31. ――― 報酬
なんだ、それは……。
今、俺たちは苦境に陥っている。オークの集落を討伐している途中で、いきなり前に巨大オークが現れた。
そのオークは筋骨逞しく、長い柄の大きな斧を持ち、甲冑を身につけ、殺気がみなぎっているように見えた。
思わず身体が震え始めた。
俺がその魔物に怯えるなんて……。
そして我に返えると、俺たちはオークたちに取り囲まれたことに気づいた。
くそ……と、こぶしを握りしめた。ロアとアイラも顔面蒼白だ。
「あれはいったいなんの魔物だ?」
「あの魔物はA等級のオーク将軍です、ノルス様。オークより優れた力を持ち、オークの上位種です」
A等級のオーク将軍か……。
オーク将軍が現れるとは思わなかった。依頼内容に書かれていなかった。
この突発事態のために依頼の難度がSランク以上に上がった。
オークたちはますます近づけてきたので、俺たち三人は互いに背中を合わせた。
「あのオーク将軍はおそらくこの集落のリーダーです。今の形勢は私たちに不利ですが、オーク将軍を倒したら、必ずオークたちの士気をくじくと思います、ノルス様」
ロアは冷静に戦術を教えた。
「なるほど、擒賊擒王という意味ですね」
「その通りです」
「じゃ、オーク将軍は僕に任せろ」
「わかりました。気をつけてください、ノルス様」
「ご武運をお祈りします、ご主人様」
予想外なことだけど、今は戦うしかない。
落ち着いて前に突き進んだ。
銃をオーク将軍に向け、《魔網》を発動した。
「ガオオオオオオオー」
「ありえないだろ……」
しかし、《魔網》に包まれたオーク将軍は力ずくで《魔網》を振り切った。
目の前の光景は俺を驚かせた。今まで失敗したことがない《魔網》が振り切られるなんて。
《魔網》に包まれると、もがけばもがくほどきつくなるので、《魔網》から脱け出すことは不可能だ、しかし……。
―――やはりオーク将軍を舐めてはいけない。
これ以上、俺も遠慮しない。
《多重魔法》で三十個の魔法陣が現れた。
蜂の巣にしてやる。《炎弾》発射!と、手を前に振った。
《炎弾》は機関銃のようにオーク将軍に向かって掃射を始めたが、オーク将軍は斧を振り回して盾として《炎弾》を弾いた。
火力を高めるため、いっそう手に魔力を注入した。さらに三十個の魔法陣が現れ、絶えずオーク将軍を撃ち続け、煙を上げた。
こんなに掃射されれば、きっと死ぬだろう、と思うが……。《周囲感知》には依然として魔物の反応がある。
「なん……!」
煙が消散したらオーク将軍はまだ生きており、しかも無傷だなんて……うそだろ。
「ガオオオオオオオオォー!」
と、耳をつんざくような叫び声を出したオーク将軍。さっきの攻撃はオーク将軍を怒らせたみたいだ。
にわかにオーク将軍の目は鋭くなったので、ちょっと悪い予感がして警戒をした。
オーク将軍は俺に向かって突進し、頭の上から斧を振り下ろした。俺は後ろに跳んで攻撃を回避したが、この一撃で床に亀裂が走った。
こいつ、大した力持ちだな。
いや、今は感嘆する場合じゃない、俺はどうやったらあいつを倒すことができるのか?
自分の力はオーク将軍に敵わないのだから、強引に攻めてはならない。
周囲を見て……俺はほくそ笑んだ。オーク将軍を倒す方法を見つけたから。
手に魔力を注入し、また《炎弾》を発射した。もちろんオーク将軍に防がれたけど、これは計画だ。
「デブよ、早く俺を殺しに来い」
オーク将軍を挑発した。
「ガオオオオオオォー!!!」
激怒したオーク将軍は雄叫びを上げて攻めかかってきた。
さあ。
周りの木に十本の指から《魔糸》を打ち出し、攻撃をかわしながらオーク将軍を罠におびき寄せる。
そのために《魔糸》はオーク将軍の四肢に巻きつく。
「ガオ?!」
気づいても、もう遅い。
手を振って《魔糸》をオーク将軍の全身に絡みつけた。
「ガッ、オオオオオーッ!!!」
オーク将軍は逃げようと力いっぱいもがいている。
お前はもう、逃げられない。
《魔糸》を通してオーク将軍に魔力を注ぎ込んで《炎弾》を発動すると、五十個の魔法陣が現れて一斉に爆発した。
防御できないオーク将軍は縛られたまま攻撃を受けた。
「ガァオオオオオォー!」
と、爆発に吞みこまれ、苦しそうな悲鳴を上げたオーク将軍。
爆発によって甲冑と斧が破れ裂け、体中傷だらけになったが倒れなかった。
倒れないなんて、こいつの生命力は強すぎるだろう。
虚弱のように見えるオーク将軍は俺の方にゆっくりとやってきて、また戦いをしたいようだ。
「……っ」
固唾を飲んで戦いの準備をしたが、オーク将軍は俺の前に倒れた。
やっと魔物の反応がなくなった。死んだようだ。
これを見て、安心してほっとした。
ついに終わった……。
オークたちはオーク将軍が倒されたのを見て、うろたえた。
こっちの戦いはもう終わったから、ロアとアイラを手伝ってオークたちを倒しに行く。
オーク将軍の死でオークたちは戦意を失い逃げる。
当たり前、逃げさせるわけにはいかない。
《魔糸》を使ってオークたちを包囲し、《炎弾》を発動して全部を殺す。
『レベルが1アップしました』
頭にシステムのような音が鳴り響き、俺のレベルは132になった。
「師匠、これで依頼を完成しましたね?」
「はい。あとはただ、魔石を回収してギルドに戻ることです」
「わかりました」
それから俺たちは一つ一つ死体を解剖し始め、体内の魔石を取り出して《収納箱》に入れる。
すべての魔石を回収し終わった後、ギルドに戻る……。
✮✮✮✮✮
「本当ですかっ!?」
ギルドに戻ってその受付嬢に依頼のことを報告した。
俺たちはさっきオークの集落でオーク将軍に遭ったことを受付嬢に報告したため、受付嬢が驚いて大声で叫んだのでギルド全員がこっちを見た。
「本当だよ」
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「俺たちは大丈夫だから心配しないで」
「それはよかったです……。依頼の内容に間違いがありましたことを、心よりお詫び申し上げます。ノルスさんたちを危険な状況に遭遇させてしまい、本当に申し訳ございません」
受付嬢は頭を下げて謝った。
「謝ることはない、これはお前の過ちじゃないんだ」
「でも、オーク将軍はA等級の魔物です……」
「安心しろ、オーク将軍はもう倒されたから」
「えっ?!もう倒されました?」
「そうだよ」
俺の報告を聞いた受付嬢はまた驚いたが、ロアを見ると落ち着いた。
「そっ、そうですね。さすがロアシース様、オーク将軍を倒すとは」
「ええと、私がオーク将軍を倒したのではないのですが」
「えっ?えええええー!?」
ギルド全員が再度こっちを見た。
「それでは誰がオーク将軍を倒したのですか?」
「ノルス様ですよ」
「ノっ、ノルスさん?!」
目を大きく開き、信じられない様子で俺を見る受付嬢。
「ええ、俺がオーク将軍を倒したけど」
「そっ、その、少々お待ちください!」
受付嬢は慌ててその場を離れた。
「彼女はどうしたの?」
「わかりませんが、彼女を待ちましょう」
まもなく受付嬢が戻った。でも、彼女のそばにある人がついてきた。
周囲の人々はその人を見ると騒ぎ始めた。
その人はとても年上にしか見えない。白髪まじりで、豊かなあごひげを生やし、燕尾服を着て杖に縋っている。
彼は誰?
「お久しぶりだな、ロア」
「本当にお久しぶりです、アクベル様」
彼の名前はアクベル、ロアの知り合いのようだ。
挨拶をしてからアクベルは俺を見る。
「受付嬢たちから聞いたが、ロアが弟子を取るそうだな。この子はおそらくロアの弟子だね」
「はい」
「ふぅ……不思議だな。ロアが弟子を取るなんて」
アクベルはじろじろと俺を眺めて、ロアは苦笑した。
「その、師匠。こちらの方はどなたですか?」
「ああ、すまない、自己紹介を忘れた。私の名前はアクベル・ラゼス、よろしくな」
「それにアクベル様はこのギルドの会長です。私と同じくSランクの冒険者ですよ、ノルス様」
「そうですか」
なるほど、アクベルはこのギルドの会長だけじゃなくSランクの冒険者である。だから、みなが騒ぐわけだ。
できればアクベルも俺の支配下に組み入れてほしい。
「ここは話合いにはふさわしくないので、会議室に場所を変えよう」
「はい」
アクベルは俺たちを会議室まで案内して、俺たちは会議室に入った。
会議室はギルドの二階にある。
「座って」
ソファーに座った後、アクベルはまた俺を見る。
「ロアに『様』と呼ばれてメイドに奉仕されて、あなたはきっとある貴族や身分の高い人の息子だろう」
「……っ」
すべて言い当てられた。
「図星だろう?まあ、それはほっといて本題に戻る。あなたがオーク将軍を倒したとは本当か?」
「そうですよ」
「ふぅ……」
「アクベル様、ノルス様がオーク将軍を倒したことは本当です、冗談ではありません。ノルス様の実力はAランク……いいえ、Sランク以上かもしれません!」
「……あなた、いったいなにものだ?ロアからこんなに高く評価されているなんて」
俺は答えず、ただにっこりと微笑んだ。
「やはり神祕的だな、あなた……。さて……」
と、大金貨5枚をテーブルの上に置くアクベル。
「これは依頼完了の報酬だ。そして……」
アクベルは二枚の冒険者カードを取り出した。一つは銀のカード、もう一つは銅のカード。
「ノルスとアイラ、あなたたちはオークの集落の討伐に成功したので、冒険者ランクが上がった。ノルスはBランクに上げて、アイラはCランクに上げた」
アクベルから新しい冒険者カードをもらった。
「おめでとうございます、ノルス様、アイラさん」
「ありがとうございます、師匠」
「ありがとうございます、ロア様」
嬉しい、俺はBランク冒険者になった。アイラもCランクに上がったので喜色満面だ。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
とか思いましたら
是非下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちでまるで構いませんか!
よろしくお願いいたします。
白皇 コスノ 拝啓




