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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅱ.鮭の力は世界を変える!? 羽州一の空き巣泥棒
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#63 一回戦、突破しました。

「泉出城の早馬はどうしたのですか?成沢城共々一刻置きにしっかり連絡するように念を押しておいた筈なのですが……」


「一兵卒の某には何とも……ですが妙ではありますね……」


 最上家から奪った谷柏館に置かれた片倉隊の本陣の見張りの兵の片方に尋ねる小十郎。しかし思うような情報を持つ者はやはりいない。


 そこへ黒い母衣を身に着けた小十郎の早馬(伝令)が一騎、ひどく慌てた様子で駆けてくる。


 早馬の腕に矢が刺さり、母衣の淵にもところどころ赤い斑点が付いているのが見えてくるとともに本陣の兵達がただ事ではない事を悟り騒然とし始める。


「何があった!?」


「早く手当の用意を!」


 手空きの足軽兵が駆け回る中、小十郎も一刻でも早く情報を確認すべく谷柏館の冠木門(かぶきもん)へと向かう。


「これは一体何があったのですか!?」


 小十郎がやや焦りを感じながら問いただす。もしかすると今回、唯一恐れていた事が発生してしまったかも知れない。それも最悪の形で到来したかも知れない……そう考えるだけで背筋を悪寒が走る。


「成沢城陥落!旗印を掲げない、橋本の兵に御座います!!さらに泉出城も長くは持たないものと……うぐっッ!」


 ……よもやこれ程までに的確、かつ迅速に此方の弱みを押さえ得るのは敵にはあの者しか居ない。確信を持って言える。


「ご苦労、必ずや傷を癒し復帰せよ」


 言い終わると同時に控えていた他の足軽たちの治療を受ける伝令、その様子を傍目で確認した後、その場で部隊に告げる。


「もはや敵は成沢と泉出を奪い返した!これ程素早く城を落としうるのはかの悪名高い『雷神』のみ。しかし今の我等は『雷神』と戦えども徒に兵を失うばかりであるのは火を見るより明らかである!故に我等はこれより殿の下へ向かう!四半刻で仕度をせよ!」


「「「ははっ!!」」」


「それと成実殿の隊と左衛門殿(綱元)の隊へ成沢と泉出、それに谷柏を失ったと伝えてください。本陣まで内密にお願いします」


「承知!」


 自身の隊からも伝令を放つと本陣へと戻っていく小十郎。その内では既にこの死地と化した山形から如何にして兵を損ぜずに夏刈、米沢へと撤退するかを考えていた……。




「成沢城も当たりですか!あの政宗殿はかなりの手勢を攻撃に回していたのですね……むしろ噂通りと言うべきでしょうか……」


 政宗の噂……ねぇ……。まだ俺と同じ位の歳なのに相当やらかしてるのかあいつ。


「まぁそのお陰で両方の城を落とせたんだから感謝しないとだな。って折角苦労して制圧した城だが残念ながら二か所とも成実か政宗に城毎轢き潰される未来が待っている以上すぐにでもここから退避しなきゃならない。それも事前の作戦通りだけどな」


「承知済みです。次は谷柏館ですが、成沢城の信本殿の隊とはやはり須川を渡る所で落ち合うとのことでよろしいのですか?」


 守棟が僅かに心配そうに尋ねる。確かにぶっつけ本番の通常なら地図の無い場所での合流作戦というのは不安要素でしかない。


 しかし残念、俺には未来のこの辺りの地図とゲームでのこの辺りの地図の両方がある。片や山の一部が吹っ飛んだり要塞が無かったりして片や細かい所は妄想補完の出鱈目仕様ではあるものの、その両方を合わせればだいたい正確な地図を再現できるものだ。


 そこを流れている川が須川という名前だという事とかは守棟に教えてもらうまで知らなかったが……俺の時代の軍用地図、無名の川って間違ってんじゃねーか。


「俺達には地図があるしそもそもこんな人数で川で水遊びなんてしてたら気づけるだろ。最低限の装備だけ持ってすぐにでも出るぞ!」


「承知しました。成沢にも報せましょうか?」


「いや、止めといてくれ。あれだけ入念に作戦会議をしたんだ。無駄に伝令飛ばして政宗本隊か成実隊にでも見つかったら終わりだからな」


「承知しました。ではすぐにでも行きましょう」


 守棟の心配事は残っているようだが、こればっかりは信じてもらうしかない。というかむしろよく今まで橋本家の武将達は俺の事を無条件に信頼してくれたものだと思い知らされた。


「作戦の通りに行動する事も慎重さの一つだ、という事にしておいてくれ守棟。そもそも勝ち目が薄いこの戦いの勝率を何とか五分にまで持っていけそうな所だから足踏みして負けに持っていく事はないだろ」


 意味ありげに少し視点を変えて守棟に言うと「それもそうですね」とひとまず認めてくれたようだ。


 ありげって事は特に深い事考えてないって事なんだけどな。そんな事より時間が勿体ない。


「橋本軍!旗はそのままに出撃だ!このまま川を越えるぞ!」


 応の掛け声。ゲームでも思っていたがこの大将の鶴の一声感が何とも言えない気分になる。良いようなでも申し訳ないと言うべきような……


 でも今は都合の良いように捉えておこう。下手に負のスパイラルに嵌まりたくないしな。

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