#09 天の時、掴みました。
「ねぇそれデジタル迷彩の軍服ってやつでしょ!どこ住み?何で転生してきたの?ガイアさんに会ったでしょ!?あ、それとも日本語わからない?にーはお?」
「やかましいわ!!!貴様今何時代だと思っていやがる!?」
「戦国……でしょ?小野寺輝道がいる時代だから」
「じゃあ何で俺の転生先の戦国時代にセーラー服の女子高生みたいなのがいるんだ!!」
「あの……殿……これはどういう?」
「後で説明する!まずはこいつを問い詰めなきゃならなくなったからな!ついてこい!お前もだJK!」
「ただ今!」
信本が答える。その後ろから顔を見合わせる成武と舞がついてくる。問題の女子高生もついてきているようだった。
「さて、まず話は刑の後に聞こう。槍とレーザー銃どっちがいい?」
「待って!それ死んじゃう!どっちも死んじゃうから!てかレーザー?」
「わかった両方だな、槍用意!」
「だから待って!私別にまだ何も悪い事してないよね!?同じ転生者に殺されるとか流石に笑えないんですけど!?」
「『まだ』ってことはする気があるのか、槍構え!」
「わぁぁぁごめんなさぁい!!殺すのだけはごかんべんをぉ!!」
確かに館の中に血が付くのは掃除が面倒かつ衛生的に悪いので場所を変えた方が良いな。
「よしわかった!雄物川へ連れていきそこで切れ!」
「いやぁぁぁ!!まだ変な事されてた方が生きてられるからよっぽどマシなのにぃぃ!!」
「まだ減らず口を叩くか!こいつ!!」
「出来る事なら何でもしますから!!殺すのだけはまってぇぇ!!」
「よしこいつ、雄物川までは曳き回して…何でもすると言ったな?」
「あっえっ///」
何故そこで目を逸らす……これだから一昔前の若者は……
「よし、まず何故お前は俺の邪魔をする?」
「邪魔……した覚えはぜんぜんないんですけど……何かまずい事でもしました?」
「お前が!家臣達の目の前で!俺が転生して来たとか喚いたことだ!下手したら歴史が訳が分からなくなるぞ!」
「あっ……」
その事を全く考えていなかったのかこの女子高生悪魔。
「第一、そんな事言ってもまかり通らないから俺は伏せてたというのに、お前は!!」
「っでも!私がいるからそれは証明できるじゃない!」
「お前と同じ頭がどうかしている奴として扱われたくはねぇよ!この大アホが!」
「殿……」
「なんだ舞?今やめておいた方が良いのは見てわかるだろう?」
「お言葉ですが航太さん、『人の和』ですよ」
……そうだったな、落ち着こう。
「取り乱してすまない、それで舞、何か?」
「はい、彼女の話ですが……殿の得物やなりから殿のお考えまで、どこを取っても大きく私達を凌駕している事を考えると、正直信じるに足るのでは、と思ってしまいますが……?」
「そうか、成武はどう思う?俺がこの世界に転生して来たと言っても信じられるか?」
「ふむ、正直そのような事が起こり得るものかと思わぬ事もありませぬが、竹取のような伝承は数多くありますからな。一つや二つ、真であってもおかしくはない上に、ここまで見せられてしまうと疑う余地もありませぬな」
「……そうか、なら家内ならばそこまで殺気立って隠す必要も無くなったんだな。でさて、この騒ぎを起こしたこいつ、どうしてくれようか……」
「迷ってるなら告っちゃいなYO!」
「よし切れ」
「待ってぇぇ!ふざけたのは謝りますからぁぁぁ!」
「納得行かねぇ」
「まぁまぁ、これが一番『人の和』を保てますし、他の家に転生前の世界の知が触れ渡ってしまいますと当家の『地の利』にあたるものが無くなってしまいますよ」
結局、この馬鹿を橋本家の武将として取り入れてしまおうと信本が提案して来た。しかし、自分の言ったことがしっかり浸透している反面、俺が実践できてないのが腹立たしいやら。
「取り敢えずこの馬鹿はどんな奴なのか、おい馬鹿!簡単に自分の経歴をまとめろ、その位は出来るだろう?」
「バカバカ言い過ぎです!三島悠香、中三なので実は女子高生ではありませんでした!」
「いや、それはどうでもいい。大体セーラー服を着ている、ってことは実の所人間じゃありませんでした。とかいうオチじゃなかろうな?」
「何で!?セーラー服は制服だから着ていたんですけど!?」
セーラー服というのは海軍の中でも人間でない兵が目立つように着せられるもので、一般には存在しない物な筈だが……?
「制服?海軍の機械歩兵だけが着るものだろ普通は」
「そっちこそ何よ!?おーとまたって?しかも今の日本じゃ海自でしょ?」
なんか雲行きが怪しくなってきたぞ……セーラー服が制服ってのは半世紀前のはな……し……?
「おいお前、何年生まれだ?」
「///それ女の子に聞く?」
「それ聞いても年齢はわからないし、学年言ってる時点で手遅れだけどな」
「あそっか」
あそっかじゃねぇだろ、こいつやっぱ馬鹿なのは正解っぽいな。
「1995年八月生まれ、これがどうしたのよ?」
「二十世紀生まれだと!?お前いい年のババァじゃねーか!」
「ひどい!バカだとかババァだとか初対面の人に向かって言うことば!?」
「そっくりそのまま返させてもらう。普通初対面の相手に向かって転生だのなんだの聞かないだろ」
物凄く口が悪くなってる。想像以上にこいつの精神的攻撃力は高いみたいだ。
「それは……そぅかもしれないけどぉ」
「それはさておき俺の年は16、お前のひとつ上だが問題は生まれたのは2038年の一月だ」
「……それってつまり、私よりも未来から来たってこと?」
「になるな、ものの見事に人間ってだけで希少価値になる時代だ」
「うわぁ、それって何かに侵略されたの?」
「侵略はされてないが、人工知能だな。というか人間はそのことで結局また戦い始めやがった。人工知能が人間を超えることは一切認めないとする者とその逆と、まぁ今の俺らには関係ないがな」
と、軽く語った所で宗全が入ってくる。
「航太夫!よく聞け、戸沢治部(戸沢盛安)が明日にでも兵を率いて沼館城を落としに行く腹積もりらしい。援軍を出すと伝えれば一息に盟友となるだろう」
「!」
これは絶好のチャンス!
「是非ご加勢させて頂くと治部殿に伝えてくれ。勿論、俺も出るぞ」
「承知!」
天の時、掴んだり!兵がどれだけ訓練できているか問題ではあるが待っていられる状況じゃあない。
「信本、成武、舞、武本と吾六、それに甚兵衛、助本と茂造に戦支度をせよと伝えてくれ!」
「「「はっ!」」」