アーマーリングを左手に。 最終話。
はい。
今回で最終話。です。
・・・長かったなぁ~とか、ちょっと遠い目をしてみますが・・
いや、本当の意味合いで。本文が・・長くて!!
むしろ本題はこれからかも(笑)~と。
まだまだ後日談を続けるつもりなので。
とにもかくにも、一区切り。
アーマーリングを左手に。最終話です。
どうぞ読んでやってください!
もしも、世界が、終わるなら。
大嫌いな、愛するアナタへ。
言わせてほしい、言葉がある。
その瞳で、見つめないで。
私の、守りたいモノ。
奪わなくては、いけないモノが。
とても、辛くて重い。
私を、助けて頂戴。
終わる世界には、もういたくないの。
泣き止んだ十三夜月はぽつりぽつりと「おとうさま」の話をしてくれた。
内容はほとんどまつり先生の話してくれたこととほぼ同じ。
十三夜月をつれて帰ってきたあたしを皆こころよく迎えてくれた。
灰色のアスファルトの広がる無機質なあたしの日常へ。
あたしたち姉妹に、ただ「おかえり。」とだけ言ってくれた。
夜食には大分遅いけどな。なんて言って片目がチャーハンを運んできてくれた。魚肉ソーセージ入りの彼の「お得意」のまかないはいつもと同じ味つけ。十三夜月ははじめての温かい食べ物に少し驚いたらしい。口に運んで頬を染めて食べる姿がやっぱり可愛くて。
同じことを思ったらしい片目が「可愛いな。」なんて口走ったので思わず本気のラリアットをかましたけれど。
そんな「当たり前」な食卓が嬉しかった。
早く他の妹たちと一緒に、また温かいご飯を食べようか。
そのために・・・やらなくちゃいけないことがある。
辺りを照らし出したのは闇をかき消す、あの光。
涙が止まったのなら、さぁ・・・
「行きましょう。」
あたしが着替えをすましている間、何があったかは知らないけれど。
十三夜月の、あたしの好きな瞳の色が鮮やかに宿っていて。
まつり先生に十夜、片目がビルの出入り口まで送ってくれる。
行こうと、言おうとしたのはどちらが先だったか?
ゆらりゆらりと、不自然に体を揺らしてこちらに近づいてくるのは水色と桃色の二人の少女。
「小望月!十六夜!?・・お前たち、どうしてこんなところに・・っ!?」
驚き駆け寄る十三夜月の首をいきなり小望月がつかみ、そのまま力を込める。
ごっという唸りをあげて二人の体を蹴り飛ばしたのは、
「小望月!?十六夜!?」
目の前で、(自分自身)を蹴り飛ばし十三夜月を守るのは水色と桃色の二人の少女。
奇跡の様な二人は奇跡のような声でこう言った。
『十三夜月姉さま。』
「(これ)は、私たちではありません。」
「私たちがお姉さまを手にかけるなど。」
『この世の終わりが来てもありえない。』
これは、一体何事だ?まるで・・悪夢。
自分自身を倒す少女。その後ろにさらに何人も続く(少女の群れ)。
小望月と十六夜の同じ姿があと何対あるのだろう?
「・・・お前たち、これは。なにが起きているの?」
締められた首をしばらくおさえていた十三夜月が問いかける。
「『ドール』・・ね。」
まつり先生がぽつりとつぶやいた、目の前に広がる・・幾人もの少女たちを見て。
「聞いたことがあるの、(ライラ計画)の初期段階。見て。」
まつり先生の目線の先。飛ばされ、壁に激突して動かないままの十六夜もどき。腕には裂傷・・少し血が流れて・・・
いや、違う。
肌から見えるのは飛び出した何かのコードの様なもの。血液に見えるのはただの紅い色をした液体。
「育てた細胞を電気信号で動くように血管の代わりにチューブを使って筋肉組織に似せた細胞を動かす。人間の形をしたロボットってところね。どこからか発信される信号で遠隔操作しかできないから、単純な動きしかできない。関節の動きが明らかにおかしいしね。
この人数を・・どうやって作ったのかは分からないけど、十三夜月ちゃんが(こっち)にきてしまって動かせるコマがなくなって強硬手段に出た・・ってところかしら?」
「単純な電気信号を実行する能力しかないからあまり応用はきかないわよ。そのかわり・・命令系統が単純なだけ動きも力も大きいし、
痛覚というモノがまったく搭載されていない。動きを止めてしまわなければ這いずってでも向かってくるわ。」
めんどうだわね~。とかとなりで煙草のケムリを吐きながら、十夜がぼやいている。そんなに悠長に構えられるのも・・ちょっと。
「数で押そうとか、ベタな考え方ね。アナタたちの『おとうさま』っていうのは。
・・・こっちにだって数くらいいるわよ!!」
ぴいぃぃぎゃあああぁあ!!!
十夜の声に応えるように・・・いや、応えて響く・・・この声(?)は!!
・・・いつも・・疑問に思ってはいたのだ。この声の主は誰なのか、なんなのか。
それはまるで巨大なカラスのように見えた。
ように、というのも異様なほどに鋭い嘴、そして巨大すぎるその濡れ羽色の翼・・・大きさは・・たとえたくはないが10トントラックってあんな感じだった気がする。そんな異様な怪鳥(この表現が一番正しい気がする。)が、空を漆黒に染めている。何羽いるのかは数えたくない!
「十夜・・・あれ・・なに?」
思わず空を見上げたままのあたしに平然と、いつもの爽やかな笑みを浮かべて、
「うん。昔ね、巣ごと木から落ちたらしくて・・特製の餌をやって育ててみたらみるみる間に元気にそしてたくましく育っちゃって・・」
育ちすぎている!!明らかに育ちすぎている!!!正直、のど元まで出かかっているのだがいつのまにやら握られていた十夜のメスを見てあたしはさすがにその言葉を飲み込んだ。
「いや~・・育ったな~。」
片目、よく言った!
「でしょ?可愛いのよね~、なんかカワウソに似てて。・・・食べる仕草が。」
そこが一番似ちゃいけない!
「さ・あ・て・と。」
十夜はすっとメスでドールたちを指し示し、
「死肉を喰らえ!!カラス共!」
ぴひぃぎゃあぁぁ!!!
その声に嬉々とした鳴き声を上げてドールへ襲い掛かる鳥たち。
嫌ああぁぁ!!
その姿を直視することを本能が拒否する。今のうちにいってらっしゃい。なんてほがらかに笑うまつり先生がこの世で一番怖い気がする。
あたしは十三夜月の手を取り、小望月と十六夜の二人が彼女にしがみついているのを確認すると全速力で走りだした。
「・・・・・三日月・・?お友だちは・・・選んだ方が・・。」
「不可効力よ!」
あたしに半ばひきずられるように走る十三夜月にあたしはそう答えるしかなかったのだった。
今は・・・十夜があたしたちの姉にあたる事実を告げない方がいいような気がしたのだ・・本能的に。
その重みに耐えるかのように軋む音を立てて開く扉はまるで聖堂への入り口。
血管のように部屋中に広がるたくさんのコード。壁や天井に無数に埋もれるモニター画面。ありとあらゆる電子機器で埋め尽くされたその部屋の、一番奥。
玉座の様な装飾だらけの黄金の椅子。
真紅のベルベットの、カーテンのさらに向こうでちらちら点滅するモニターの画面に浮かび上がる。
たくさんの小さな光に照らされて、キラキラと光るのは・・・
大嫌いな、あの光。
『おとうさま。』
あたしと十三夜月が同時に声をかけた。
金色の長い髪を床まで伸ばし、それはアラベスクの絨毯の上にうねり、模様とまざりあいどこまでが髪かはもう判別できない。
日に当たらないせいなのか病的なほどの白い肌。やせ気味で白いシャツ、白いズボン、ありきたりなデザインの白いジャケット。
たしかに二十歳そこそこの青年に見える(それ)。
聖堂に鎮座する、白をまとうその男。それが(おとうさま)の姿だった。
正直、うろおぼえだったのだ。あたしは(おとうさま)の姿を全て思い出したわけではなく、その状態でここまでたどり着いた。
一番記憶に残るのは。
「やぁ。・・・久しぶりだね、『三日月』。」
穏やかに、朗読でもするかのような耳に残るこの声。
(あいしているよ。)
そうやってうそぶいて相手を縛る、あの声。
「・・・終わらせに来たわ。」
一歩。前に踏み出し、そう静かに言ったあたしの体が・・震えていることに彼女は気が付いているのだろう。
ぎゅっと、あたしの手を握って。
もう二度とこの手は離さないから・・・一人ではないからと。
「ドールたちを止めなさい。」
あたしに続いて十三夜月が言う。
「これ以上、無駄に戦う意味はない。もう終わりよ・・・なにもかも。」
「・・・・・終わる?」
玉座の姿が揺れた、どうやら笑っているらしい。
「何が終わるというんだい?始まるのさ、今日この瞬間から。君が自ら戻ってきてくれるなんて・・ああ、それとも十三夜月に連れられて?
まぁ。この際どうでもいいや。さぁ・・『三日月』・・研究塔の中へお入り。専用の(カゴ)の用意はできているよ。
私が直接、調整したか・・」
「戻らないわよ?」
ピタリ。と揺れる影が止まる。
「なんだって?」
「(戻らない。)と言ったのよ。あたしはもう二度と、お前の元へは戻らない。
もう一度言いましょうか?
おまえの元になど『もう、二度と、なにがあっても戻らない』。」
ゆっくり、ゆっくりとうつむいていたその顔が正面へと上がる。その瞳を閉じたままその声音は言った。
「なにを・・・言っているんだい?君が戻らなくては計画が・・私の夜が・・戻らないじゃないか・・・・・。」
「言ったでしょう。『終わる』の。お前だけの夜はもう終わり、新しい夜が始まるの。
本当の『やすらぎの夜』が。
お前という・・・『太陽』を沈めてね。」
返事は、ない。
「ライラ計画は今日で終わる。・・・・・さっき端末にウイルスを仕掛けさせてもらったわ、本当の意味でのウイルスよ。
大好物の伝達機能を持つ端末を食い荒らして、後にはコードの錆びすら残らない。物理的でしょ?
あとはこの部屋を破壊して、ドールを止めるだけ。」
そう、あたしがここに来るまでに寄ったのはただ十三夜月にあてがわられた自室。そこのコンセントにはめ込んだ(モノ)。
十夜の発明した『新兵器』とやらにまじっていた物騒なシロモノ。
ただのコンピュータウイルスなどこんな(電子的な城壁)の前では意味をなさない。どうせ十三夜月の部屋にも監視カメラくらいつけているのだろうが、そこには一瞬コンセントの近くにしゃがみ込み(何か)を差し込むあたしの姿。見た目は一般に表の世界で売られているノートパソコンの形をしているし、実際にパソコンとしての機能も生きていてそこから無線機器のように電波を流してやれば何かの連絡手段、あるいはそれこそコンピューターウイルスなんかを流しているようにしか見えなかったのだろう。今頃、とっくにドールたちが壊してしまっているだろうが・・・もう遅い。
「ドールたちだけは(ここ)から直接信号を送っているらしいからね。直接壊した方が・・早いでしょ?だから、この部屋に来ただけ。
おまえなんかに用なんてないわ。最後に、最高の絶望をプレゼントしに来た事実だけは伝えてあげる。
終わりよ。『太陽』。」
目の前の娘は・・なにを口走っているのか、『太陽』には理解できなかった。ライラ計画の内の一人(十三夜月)が予想外の動きをした。
生命維持活動が続いていたから放っておいたら夜が明けても戻らない。面倒なことなら(人形)ではなく(ドール)を使う手を思いついた。
いつかサンプルにでも使おうかと大量生産していた(ドール)。どうせ(素材)さえもどれば、それすらももう必要はない・・・まさか、それもまとめて(終わらせる)?
「・・・・・終わらせる・・ものっ・・かぁぁぁー!!」
上げたのはまるで獣の咆哮。
天井に向かって叫ぶと『太陽』がこちらを・・見た。
見開かれた、その瞳。大きく開かれた真っ暗な瞳孔、その周りを放射線状にさまざまな色が走って、まるでこの部屋のコードたちの様だ。
そのまま、目線をすぐ隣のモニターへと移した。おそらく視線でモニターに何かを入力しているのだろう。
開かれたままだった(聖堂)の扉がさらに大きく開かれるとそこにいるのは、あたしと十三夜月の姿をした(ドール)。
「そのドールはね、私のお気に入りで現時点での最高のスペックを持っているんだ!はははっ!さぁ、どうするのかな!?」
目の前に立ちふさがる、何の感情も持たない自分自身。(もしも)の世界の自分の姿。
なら、答えは決まっている。
あたしと十三夜月、二人が同時に刀を抜く。
(過去)を踏み台にして(もしも)を足場にして。(いま)を(未来)に続けるために。
あたしと十三夜月は(自分自身)に斬り込んだ。
あたしはドールに向かい、上段に構え斜めに振り下ろす。あたしの形をしたドールはそれを避け、振り下ろされた刀をそのまま踏みつけ、
床のコードの隙間に埋め込んでしまう。踏みつけた足はそのままに左手で拳打を打ってくる。狙いは喉。
このまま刀を握ったままなら当たっていただろう、しかしあたしはとっくに刀から手を放しその拳打を右手で受け止める。
衝撃で、一瞬手がしびれたけれどそれどころではない。足払いをかけてくるのをジャンプして避け、そのままさらに部屋の中へと進む形になる。あたしのドールは武器らしき物を持っていなかったがナイフ位なら隠し持っている可能性がある。飛び道具やながものは部屋を傷つける恐れがあるのが分かっているのだろう。
ちらりと横を見てみれば十三夜月も同じく苦戦していた・・しかし、その瞳に迷いはない。
追いすがって部屋へと侵入したドールに正面から右の拳を突き出す。その拳を腕ごと両手でつかまれるがそれはフェイント。
掴まれた右腕を軸にして飛び上がり、ドールの後ろに回り込む。その衝撃でドールの体勢が一瞬崩れた。それで十分。
あたしの手には愛刀・葛ノ葉。その刃をためらいなく、(自分自身)の首筋へと突き刺した。
倒れ、動かなくなったドールから刀をひきぬくと一瞬の血しぶき・・に似たソレ。まるで、真っ赤な薔薇が散った様に見えた。
十三夜月の方はちょうど決着のつくところだった。(自分自身)の形のドールを右下から左上へ一気に胴をなぐ。
自分の純白のワンピースが所々、しぶきを浴びて真紅に染まるのも気にしていないようだった。
たおれゆくドールの姿を少しさみしげに、けれど穏やかな表情で見つめている・・十三夜月。
部屋に現れたのはこの二体のドールのみ。
「私のっ!・・・私のドールが・・・・・このっ・・・・人形・・風情がぁ・・・。」
怒りの声が部屋に響く。震えは、もうおさまっていた。
ゆっくりと祭壇の様な部屋の奥へと進む。
一歩、また一歩と距離は縮んでいく。・・・これで。
「・・・・・・・最後よ。」
動かぬ『太陽』に向けて、刃を振り上げた。
・・・振り上げたその腕を止めたのは、十三夜月。
目線を合わせれば何も言わずに首を横に振った。
コツンコツンと足音を響かせ、彼女はその前に立つ。
「私になにができるんだい?」
そういった男の言葉などもはや、何の意味も概念も・・持たなかった。
「さようなら。愛しい、愛するおとうさま。
生きてゆくわ・・・お前が奪った命の分まで!!」
振り上げた、十三夜月の言葉と刀。
吸い込まれるように、白銀の刃が(おとうさま)の胸をつらぬいた。
血は・・・一滴も流れなかった。ただ、小さな火花が散るだけ。それが(おとうさま)だった(なにか)の終わり。
(それ)がなにか、確認はできたと思う。けれどこれ以上、十三夜月にこの姿を見せたくなかった。
・・・・・なにより、あたしがこれ以上この部屋にいたくなかった。
そこからの記憶が少し、あいまいなのだが。
その部屋に爆薬を2~3転がし、あたしたちは扉を閉めてそのまま研究塔と呼ばれるところへと向かった。
そこに行けばまだ培養ケースの中の妹たちに会える。そう思えば少し、気持ちが楽になった。
部屋を出て、しばらくはドールたちがあたしたちを狙ってきたけれど柱時計が午後三時の鐘を鳴らした瞬間、爆発音と建物の崩れる破壊音。
そうやって、(悪夢)は終わったのだった。
気づけば、十三夜月とあたしは研究塔の外にいた。少し遠くに崩れ落ちてゆく(おとうさまの城)。
「貴女たち・・これからどうするの?」
問いかけるあたしの前には小望月と十六夜の姿もある。
「生きていくわ。・・・どこでだって、どんな方法でもね。」
「・・・・・そう。」
「でも。」
「・・・?」
「もう、何も殺さない。誰の血も流さない。・・犠牲なんてもういらないわ。」
そっか。
「ねぇ・・よければうちにくる?話はつけてあるわよ。」
実のところ。ドールたちの襲撃を受けている間、まつり先生と連絡をとりあっていたのだ。右耳の王冠を抱いたココロのシンボル。
蝙蝠の様な翼をはやしたそのピアスは実は小型の無線機で。送受信可能のローカルチャンネル、さすがにラジオ番組の様な電波をチェックしている暇はないだろう。その送受信機でまつり先生が発案してくれたのだ。
『一人や二人、十人や二十人、居候が増えたところでこちらはかまわない。行きたい場所があるなら希望を聞いておいて。』
・・・と。
「・・・・・いつかっ!!」
「?」
「いつかっ!お姉さまって呼ばせてやるんだから!!同じ日に培養ケースから出れたからって!!」
普段の澄ました態度はどこへやら。
白い頬を朱色に染めて、ムキなって咬みついてくる十三夜月はとても可愛かった。
妹みたいと言えば余計にムキになるから言わないでおくけど。
ほかの「妹」たちをつれて、夜の道に消えていく十三夜月の後ろ姿を見ながら、
ひょっとしてあの子はただ単にツンデレなだけなんだろうか。
そんなどうでもいいことを思ったら思わず一人で吹き出してしまった。
「帰ろうかな。」
街灯の少ない、イタズラ書きだらけのあの町へ。
あの日から数日が立った。
十三夜月や例の双子たち。あの子たちの暮らしぶりは一応、把握している。あたしの願いに応えてくれるかのように、穏やかな日々を生きている・・・ハズ!たぶん!!
まぁ、あれくらいなら良しとしよう。目の前にあるパソコンを立ち上げて、開くのは音楽ファイル。
突然、携帯電話から着信の曲が流れた。
「もしもし?」
『夢ー久しぶり!!今、電話いい?』
「いいわよ。なに?」
『ねぇねぇ!!前に話してた映画見に行かない?割引券もらったんだ!!』
「ほんとう?・・・うん・・うん、分かった。今からそっちに向かうわ。」
通話を切り、出かける支度にとりかかる。待ち合わせの時間まであまり時間がない、急がないと。
ブルーライトで浮かぶ文字。
『この音楽ファイルを再生しますか? YES・NO』
カチッ。
『再生します。』
「・・・・・・・。
きっと、あなたたちにははじめまして・・ね。
三日月・・・私の可愛い娘。
ライラ計画の子供たちは皆私の遺伝子をベースに作られた子供たちなの。
クローンではないわ。
肉体強化・演算能力・・
たくさんたくさん・・遺伝子を塗り替えて、
あの男はたくさんの月を生み出した。
それはまるで狂った人形作家が人形を作り出すように。
けれど、あなただけは違うの。
私には愛した人がいたわ。
あなたはその人との子供。
けれど、私が身ごもったことがばれればあなたはきっと殺されてしまう。
だから私はまだお腹の中にいたあなたを
自分のお腹を開いて、
他のライラ計画の子たちと同じ培養ケースに入れた。
お腹の中であなたを育ててあげることはできなかったけれど・・
それでも、培養ケースの中のあなたが育っていくことがとても嬉しかった。
けれど・・・あの男に気づかれてしまった。
あなたが私の本当の意味での子供だということ。
私の愛したあの人は殺され、私は軟禁され、
こうやってあなたたちに言葉を残すしかできなくなった。
あなたの真実を知ったあの男はあなたに肉体強化・戦闘能力の強化をほどこした。
まだ培養液の中のあなたに。
そして、私は時期を見計らいあなたたちを培養ケースから出した。
その後、あの男は実験・強化訓練といってとても・・・
ひどい仕打ちをしたわ。
見てなんて・・・いられなかった。
けれど、助けることもできなかった。
ごめんなさい。
助けてあげられなくて。
「愛情」という言葉を使うあの男に、
「愛情があるなら殺してくれ。」と
泣いたあなたを私は一生忘れないでしょう。
けれど三日月、他の子供たちには父親と呼べる人などいないけれど、
私だって『お母さんよ』と胸をはっていってなどあげられないけれど、
あなただけには伝えておきたいの。
私はあなたたちの「お母さん」。
そしてあなたは愛しい、愛したあの人の娘。
あなたにもあなたの姉妹たちにも表立って名前をつけてあげることすらできなかったけれど・・・。
まだお腹の中にいたあなたに、私たちは名前をつけたの。
その・・・名前はね・・・『』。
愛しいあなたがきっと幸せになれるように。
願わくばライラ計画で歪まされてしまったあなたの姉妹たちも幸せを知ることができるように。
最後にこの言葉を。貴女たちへ。
『夜は安らぎ、闇は愛。』」
両親のつけてくれた大事な大事なあたしの名前。
口には出さない。
誰にも告げない。
とても大切すぎる宝物だから。
あたしは「三日月」。
ライラ計画、「満月」の娘の一人。
今は、それでいい。
だから、その名前をアーマーリングの裏に彫った。
いびつに彫れてしまった一つの言葉。
それがあたしの本当の名前。
今宵も変わらず、あたしはレースのついたドレスを身にまとい、
夜空の下を歩いていく。
アーマーリングを左手に。
そんなこんなのアーマーリングを左手に。でした。
お気づきの方もいるでしょうが(とかいうセリフを使ってみたいだけです。笑)
冒頭の『もしも、世界が、~』というのは
十三夜月ちゃんから三日月へのメッセージ。
本当は一行ずつ進めるつもりがラストあたりのガッとした急展開で
急遽、行数を調節するというまさかの事態が。
(なにやってんだ。)
だいぶ昔、まだストーリーもろくにできてないころから。
最後の一文だけは決まっていました。
・・・名前から入る人なので。
ビジュアルより先のパターンも多いです。(笑)
一番先に名前とビジュアル決定したのは十三夜月ちゃんですので、
ある意味主人公が妹かも、と思いますが、
隠し設定で主人公の方が0.1秒ほど姉であるというトリビアを進呈。
これから満喫するだろうし、いろんなネタをばらしつつ行くかもです。
ご拝読、ありがとうございました!!
すぐに後日談をアップする予定です!
キャラクター共々、
これからもどうぞよろしくお願いいたします!!




