30. ――― 冒険者
馬車に三時間ぐらい乗り、やっと立派な城壁が見えてきた。
今日の目的地は冒険者都市タンペスヌーム、それもお父さんの領地内にある一都市だ。タンペスヌームはクラースファの北に位置していて、冒険者が集まる都市として有名だ。
冒険者の主な仕事は、魔物の討伐、商人の護衛や薬草の採取などがあり、力や知識が問われるので、冒険者たちの興味をひく。
城門の周りは人通りが多く、賑やかそうだ。
「身分を確認できる書類をご提示ください」
町や村に入る時、必ず身分の確認が必要になる。あるいは入城料で大銅貨3枚を支払わなければ城内に入れない。
貴族としての俺たちは優先的に城内に入れるけど、俺にとってこれは大切な旅行だから、誰にも邪魔されたくないために、紋章が付いていない馬車に乗ると決めていた。
ロアは懐から身分証を取り出して呈示した。
「なっ、なんとロアシース様ですか!失礼しました。どうぞご入城ください」
その兵士はロアの身分証を見ると、すぐに礼をした。ロアの名望は高いようだ。
車夫が手綱を引いて馬車を進め、城内に入った。
人の声はがやがやと沸き立つようであり、誰もが様々な武器を持っている。
「まずは冒険者ギルドに行きますね」
「それは楽しみです」
冒険者になるには、冒険者ギルドへの登録を行なわなければならない。
まもなく馬車は冒険者ギルドの前で止まった。ついに冒険者ギルドに着いた。
ドアを開けて馬車から降りた。すぐ目の前に建つ冒険者ギルドはすごく規模が大きく見えて引きつけられた。
「タンペスヌームにある冒険者ギルドはグロルートス王国の中で、一番規模が大きいのですよ、ノルス様」
「そうか」
もう冒険者になるのが待ちきれなくなった。ギルドの階段を上がり、扉を開けて中に入った。
やはりギルドの中もかなり広いし、たくさんの冒険者もいる。酒場も併設されているから、少しざわざわしている。
冒険者登録のため、受付に行く。
「冒険者ギルドへようこそ」
と、受付嬢に挨拶された。
「俺たちは冒険者になりたいが、どうすればいい?」
「新規登録の方ですね。それではこちらの用紙に記入頂き、入会金として大銅貨5枚を払っていただければ誰でもなれますよ」
「わかった」
俺とアイラはその用紙を受け取って、必要事項を記入する。
必要事項は氏名・性別・年齢など。でも、氏名に「ノルス・ガルメス」と書けるわけがないだろう、きっと騒動を起こすに違いない。それ故に「ノルス」とだけ書いた。
紙を受付嬢に返し、大銅貨10枚を払った。
「ノルスさんとアイラさんですね、これでは登録が完了しました。こちらはノルスさんとアイラさんの冒険者登録証です、大切に保管してください」
「はい、ありがとう」
最初はFランクからになるので、鉄のカードだ。これで俺とアイラも冒険者になった。
FとEランクは鉄のカード、DとCランクは銅のカード、Bランクは銀のカード、Aランクは金のカード、SとSSランクは白金のカード、最高のSSSランクは黒のカード。けど、今まで誰もSSSランクに到達していない。
「依頼は入口右手の掲示板に貼っております。依頼の中には失敗した時に違約金が掛かるものがありますので、受注する時は気をつけてください」
「わかった」
依頼ボードへと向かった。
多くの冒険者がこのボードの周りで貼り出された依頼を見ていたため、俺たちもその中に入って見た。
依頼は結構色々あると思った。依頼については、通常依頼、指名依頼と緊急依頼の三種類がある。一般的には通常依頼となる。ただし、依頼者が特定の冒険者を指名した場合、ギルドで審査した後に指名依頼となる。そして緊急依頼は非常事態の時に出される依頼だ、例えば魔物の氾濫を退治することなど。
「どれを選ぶべきだろうか?」
「この依頼はどう思いますか、ご主人様」
アイラがボードから取りはずした依頼状を見ると、その依頼のタイトルは『オークの集落を討伐』だ。依頼内容は『北の森にあるオークの集落を討伐してください。報酬:大金貨5枚。推奨冒険者ランク:A以上』
オークの集落を討伐するのか……。オークはB等級の魔物と覚えているけど、集落になっていたので難度がAランク以上に上がった。それでもやってみよう。
「いいね、これを受けよう」
「ノルス様はどんな依頼を受けるか決めましたか?」
「オークの集落を討伐という依頼です、師匠」
依頼状をロアに渡した。
「いいと思いますね、報酬も高いですし」
依頼を決めてから受付に行った。
「あの、この依頼を受けたいんだけど」
「……えっ?!」
受付嬢はその依頼状を見て驚いたような顔をした。
「ノルスさんは冒険者になったばかりでしょう?これは難度Aランク以上の依頼ですよ、本当に受けますか?」
「はい」
「でも……これはちょっと……」
「もちろん一人で討伐するんじゃなく、パーティーだ」
「パーティー?」
「ええ。俺、アイラそして師匠が組んだパーティー」
「師匠?」
ロアはギルドに入ってからずっとフードをかぶっているので、顔がよく見えなかった。
「はい、私はノルス様の師匠です」
「その、冒険者登録証を見せてもらってもいいですか?」
「いいですよ」
懐から取り出した冒険者登録証は白金に光り輝くSランクのギルドカードだ。
そのカードを見ると、受付嬢は目を見開いて驚愕の表情をした。
Sランクである冒険者は多くの功績があり、化け物レベルの戦闘能力を持ち、人々に尊敬されている世界トップクラスの存在だ。
「もっ、申し訳ございません、先ほどは大変失礼しました、ロアシース様」
受付嬢は顔面蒼白になり頭を下げた。
「いいえ、謝ることはないんです」
その様子に驚き周りの者たちが俺たちを見た。
「なんだと!?ロアシース様って《天眼》の持ち主のロアシース様か?!」
「えー、マジで本人?!」
「あのカードを見れば、確かに本人だ」
皆も衝撃を受けてざわつき始めた。見たところ、ロアはとても有名な冒険者みたいだ。
「とにかく私たちはこの依頼を受けます」
「はっ、はい、かしこまりました!」
「それでは行きましょう、ノルス様」
「うん!」
依頼を受け、俺たちはギルドを出た。すると、あの受付嬢はショックのあまりその場に倒れた。
✭✭✭✭✭
「初めてパーティーに加わりますね」
「えぇっ?!師匠は今までずっと一人で行動していたのですか?」
「はい」
ロアの平然とした返事にびっくりした。一人の力でSランクになったなんてさすがロア。
城門を出て北の森のほうへ向かう道を歩き、森の入口に着いた。
《周囲感知》発動!
「行こう」
すぐに魔物の反応があった。前方六百メートルほどの場所に七匹の魔物がいる。
俺たちは注意深く森の奥へと進みながら、周囲の状況に気を配る。七匹のスライムが見えた。
スライムは最低レベルのF等級の魔物だから、倒すのは簡単だ。
俺とアイラは前に突き進んで《魔糸》を使い、スライムたちに不意打ちをかけて倒した。
「ノルス様、魔物の体内に魔石があります。ギルドは魔石を買い取ることがあるので換金できます」
「わかりました、師匠」
ばらばらになったスライムたちの死体を解剖し、赤い水晶のようなものを取り出した。これは魔石だろう。
魔石を《収納箱》に入れ、前に進み続けた。途中でいろいろな魔物に襲われたが、すべてを倒して魔石も回収した。
そしてついにオークの集落に着いた。オークは全部四十二匹いる。
「ちょっと多いかな……」
「オークは知能の高い魔物だから、気をつけてください」
「はい」
《収納箱》からデザートイーグルとジェリコ941を取り出し、アイラと集落に突撃した。
俺は《炎弾》を発動してオークたちに射撃し始めた。
アイラも《魔糸》を使ってオークたちの体を絡みとり、こぶしを握り締め、オークたちを《魔糸》で八つ裂きにした。
ロアは後衛として魔法を発動して俺たちに襲いかかってくるオークたちを倒した。
「危ないです、ご主人様!」
いきなりオークは《火炎剣》で斬りかかってきたが、俺はそれをかわした。
「後ろ、アイラ!」
オークは《風刃》を発動して攻撃してきたが、アイラもそれをかわした。
「あなたたち、大丈夫ですか?」
「大丈夫、師匠」
「わたくしも大丈夫です、ロア様」
オークは魔法と剣技ができる魔物で数も多いので、ちょっと厄介だ。
「ガオオオオオオオオオオー」
突然、雷のごとく大きな雄叫びが響いた。そこに現れたのは他のオークよりも体の大きな巨大オーク。
やべぇ……と思わず冷や汗をかいた。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
とか思いましたら
是非下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちでまるで構いませんか!
よろしくお願いいたします。
白皇 コスノ 拝啓




