#07 武将、募集しました。
さぁ困った!どうする俺!?
小野寺氏の一揆鎮圧部隊を追い払ったのは良かったものの大名を名乗った今、領内経営にも乗り出さなきゃならない。別に食べ物に困らなければ俺がこの先生きのこるだけなら問題ないんだが、このご時世、そうは問屋が卸さない。すぐにではないものの小野寺氏がまた攻め込んでくる事もあるかもしれない上に、他の大名家も虎視眈々と勢力拡大の機会を狙っているのだ。
となると少なくとも小野寺氏とは必然的に戦って勝たなければならなくなる。そのためにゲームの順序通り、まずは国力を付けなければならない。
しかしここで問題が発生する。何をすればいいかは歴史人物……というべきか少し迷うが……を参考にすればいいのだが、そのための人員が俺以外に全くいない。橋本家は現在、いわゆる『人材不足』に陥っているのだ。
その後には、普請の進め方についてノウハウがある人物が居ない、という問題も発生しないようにしなければならないが、こちらは現代流で進めると称する我流を使おうと思っているので何とかなると思う。
ともかく、人を増やす必要があるのだ。
「兄さんの話を広めて欲しいだ?」
「必要なら銭も払う、だから頼めないか?」
後日、俺は大曲に残っていた河島屋の商人、甚兵衛に会いに行った。
「いやいや、別に話程度で銭を巻き上げるような程、あっしも守銭奴じゃあないさね。どんな話を広めりゃいいんだ?」
要は広告をお願いしようとしたのだが価値観が違うとはいえ、つまるところ現代の広告代理店は守銭奴って事なのか……
「そう言ってもらえると有難い、材木がまだ揃ってなくて売れてないから銭不足だからな、それで広めてもらいたいのは……」
俺の話を聞いて甚兵衛は大きく驚いた。その内容というのは……
「老若男女、百姓から賊まで身分は一切問わぬ!刀を持ち馬にのり武士を名乗らんとする者から己が村が為、政をせんとする者まで、我こそはと思う者、大沢の鷹の羽の橋本に集えぞ!」
甚兵衛も叶うなら自分も加えて貰いたいと言ったこの方法で人を集めよう、という算段だ。他の村から来た人も登用(採用)していきたい所もあるが、大沢の中でも聞いてみることにする。農民からいきなり支配階級の仲間入りができるというのは誰にでも魅力的に映る、と思うからな。
「俺たちを武将に取り立てるだぁ!?」
「毎度毎度航太夫には驚かされて来たが……俺たちにそんな事許されるんかぁ?」
「別に例がない話でもないぞ?まぁ俺の考えているものは『武将』とは少し違う……強いて言うなら『公務員』ってところかな、百姓を武将に取り立てるとか言うと周りの家からどんな目で見られるかわかったものじゃないし」
「公務員?なんじゃそりゃ」
「国が雇っている官人、に近いかな……もちろん失われつつある官職とはまるっきり違う仕事内容だけども」
「武士、俺たちもなれんか……やっぱ航太夫が主で良いじゃねぇか!」
賛同の声が聞こえる。俺も百姓の身分でそんな声がかかったら喜んで受けるだろうしな。
「既に他の村にも商人、甚兵衛を通じてその事は触れ回っている。ただそっちは面接をして信頼できそうな人物だけを登用しようと思ってるけれども、大沢の皆さんには助けられてばかりだし、なりたい人は誰でも可という事で行きたいと思う」
さらに驚きの声、その中から名乗り出る一家は、やはりというか村長の彦一さんの家だった。
「この老骨めでもお役に立てるなら、お仕え致しとうごぜぇます」
「もちろん、村に快く迎えてもらった恩もありますし、無理のない範囲でお願いします彦一さん」
「おやじ、武家なら姓を名乗るが……どうする?」
兵三さんが指摘する。
「むむむ、考えとらなかったのう、よもやこの期に及び武家の頭など思ってもみなかったものでのぅ」
彦一さんも困ってしまうが、
「『大沢』というのは如何でしょうじいさま、武家の中には各々の故郷の地の名を借りるものもおりますし、じいさまは仮にも大沢の村長にありますから……」
一郎丸が提案する。大沢氏、何処にでも居そうな、それでいて様になっている気がする。
「大沢……彦一……、儂は今日より『大沢彦一』と名乗ろう。大沢の長となり橋本航太夫に仕えようぞ!」
どことなく嬉しそうに宣言する彦一さん。それに続き大沢家の者が名乗りを上げていく。航太なんだけどな。
「この兵三、橋本を助くとして今日より『大沢兵三助本』と名乗る!よろしく頼みます、航太夫サマよ!」
兵三さん改め助本がここにいる一郎丸と恐らくその弟と思われる兄弟に名乗りを促す。
「一郎丸、改め『大沢信本』と名乗り、航太さんに仕えさせていただきます。よろしくお願いします」
「若郎丸、『大沢武本』」を名乗る!航太さん、お初と思うがよろしくお願いする!」
若郎丸は助本の次男で小野寺の鎮圧部隊を追い払ったときに話題に挙げられていた人物の一人、だったと思う。正直普段、家に居なかったものでよく覚えていない。
それ以下は流石に武将として名乗るには早いだろうとして名乗らなかったが、六助は一郎丸こと信本を真似しようと「大沢の!」と言っていた。
まだまだ名乗りは続いたが、そのまま日が暮れるまで続いたが、流石に長く続いたので割愛とする。




