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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅱ.鮭の力は世界を変える!? 羽州一の空き巣泥棒
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#65 戦場、回りました。

「やはりしてやられてしまったか……」


 長谷堂城包囲軍の本陣。泉出、成沢、谷柏の三城失陥の報を聞いた鬼庭(おににわ)綱元(つなもと)は難しい顔をしていた。


 このままでは谷柏館を奪った橋本隊に好き放題攻撃されてしまう。それどころか伊達軍の前線基地となっていた上山(かみのやま)城への道が塞がれ、長引けば補給難、下手をすると無事に米沢へとたどり着くことも出来なくなるかも知れない。


 しかし泉出と成沢を僅かな時間で同時に落城させた橋本軍は鬼姫と雷神が居るとはいえ、少なく見積もっても1000人はいるだろう。それだけの軍勢と戦える戦力を持っているのは長谷堂を囲む我等しか他にない。


 一応、飯田館を落とした成実殿も戦えなくは無いだろうが、あの戦闘狂は当てにしてはならん。戦はお上手なれど戦の見立ては少々……


 しかし我等がこの場より動いたとなれば、長谷堂に籠る志村光安めの手勢まで解き放ってしまう事になる。

 ただでさえ橋本隊が居るのにそこへ戦上手の光安を放ってしまえば鬼に金棒である。


「だが我等が動けば光安めまで殿の陣へ襲いかかろう。悔しいが、敵を利する訳にはいかぬと小次郎殿にお伝え下され」


 小次郎の早馬へ折り返しの言伝を頼んだ直後に銃声が鳴り響く。


「光安め!!またも直ぐそこまで来ていると言うのか!!槍を持て!!」




「申し訳ありません。飯田播磨守を取り逃がしてしまいました……面目御座いません」


 飯田館から逃れた最上の落ち武者を捕らえるべく捜索していた成実の副将、萱場(かやば)元時(もととき)が飯田館主、飯田信兼の捕縛に失敗した事を気重そうに伝える。


「あぁ?いいんだよとっ捕まえられりゃ良いっつーだけだからな。そんな事より藤次郎のやつが城に対して奇襲したって話だ!すぐに行くぞ!」


「と、殿。小次郎殿が報せし橋本の手勢は放って置くのは如何なものかと……このままでは小次郎殿の言う通り退路を塞がれかねません」


 戦功第一主義の成実に退路確保の必要性を訴える元時。成実の度重なる加増提案を断り続ける謙虚な元時を尊重してか成実は、


「功を挙げねば恩賞が渡せないぞ元時?それでも残るなら止めねぇが……」


「この戦い、虫の知らせと言うべきなのか……正直嫌な予感がするのです。それがしのような雑兵はいざと言う時の為に備えるのが身の丈に合っていようものです」


「雑兵じゃねーと俺は思うけどな。わかった。五百人も居れば守れるか?」


「十分過ぎるほどです。むしろ殿の手勢は……?」


 成実隊の三割にあたる兵を与えるという成実の心配をする元時。だが成実は……


「どうせ俺は騎馬隊を率いて走り回るだけだからな!足軽なんて後を追っかけてくるだけだから居なくても同じようなもんだからな!」


 と笑い飛ばすのであった。




「まさか谷柏館も空き城化してるとはな……」


 世の中世知辛い。やっぱ不景気だと城の維持もままならないって事か……?

 などと現実逃避を一瞬していた俺だったがあれだな、読まれたなこれ。


「どうしますか?航太さん。取り逃がした後方の部隊が政宗本隊や成実隊をこっちに呼び寄せて攻めてきてしまいますよ?」


 信本が考えられる最悪のシナリオを提示してくる。そのパターンは、考えたくない。泉出か成沢が空っぽだと気づかれた瞬間詰む。

 と考え事をしている航太に戦国時代の思考回路を持つ守棟が信本の意見を否定する。


「いや、その手はないでしょう。相手は智に長け、武に劣る将でない限り、そのような考えは臆病者と罵られるでしょうし、何より突進してから戦略を考える成実と奇手を打ってから理由を考える政宗。私はそれよりも政宗が城へ奇襲をかけていないかが心配です」


 その守棟の想定はど真ん中を射抜いているのだが、まだ橋本軍の面々はそれを知らない。


 完全に考え込んでしまっている航太に未だ『何故か知行が多い若手』としてしか知られていない最上の将が案を出す。


「私は今こそ伊達軍殲滅の好機と考えます。尾張殿(守棟)が御仰せの通り、血の気の多い伊達の若武者は短期決着を好み、『山形さえ落とせれば』と総攻撃を仕掛ける筈です。ならば私達は山形のお味方と城を取り囲む隊を挟み撃ち、これを討ち破るべきと存じ上げますが……」


 話に出た守棟が「誰?」という顔をすると若武者が慌てて付け足す。


「私は義光公にお仕えしていた楯岡(たておか)満茂(みつしげ)と申す者です。此度は尾張殿の副将として参陣して居たのですが……」


「おい楯岡満茂って最上四天王の一人じゃないか!誰だこんな所に放って置いた奴!」


 最上四天王は最上家の中で結構活躍があった武将をまとめて四天王とか呼んでいるらしい。


 ちなみにこれでまだ遭遇していない四天王は一人、里見民部だけになった。そもそもこの時期に生まれてない可能性も十分にあり得るから四天王全員が揃うかはわからないが。

 四天王なのに五人どころか六人いることについては気にしたら負けだ。龍造寺四天王だって五人いるから今更だろう。


 そんな四天王五人目の案は一見無謀な中央突破に思えたが……確かにそれが一番勝率が高そうだ。


 もともとは八柏館で後方隊を壊滅させて長谷堂城の救援に向かうつもりだったが後方隊が背水の陣宜しく山形に決死の攻撃をして来たら流石に持たないかもしれない。


「でも満茂の案が一番勝ち目があるな。長谷堂城の志村さんには悪いが、もうちょい長谷堂城の包囲軍を引き付けておいてもらおう。ちょっと予定とは違うが『大回転作戦』、最終段階だ!行くぞ!」


 これで政宗がものの見事に待ち構えてた時は……レーザーと悠香チートの出番だな。どのみちそうなりそうだけども……

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