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アーマーリングを左手に。  作者: 蜂蜜 林檎
9/14

アーマーリングを左手に。 6話。

えー。だいぶ間が開きましたが6話をアップします。

今回は・・・たぶん、最終回前話のつもりで書いてます。

なんか予想以上に短いし・・・

てか暗いよ!(涙)

しかしながらこの流れがないと最終話が成立しないわけであって!!

ほんと、ダークさハンパないです。

ある程度の覚悟の上、お読みください。

もしも、世界が、終わるなら。

大嫌いな、愛するアナタへ。

言わせてほしい、言葉がある。

その瞳で、見つめないで。

私の、守りたいモノ。

奪わなくては、いけないモノが。

とても、辛くて重い。


今夜も月は沈み、朝日が昇る。

一晩中泣いたあたしの目は腫れぼったくなっていて、まつり先生が氷嚢をくれた。

少し眠ったほうがいいと言われたけれど今すぐにでも十三夜月に会いたかった。

・・会って、話をしよう。

すれ違っていた時間を取り戻すために。


思いついたのはあの場所だった。

十三夜月と双子の月に出会ったあの研究所跡。

燃え盛る焔の中で終わったのなら、もう一度同じ場所から始めたい。


もう二度と来たくはないと思った場所。

前に来た時より奥へと進めば、まつり先生の言う通りの場所だった。

焦げ跡のついた・・燃え残った椅子。

その椅子に腰かけてあたしはずっとあの子を待った。


約束したワケじゃない。

連絡したワケでもない。

けれど、ここで待っていれば彼女はきっとやってくる。

・・・他の誰でもない、

あたしの命を、守るために。


何時間ほどそうしていたのだろう。

もう、朝日はだいぶ西に傾いて今にも沈もうとしている。

「夜は安らぎ・・闇は・・・愛。」

誰が言ったのか、思い出せなかったこの言葉。

貴女なら・・・わかるわよね・・

「十三夜月。」

椅子に座る、あたしのはるか後ろ。

きしむ椅子の音に合わせて聞こえたあの足音のリズム。

「・・・何をやっているの?こんなところで・・三日月。」

殺意のなければ敵意もない、あるのは瞳に浮かぶ疑問だけ。

「待ってたのよ。(ここ)にいれば貴女に絶対に会えると思ったから。あたしに(ここ)にいられると困る理由が貴女にはいくつある?」

燃え盛る焔の中で見たあの涙。彼女だってこの場所にあまり立ち寄りたくはないだろう。

(ここ)は彼女があたしを殺した場所。

あたしの命を守るために。

「あたしを(殺した)のは貴女なのよね、(ここ)を(燃やす羽目)になったのも、貴女。」(ここ)はまつり先生が(特別研究機関)と呼んでいた場所。

この場所にあったデータはすべて移動済みだったのだろう。だから、あたしを(殺す)場所には適任だった。データは無事でも研究機関の一つの損失は大きかったハズ。

あたしの(反撃)により、機材は消失。あたし自身もその(偶然の事故)によって(死亡)。

上手くいけば『ライラ計画』は凍結・・とまでもいかなくても延期ぐらいはされる。

そのためと忌まわしい記憶と思い出たちを一緒に燃やしてしまいたかったのかもしれない。


『ライラ計画』のハジマリの場所。

(ここ)でまつり先生と(満月)が出会わなければ。

(太陽)が(満月)を見つけなければ。

きっと何も起きることはなかった。この場所が、焼け落ちることも。

「・・・(ここ)を燃やしてあたしを逃がして。それは全部、貴女があたしのためにしてくれたこと。」

背を向けていたあたしはゆっくりと立ち上がる。

黒いレースに黒いチュールを重ねた黒いスカート。

真っ黒な靴とヘッドドレス。

いつもと同じ、漆黒の衣装。

違うのは、背中の部分が大きく開いた深黒のビスチェ。

そこから見える大きな翼の形の火傷。左肩の少し肌が薄い場所。

おそらく、十三夜月も同じ場所にあるだろう・・バーコードの形をした(シリアルナンバー)。

十三夜月がこの火傷のことを知っているかは分からなかったから。

だからの・・このいでたち。いつものあたしなら絶対に人前にこの背を晒すことはないだろう。

話を・・しよう?十三夜月。

その意味を込めた。あたしなりの貴女への返事。

「黒い色の綺麗な翼の天使・・終わらせてくれる、救いの象徴。

苦しみを刈りとってくれる黒い天使。

残念なことね。私が刈りとるのは命だけ。真っ白な私は血の色が目立ってしまうもの。

一つの汚れもない真っ白なままで何かを終わらせるだけが私の全て。

そう、それがたとえ貴女でもね・・三日月。」


まるでおびえた子猫みたい。


そんなことを・・本気で、想った。


「・・・私はね?」

あたしの声にびくりと彼女の髪が揺れた。

「貴女の目の色、綺麗だと思った。真っ白な貴女によく似合う。

夕暮れにしか見れない2つの色。」

いつのまにか時間は夕暮れの時間。迫るのは、愛しい夜。

「夜に近い証の赤に、黄昏にしか見ることのできない紫色。たとえその赤が血の色だとしてもそれは生きている証の赤い色だわ。

・・・似てる二人はケンカするって、よく言ったものだわね。

ねぇ?私の・・姉妹。」

十三夜月の瞳が大きく開かれ、あたしの姿を映す。真っ黒なあたしを。

「縁起の悪い色だとよく言われるけれど、あたしも自分の瞳の色気に入ってるの。

あたしたち、よく似ているのね・・きっと。」


「あたしたちを堕天使と呼ぶのなら、その罪は反逆よ。」

この言葉を意味を彼女は寸分たがえずに理解しているハズだから。


「迎えに来たわ・・・三日月。」

たたずむのは一人の少女。

銀色の長い髪。鞘に収めたままの刃をきつく握りしめて。

歯車は軋みだす。まつり先生の思惑通りに。

「もう、(おうち)に帰る時間よ・・別れは、すんでいるんでしょう?」

あたしを見つめるその瞳には決意の揺れる(たそがれ)の眼。

「・・・(すべては夜を手に入れるために。)ね?十三夜月。」

揺れるその眼は、涙を零しそうなほどにさらに決意に揺れる。

「・・・いつも、貴女はそうやって一人で立ち上がって優しい嘘をつく。」

あたしはできうるかぎり、優しく笑いかけた。

この程度で、返せるとは思っていない。でも、伝えなくてはいけない・・言葉があるの。


「『太陽』・・おとうさまはあたしを殺すつもりはなかった。それは本当。でも意味はもっと残酷だった。あたしを・・・連れ戻せと命令したんじゃない?あたしをもう一度・・あの培養ケースの中に。」

ぴくりとかすかに十三夜月の肩が震えた。

「あたしを育てるためではなく、あたしから細胞を搾取するため。満月・・お母様が死んで、けれどデータは手元にあった。

だからあたしを連れ戻す必要なんてなかった。けれど・・あの日。まつり先生のしかけたウイルスでデータの・・おそらく一部が失われた。その一部は替えが効かないほど重要な部分。

まつり先生が教えてくれたわ、あのウイルスは『太陽』がその瞬間、一番厳重に保管しているデータを消すだけのものでなんのデータが消えるかはまつり先生にも分からなった。

お母様がいない以上、本来ならそこでライラ計画は凍結される。・・・はずだった。」

まつり先生には一つの誤算があった。

それは『太陽』があたしを生かしていたこと。

「替えの効かないデータ、ならまた集めればいい。

『太陽』はあたしに目をつけた。お母様の『本当の意味での子供』のあたしからデータが取れるんじゃないか、そのデータを使えば消えた部分を補えるんじゃないか?

だから、貴女にあたしを連れ戻せと命令した・・培養ケースの中に連れ戻せ、と。

・・・・・その時点で、あたしが死んでしまえばこれ以上『月』は生まれない。

あたしを焔の中に逃がしてくれたのは・・・貴女よね?」

燃え盛る焔の中であたしが見たあの涙。あれは怒りではない別の感情。

・・・あたしと離ればなれになる不安。

・・・あたしが生き残った歓喜。

・・・これから救わなくてはいけない妹たちへの贖罪。

・・・初めて抱く『おとうさま』への悲憤。

ありとあらゆる、人形にはないはずの感情へのとまどい。


「・・・・・黙りなさい・・。」


「黙りなさいっ!三日月!!」

煌めく銀の髪、振りかざされる刃。

あたしへと駆けだした十三夜月はいつものようにあたしに破壊を振りかざした・・・

刃が突き刺さったのはあたしの右の頸動脈・・すぐ隣のコンクリート。

「ねぇ、十三夜月。」

あたしは十三夜月に笑いかけた。こんなに穏やかな感情をあたしも初めて知った。

これがきっと『愛おしさ』。

「あたしたちの生まれた・・日。あたしたちの誕生日よ・・・」

あたしの左手に光るアーマーリング、その裏に刻まれたこの数字。

培養ケースの中から外の世界に初めて出たあの夜。

「・・・・・あの夜は綺麗な満月の夜だったわね。覚えているわ、あの夜を。」

あたしたちが普通の赤ん坊なら覚えているはずのない記憶。嗚呼・・覚えていてくれた。

「あの夜・・・データでは三月四日になっていた、でも違うの。培養ケースが開いたその瞬間は午後零時。・・・知ってる?満月の別称は『十五夜』。」

(名前をつけてあげることすらできなかったけれど・・・。)

「お母様は・・あたしたちにちゃんと贈り物をしてくれた。あたしたちの培養ケースを開けたのは・・・」

十三夜月の目が少しづつ・・けれどはっきりと意思を持って、あたしを見つめる。

目はそらさない。そらせない。この瞬間だけは。


『お母様。』


「違うわ・・・。だって・・愛していると言ってくれたもの!

おとうさまは・・貴女は裏切り者だって・・処分・・・するって・・・だからっ・・

だから・・・私はっ!!!」

刀を握りしめる手が震えはじめる。

「十三夜月。」

よろけるように後ろへ下がったその靴がコトリと、小さく響いた。

「愛されている・・わたし・・は・・大嫌いよ・・・貴女なんか・・アナタ・・なんか。」


「十三夜月。」


「三日月・・・・・・・・・・・・・・・。」


「たすけて。」


その場にひざまずき、涙を流す彼女はとても綺麗だった。

教会で祈りをささげるようなそんな姿なのに、泣きじゃくる姿はまるで子供そのもので。

あたしはただ、ひたすら涙を流す彼女を抱きしめてあげることしかできなかった。

どれほどの思いがあったのだろう。

あたしを守って、妹たちを守って。

ただ一人。

泣くことも我慢して・・いや、涙の流し方も教えられずに。

ごめんねとかありがとうとか大丈夫よとか。そんなありきたりな言葉はまた今度。


今はただ、おもいきり泣いて。


あたしの・・・可愛い妹。



えー。

ということでアーマーリング6話でした。

「天使」あたりは、

「もともと天使要素はあったしな~フェアリーさは使えないし~(別口で使用中 笑)てか、伏線の回収もあるし~でも目の色とかのビジュアルは全員お気に入りだしな~使うしかねーよ!!!」

な感じで。

十三夜月ちゃんは・・まぁ、実はこんな可愛い子だったのです(笑)

イメージ色を十三夜月ちゃん=「白」

主人公=「黒」

にするのにちょっと手間取りましたね。

ではでは!次こそは最終回!!な・・・ハズです、たぶん。

お読みいただきありがとうございます!!

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