なに?金髪は全員かっこいいの?
顔は鬱陶しいくらいイケメンの勇者。あ、ちなみに俺の視力は右左AAだ。
まぁ、自慢できるほどのもんでもないけど。
「リゼお嬢様ー!!戻って来てください!」
さっきあんな大声出すから、気付かれたんだよきっと。きっと勇者かなにかの騎士だろう。あの集団を仕切っているように見える。
「あれは……爆炎竜じゃないか!?魔王族に封印されてたんじゃなかったのか!?どうして、地上にいるんだ!」
いや、勇者の使い魔をそんな悪魔みたいな呼び方してあげないで!!
元々、ドラゴンナイトを決める儀式で戦争になった勇者が悪いんだよ!!あれ?なんか苛立って来たなー。
(炎息でも打つか?ユウキよ。いくら定めとは言えど、この言われようじゃ、我も胸糞悪い。一発お見舞いしてやってくれ)
「そうだな!やっちまおうぜ! イグナイル!」
俺はイグナイルからジャンプすると、英雄の加護を使って軽く着地する。
妙な男がドラゴンから落ちてきたから、目の前にいた大勢の騎士たちは俺のことをなんだこいつ?みたいな顔をして見ていた。
(では、我は先に行っているぞ!健闘を祈る)
「は?え?ちょっと待って!イグナイル!おーい!!行っちゃったよ……」
主人を置いて逃げるなんて………なんてやつだよ!あとで覚えておけよ!
「君は誰だい?どうやらドラゴンから落ちてきたみたいだけど」
「俺はユウキ。ただのドラゴンナイト勇者だ!」
ドラゴンナイトと勇者を繋ぎ合わせてみました。ダサいのはわかってるから言わないで!
「なに!?ドラゴンナイト勇者だと!?じゃあ、あの爆炎竜はお前の使い魔か!」
あ、あるんだ。ドラゴンナイト勇者。よかったー俺が当てずっぽうで言ったことが本当にあった。
「僕はアイク。君と同じ勇者だ。ドラゴンナイトには残念ながらなっていない。それに、君からは不思議な波動が感じられる」
そりゃ、かの英雄アランの意思が俺の中にあるからな。まぁ言わないけど。
「そこを退いてくれないかい?今は、リゼお嬢様を捕まえないといけないんだ」
目の前のアイクは少し急ぎ気味の口調で俺に話しかけてくる。しかし、俺には関係ない。リゼには助けると言ったからな、最後までその約束は果たす。
我ながらかっこいいことを言ったぜ!
「嫌だ、と言ったらどうする?力でねじ伏せるとかするのか?」
「できればそうしたくはないけど、そうしないといけなくなってしまうね」
「じゃあ嫌だ」
「仕方がない。総員!目の前のユウキというドラゴンナイトを今からねじ伏せる!戦闘用意!」
あれ?ここは一対一のタイマン勝負じゃないの?え?ちょっと待って。それは聞いてない…………どうしよ。
ヤバイ、
イグナイルは先行っちゃったしな。
詰んだ。




