32. ――― 換金
「それでは失礼しました」
ノルスたちは依頼の報酬をもらい会議室を離れたため、会議室はアクベルと受付嬢だけになった。
「会長、ノルスさんたちをBとCランクに上げて……本当に大丈夫ですか?」
ノルスたちのランクアップが早すぎるので、ほかの冒険者に不満を感じさせるかもしれない。と、受付嬢は少し不安になった。
「大丈夫だ」
「なぜそう言えますか?」
「あのノルスという少年は、尋常な者じゃないんだ」
さっきのロアの顔は真剣であり、アクベルを驚かせた。初めてロアがそんな顔をしたのを見た。それにロアの口ぶりは、ノルスを非常に重視しているようだった。
ロアは性格がひねくれて人付き合いも下手だが、ノルスと一緒になってからというもの、だんだん明るくなって笑顔も増えた。
そのために『ロアを大きく変えてくれた』と、アクベルはノルスのことを評価するようになった。
「注意深く鋭い目つき、強大なオーラも発散し、彼はなかなか隅に置けない存在だ。しかもロアに尊敬されてメイドに奉仕されて、きっと勢力や権威のある人に違いない」
「でも、ノルスさんは新規冒険者の登録用紙にただ名を記入しただけですよ……」
と、アクベルの言葉に対して納得できない顔をする受付嬢。
「彼はおそらく姓を隠しているのだろう。……まあ、貴族にせよ平民にせよ、これからノルスに注意する必要があろう」
「はい、会長」
「そして、あのメイドにも注意しないと」
「アイラさんですか?」
「そう、彼女も然る者だ。彼たちに何か動きがあれば、私に教えてくれ」
「かしこまりました。それでは今すぐ会長の指示をほかの受付嬢に伝えます。お先に失礼します」
その受付嬢は一礼をして会議室を出た。
「やはりとても神秘的だ……。ロアよ、あなたの弟子はいったいなにものだ?」
繰り返し考えても見当がつかなかったので、アクベルは長いため息をついた。
依然としてノルスのことを不思議に思った。
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それから魔石の換金のために、俺たちは魔石買い取り窓口に行った。
「魔石の換金ですか?」
「はい」
魔石を《収納箱》からそれぞれ1個ずつ受付嬢に提出した。
全部で94個。
94個の魔石を見て受付嬢は驚き、あまりにも多すぎると思ったようだ。
「これ全部を換金してほしい」
「はっ、はい、少々お待ちください」
受付嬢は虫眼鏡のような道具を使って、魔石を覗き込んで分類する。
魔石の買い取り価格は魔物の等級によって決まる。
魔物の等級は高ければ高いほど、魔石の品質も高くなる。
「お待たせしました。A等級の魔石が1個・B等級の魔石が41個・C等級の魔石が12個・D等級の魔石が11個・E等級の魔石が9個・F等級の魔石が20個です。 全部で大金貨5枚・金貨2枚・大銀貨3枚・銀貨2枚と大銅貨1枚となります」
「わかった」
「どうぞ、お受け取りください」
受付嬢にお金をもらった。
一つのSSS等級の魔石は大白金貨十枚に換える。
一つのSS等級の魔石は大白金貨一枚に換える。
一つのS等級の魔石は白金貨一枚に換える。
一つのA等級の魔石は大金貨一枚に換える。
一つのB等級の魔石は金貨一枚に換える。
一つのC等級の魔石は大銀貨一枚に換える。
一つのD等級の魔石は銀貨一枚に換える。
一つのE等級の魔石は大銅貨一枚に換える。
一つのF等級の魔石は銅貨一枚に換える。
依頼の報酬と魔石の換金からギルド入会金を引いて、俺たちは大金貨10枚・金貨2枚・大銀貨3枚・銀貨1枚・大銅貨1枚の純益を獲得した。
日本円にすると……102311000円になる!
一日に数億円を稼ぐなんて、あんまりにも多すぎるだろう……。
「あの、報酬の分配について話をしていなかったが、三人パーティーだから三等分しなければなりません」
「報酬は結構です、ノルス様」
「えっ、なぜですか?」
「タンペスヌームに旅行してきた目地は、ノルス様たちに冒険者体験をさせるためです。私は何か報酬を求めようと考えたことはありません」
「ご主人様、わたくしも結構です。わたくしのすべてはご主人様のものですから、ご主人様のそばにいられるだけで満足です」
彼女たちが報酬の分配を断るとは思わなかった。
しかし、そうすれば……こんな多くのお金を俺一人で受け取ることになった。
いやいや、これはちょっと……。
「ノルス様、ご遠慮なく受け取ってください」
ロアは優しく微笑み、まるで俺の心を見抜いているようだ。
「本当にいいのか?」
そう聞くと、彼女たちはともに頷いた。彼女たちのはっきりとした態度を見て、仕方なく受け取った。
……まあ、このお金の用途については俺に考えがあった。それは人材を育成して情報網を構築することだ。
すべてのお金を《収納箱》に入れると、突然グーという音がした。
「すみません、失態しました……」
ロアは顔を赤らめ、空腹のようだ。
時間を見るともう昼食の時間だ。
「じゃ、昼食をギルドの酒場で食べるのはどうだ?」
「いいですね」
「わたくしも贊成します、ご主人様」
「それなら、行こう」
そのために酒場に来たけど、酒場の中は人が多くてざわざわと騒がしい。
みなはしゃべったり笑ったりしてとても楽しそうだ。と思っていると、一人の受付嬢が愛想よく出迎えてくる。
「いらっしゃいませー!何名様ですか?」
「三人です」
「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」
受付嬢に案內され、俺たちは空席に座った。
「こちらがメニューでございます、どうぞご覧ください」
と、俺たちにメニューを渡す受付嬢。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
その受付嬢にメニューをもらった。
メニューを見るといろいろな料理があり、何を食べようかと迷う。
しかし、酒場に来たのだから酒を注文するところであり、王国の法律には飲酒に関する年齢制限がないのだが、俺たちはまだ年が若いから酒を飲まない。
「初めて来たので、どの料理を注文したらいいか迷っている。おすすめはなに?」
「はい、ありますよ。うちの看板料理は塩焼きアルミラージ肉です」
「そうか。じゃ、それを一つくれ」
「はい、かしこまりました」
「私も塩焼きアルミラージ肉を一つください」
「わたくしも塩焼きアルミラージ肉を一つお願いします」
「塩焼きアルミラージ肉を三つですね。以上でよろしいでしょうか?」
「うん、とりあえずそれで」
「かしこまりました。少々お待ちください」
受付嬢はお辞儀をして、その場を離れた。
Bランク冒険者になって嬉しいが、なんだか変な感じがする。
いきなりBランクに上がるなんて早すぎじゃない?
アクベルは何を企んでいるのか?
……理由がわからないけど、アクベルがどんな計略を使おうとも俺にはそれに応じる方法がある。
まもなく料理が出てくる。
「お待たせしました」
香ばしい匂いに思わずおいしそうと呟いた。それだけで腹の虫が鳴き、生唾が沸いてきた。
「いただきます」
「いただきます」
俺とロアは合掌しながら言った。
肉々しく肉汁がじゅわぁーっと溢れ出す。
フォークを取って塩焼きアルミラージ肉を一口食べる。
「うまっ!」
焼きたてなので熱いが、アルミラージ肉は歯ごたえがあり、うますぎてフォークが止まらない。
「おいしいですね」
ロアも一口食べて幸せな顔をした。
しかし、アイラはまだ食べ始めていない。アイラは奴隸だから貴族や平民と一緒にごはんを食べることができない。
貴族や平民がごはんを食べ終わったら奴隸は食べ始められる。この世界にはこういう慣習がある。
「アイラ、早く食べないと、冷めてしまうぞ」
「でも……」
「でもじゃない。早く食べよう、アイラ」
「ノルス樣の言う通りです、早く食べて」
「かしこまりました、ご主人様、ロア様。そしてありがとうございます……」
アイラの声は小さくなり、聞こえなかった。
「なに?」
「いいえ、なんでもありません。それではいただきます」
アイラも合掌しながら言い、フォークを取って食べ始めた。
俺にとってアイラはただの奴隸じゃなくて仲間だから、地位なんて気にしない。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




