鉄を使うということ
去っていったアルファール達を見た頌子は彼らを遠い目で見ていた。
「なんというか、やっぱり仰々しいわね」
「そうかな?」
神奈がそう疑問に思うと、頌子はこう続けた。
「まあ、ああいうところは嫌いじゃないけど」
「敵とはいえああいうのを見ていると感心するのよね」
神奈がそう返すと、ちひろが突っかかる。
「敵に感心している場合じゃない。私は攻撃の想像がしにくい」
「だから鉄を使って攻撃してるの?」
そんな神奈の疑問にちひろは頷く。
「まあね。鉄ならある程度武器を連想しやすい」
「あの槍の量からして火山灰も使ってたよね」
頌子が二人の会話にそう割り込んだ。
「あれだけの槍を形成するには砂鉄も必要になるから」
「ちひろは冷静だけど、だからこそ戦いには不向きなのかしら」
「傷つける、ことを冷静に考えてしまってもどうかと思うけどね」
頌子の発言に神奈は突っ込みを入れた。
「私はどちらかというと論理建てて行動を起こす」
「ちひろは冷静な時は冷静だけど、そうじゃない時は年相応だしね」
「まあ、まだ小学生であることには変わりないし」
鉄という物質は熱を通しやすい。
だから冷たくすればとことん冷たくなる。
例えばゼリーを冷やす鉄製の容器を冷蔵庫に入れたとしよう。
そうすると容器はキンキンに冷える。
こうすることでゼリーをより固めやすくしている、
というのは筆者が勝手にそう思っただけかもしれない。
しかしゼリーを作る時鉄製の容器を使った人なら、
容器の冷たさを体感したことがあると思われる。
逆に水は意外と温度が保たれやすい。
アツアツのお風呂が外気に触れていたとしても、
それなりに持つというのはご存知だろう。
鉄は熱したらすぐ打たなければならないが、
お風呂は多少放置したくらいでは冷めない。
無論長く放置していたら冷めてしまうものの、
それでも蓋をしたら長持ちしやすい。
また雪が降った翌日、晴れてもすぐに溶けないのはその影響だ。
例え積雪の翌日が小春日和だったとしても、
雪がそう簡単に溶けないのはいうまでもない。
本題から逸れているようだが、
ようはちひろは熱しやすく冷めやすいということである。
水のことは比較対象であってあくまで鉄の補足みたいな物だ。
つまるところ性格が鉄使いという側面に現れている、というわけだ。
「いずれにしてもこの状況がいいとはあまりいえないわね」
「どうしてなの?」
神奈の発言に頌子は疑問を持った。
「ちひろは周りとの連携が前提だから、あまり戦えないじゃないかと」
「それは自覚しているわ。鉄を持ち歩くことはできないし」
そんなちひろに神奈は返す。
「どこかのラノベに出てくる学園都市じゃあるまいしね」
「多分あの世界でも持ち歩ける鉄が足りてないと思うわ」
実際マジックガイストのコピーした街灯は、
腰に巻き付けられる鉄のそれを凌駕していた。
しかもそれでも足りず空中に漂う火山灰も形成の道具にしていた。
火山灰なんて広島に漂ってないだろう、
と思うかもしれないが広島でも微量にそれはある。
日本は火山国家なので目に見えない火山灰が空中によくあるのだ。
「困ったわね……かといって周りの物を使うわけにもいかないし」
「屋上のバットだろうと足りてない水準に……待ってよ」
ちひろはあることを思い出す。
「そういや、あそこには壊れたラジオが置いてあったわね」




