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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅱ.鮭の力は世界を変える!? 羽州一の空き巣泥棒
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#69 王国、建国されました。

 ゲームと現実でほぼ唯一、全く違う事がある。『人』である。


 稀にしっかり考慮しているものもあったりはしたが、普通は資源さえそろっていればいくらでも生産可能な人間が登場することが多い。一クリックで食料すら消費せず延々働き続ける弓兵から善政と呼ばれる政策を行うだけで世界人口を遥かに超えて人が増殖し続けるものまで様々だが、世の中そんな甘くない。


 それこそ俺の居た世界でさえも長く縛られてきたこの『人的資源』の制約をようやく乗り越えたばかりだったのだから、戦国時代のこの世界では当然、最も守らなければならない存在、『最もかけがえのない資源』という変な言い回しだがそういう事になる。


 つまり、すぐには回復しない、失ったらそれまでという国内の『人』を出来る限り減らさずに戦わなければならない。


 加えて今回の相手は資金力、国力、軍事力……もうどの面をとっても新興勢力の橋本家を大きく上回る古参の大勢力である。それこそ天文の乱以前は最上家すら支配下に入っていた事もある。


 だから尚更、短期間で決着をつける必要がある。

 だがこの短期決戦を正面から仕掛けても勝利できる戦力は橋本家には無い。ならばどうするか。


 一応、構想はある。大沢に戻った時にどれだけの戦力があるかに大きく影響されるが……


「航太殿!一大事じゃ!」


 山形城の最上家改め最上軍団に短期戦展開の為の出陣の指示と山形城の『死守命令』を出し、妙に懐かしい橋本家の本拠地、大沢に戻ると和尚さんが戻って早々、悪い報せをデリバリーする。


「最上と戦って従えたそうじゃな?その最上が無くのうたが為に大崎、葛西、二本松、大内、田村が伊達に庇護を求めたそうじゃ。そればかりか……」


 そればかりか?


「伊達家当主、伊達政宗が弟君、小次郎殿が黒川に入り蘆名の当主、蘆名(あしな)盛隆(もりたか)を追い出し『蘆名(あしな)政道(まさみち)』と名を改め家督を継ぎ、その直ぐ後に大変な布告をしよったのじゃ!」


 そう言って伊達家の使者から贈り物として押し付けられたという物と付属の文書を見せられる。


「って文書見せられてもわからないんだけどな。なんて言ってんだ?」


 信本に読んでもらおうと考えて見せるが……


「はっ……此度……伊達…の……なんでしょうかこれは……公爵??……まさむゑ?政宗ですねきっと……」


 え、もしかしてこの時代の人でも駄目?なんか信本でもかなり苦戦してるみたいだ。


 そして押し付けられた物は……


『伊達王国』と大きく書かれた紙と黒地に黄色で伊達家の家紋、竹に雀が上部に刺繍され下部に赤、黄、青、緑、白の五色の丸が互い違いに五つ並んだ『国旗』が……


 これ政宗の中の人も転生者とかだったりしないよな?


 信本の解読結果によると……「蘆名家その他奥州の理解ある賢明な諸大名と優れた先見性を持つイスパニアの認める正統な日の本唯一の王、伊達政宗大公を王としてここに『伊達王国』の建国を宣言する。賢明な諸大名は唯一の王、政宗の下へ馳せ参じるように。さもなくば日の本に要らぬ者と命運を共にすることとなるだろう」


 要は降伏勧告なのだが、流石にイスパニア(スペイン)の公認はハッタリだろうが旗の形や『王国』の宣言は実際に影響された結果だろう。あんまり長期戦になるとイスパニアまで相手に回さなきゃならなくなる。


 その前に負ける可能性の方が高いだろうけれども……いずれにせよやる事に変わりは無い。


「県軍に通達。全軍を連れて出陣、延沢城から奥羽山脈を越えて大崎の中新田(なかにいだ)城と名生(みょう)城まで進軍後待機せよ」


「はっ」


「小野寺軍団に通達。できるだけ早く岩崎まで進軍、岩崎周辺に居る筈の和賀家を味方に付けて要塞を構築せよ」


「承知!」


 帰還する前に予め城に呼び寄せておいた橋本家の各軍団の伝令に内容を伝えていると戦いの匂いを嗅ぎつけたのか真人間と戦闘狂の境界線上を行く同級生が現れる。


「航太殿!何やら怪しげな呪詛でも書き連ねたかのような文と共に伊達の家紋の入った大きな布が届いたのだが伊達との戦を前に抜け駆けとは感心できないな」


「そんな体育会系のお前に朗報だ夜叉九郎」


 体育会系という所に突っ込みを受けつつ朗報について我らが夜叉九郎こと盛安に今回の対伊達戦の作戦を伝える。戦国時代にあるまじき計画を……


「流石は航太殿だ。やはり『雷神』様の策謀は一味違うな、それで俺のすべき事は何だ?」


「やってもらいたい事は単純……だが簡単じゃないかもな、安東と南部がこの戦いに介入出来なくするために北側を押さえて欲しい。特に雫石だ」


「雫石か!まさかこんな所で聞くとは運命というのは面白いものだな、任せておけ航太殿!」


 と盛安が昂るのもその筈、戦略的にはもう少し先の盛岡を押さえた方が確実なんだが碌に防御陣地が無いのと雫石の方が戸沢にゆかりのある土地だから戸沢家にも協力して貰いやすいと考えたから、敢えて雫石を取ってもらうことにした。


 雫石はこのころは南部家の占領下の筈だが、南部晴政に敗れてから半ば従属する形になっていた斯波家が晴政死後に奪い返しに来る頃でもあるため、実際に行って見ないことにはわからない。


 でもただでさえ最初に滅亡する国持ち大名というイメージの強い斯波家、挙句当主は遊んでばかりの絵に描いたようなバカ殿と名高い斯波(しば)詮直(あきなお)なので正直味方になろうとなるまいとどっちでも良い。敵になった時に南部軍を迎え入れさえしなければ脅威にもならないだろう。


 しかし恐らくは俺の帰還に合わせて会いに来た盛安のお陰で唯一運に頼らざるを得なかった北の守りが解決、残るは将来の為の布石のみになったが、これは前々から考えてある。


「甚兵衛、この手紙を加賀屋の与助さんに届けてもらうように頼んどいて欲しい。割と、重要めなやつだ」


「はいよっと、どちらにお送りしやすか?」


「柏崎港で渡せば大丈夫だろう。越後国のだ」

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