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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅰ.空き城にはご注意を! 南羽後に湧いた新大名
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#06 空き城、戦いました。

「者ども!かかれ!」

 小清水蔵人の号令で小野寺方の足軽が俺たちの居る北郭目がけて攻めよせ始める。

「航太夫よ!あの小清水なんたらとかいう奴、撃ち殺しちまっちゃ駄目なんか!?」

 確かにあれを討ち取れば橋本航太ここに有りと存在を誇示出来るだろうけども……

「撃つな、小清水を討ち取れば本格的に小野寺氏と戦わなくちゃいけなくなる」

「でも航太夫サマよ、どのみちあいつらは俺たちが下るまで戦い続けるんじゃないのか?」

「だとしても簡単には勝てない強者(つわもの)だと小清水から秀道に伝えてもらえたら、すぐには攻めてこなくなるだろうし、来るとしても大軍を送る必要が出てくる。そうなったら戸沢や最上と連携して小野寺と戦えば勝てるから問題なしだ」

 史実では小野寺氏は何度も戸沢氏と対立しているし、最上義光も出羽侵攻のために小野寺氏と戦っている。

「そんな事より来るぞ!弓撃ち方用意!」

 村人たちが不慣れながらも弓を構える。俺も城柵の近くに行ってフル充電したレーザー小銃を構える。

 全員が準備をし終えたのを確認して、

「撃て!」

 全員が弓を放ち、次の矢をつがえる。俺もレーザー小銃の引き金を引く。

 倒れた敵兵は30近くの矢と一発のレーザーにしては少なかったものの、火縄銃すら見たことがある者が少ない小野寺の兵には十分効果があった。

「何だあの得物は!」

「笠があっちゅまに溶けて……」

 ひるんだ小野寺の足軽が立ち竦んだ所に再び矢とレーザー射を放つ。

 まだ先駆けの兵は最初の半数ほどは残っており残り十数メートルにまで近づかれていたが、あれを使う。

「兵三さん!」

「おうよ!やるぞ!!」

 応!と聞こえてきてあらかじめ城柵ぎりぎりに石が落下するような場所に用意された木製の投石器の縄を切る。

「ぐわぁっ!!」

「大岩が天から……!避けろっ!!」

 小野寺の先駆けにはほとんど当たらなかったもののその後続を巻き込みながら岩が転がり落ちていく。

 それでもまだ残った屈強な兵にはこれをプレゼント。

「丸太!行け!」

 こちらもあらかじめ用意した丸太(元、材木向け)を転がして駆け上がってきていた兵を一網打尽にする。これだけでも相当削れた、筈なのだが……

「小野寺の奴等……まだ来やがります!」

「弓、投石器放て!丸太用意!」

 指示をとばすとすぐに岩が降ってくる。

 この場所に落とすための計算が物凄く大変だった。戦略ゲームじゃ味方撃ちは考慮しなくていい場合もあるけれども現実はそうはいかない。FPSのようにすぐに敵味方が分かる状況ですらないから細心の注意が必要になる。

 その分、こちらの決め手となる攻撃の正確さは敵も想定外だったようだ。

「第三射用意!」

「放て!」

 相変わらず弓はへたくその集団だがもともと牽制狙いだから大した問題にはならない、しかしよくもまぁここまで突撃一筋でくるな……

「騎馬が来やがった!どうする航太夫!?」

「丸太だな、残った奴は俺が撃つ!」

 騎馬まで突っ込んでくると流石に危ない。如何せん早い上に兵の方は倒し損ねる危険性もある。

 けれども見えただけだと全部で10人もいない。レーザーの出番だ。

「そこだ!」

「ぐっッ!!」

 騎兵の騎手に命中。今日ほどFPSが役に立つ日が来るとは……と思った日は他にない。というかそんなもの役に立つ状況にならない方が望ましいのが普通だろ。

 丸太が転がっていき馬を転ばせる。しかし、一人だけうまい具合に馬から飛び降り、そのまま向かってくる。その距離三メートル。

「やぁっッ!」

 槍が突き出されるが、届かない。

 ドサッっとレーザーの至近距離での直撃を受け、小野寺の兵はそのまま本来柵のあるべき場所に倒れた。

 柵がないのは丸太を転がすためだったが……

「流石に今ので終わりか……」

「小野寺の旗印が城から遠ざかります!これは守り切ったのでしょうか……?」

 おい馬鹿そんなことを言うとフラグが立つだろ!

「警戒解くな!弓、投石器、丸太を用意!勝って兜の緒を締めよだ!」

 応!と聞こえた事を確認し、小野寺の旗印が見えなくなるのを見届る。

「いや、航太夫よ、これはやったんじゃねぇのか?」

「まだ奇襲をかけてくる可能性はある。油断するな」


 しかし、その後一時間程しても動きはなかった。もともと一揆扱いだったものに小清水蔵人というどこにでも居そうなバカ武者を鎮圧に向かわせたのだからそこまでの策を弄することもしてこないか……

『やったか!?』フラグだけは全力でつぶしに行った甲斐もあってしっかりと初戦勝利を掴めたようで何よりだった。

 しかし村人30人程度でも意外と何とでもなる物なんだな。結局小清水がどれほどの兵を率いてきたのか、正確な数はわからず終いだったが、感覚では100人程の内の半分ぐらいが攻めあがって来た印象だった。

 勝ったという事はプチお祭りムードになる訳であちらこちらで「誰々の弓は上手かった」だとか「岩が空を跳ぶとは思わなかった」だとかと各々の感想を言い合って騒いでいる。

 フラグの心配が未だに抜けないけども、流石にここまで頑張ってもらって何も報酬なしというのは逆の立場だったら俺なら納得いかない。ので代金は俺の出世払いで宴会、ほどではないが小さめの祝賀会のようなものをやることにした。

 出世払い、というと普通は返って来ないお金のようにも思えるが、大名ならむしろ現実的な気がする。あくまで俺個人の感想だが。

 いやでも戦の常として勝って浮かれている方が奇襲されて負けるんだよな……と一抹の不安を抱きながらも祝賀会を眺める俺だった。

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