表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅰ.空き城にはご注意を! 南羽後に湧いた新大名
50/91

#50 空き城大名、自称しました。

 夜明けまで一刻。草井崎城では予想以上に少ない敵への被害と味方の損害により再び軍議というほどではないが作戦会議が行われていた。


「数え挙げた所、敵への被害は2000ほど……お味方の被害は……700人……」


「残る兵は……700人、対し最上は5000、更に鮭延も天童も取り逃がすとはな……」


「橋本殿の援軍はまだなのか!今来なければ手遅れぞ!」


「……輝道殿、城よりお逃げする用意を。これは守れぬやもしれませぬ……面目無い限りで御座います……」


 よもや会議は阿鼻叫喚の絶望的状況の把握会になっていた。


 現状の小野寺家は、有屋峠から草井崎城までの間に築かれた『役内川城砦群』をことごとく突破され、物見砦(しょぼい城)のうち北から浅萩、影平、矢倉、しなの、男鹿崎の各館は最上軍へ降伏。小野寺方で抵抗している城は八口内、椛山、草井崎の三つを残すのみとなり、挙句かき集めた小野寺橋本連合軍は4200人から八口内に500人、草井崎に700人、椛山はわからないという状況。


 最上家はそれぞれ八口内城を延沢満延軍1500人、草井崎城を最上義光軍5000人が囲んでいる。椛山館は一切の情報が無い。


 八口内はどうやら包囲戦になっているようなのでひとまずは兵糧切れまでは持つが、本題は草井崎城の方だ。そして今まさに絶望的状況を加速させる報告が入った。


「最上軍が攻め上がって来ます!殿!ご指示を!」

 中途半端な追撃によって兵力が尽きかけている事が最上軍に露呈した草井崎城に最上軍が強攻を仕掛ける。包囲して時間をかけるのは無駄だと判断したのだろう。


「一歩たりとも近づけるでないぞ!橋本殿のように何でも使い対抗するのだ!」


「ははっ!!」


 敵から忌々しく光散らす矢が飛んで来て館の一部が燃え始める。火矢だ。

「館に火を付けられました!」


「屋根が燃えただけなら問題ない!むしろ燃える木材を敵へ投げつけろ!」

 成武が反応すると少し遅れて兵が燃える館の破片を投げ始める。


「各将は持ち場に付け!儂は館が焼け落ちぬ限りここに居る!有事の事があれば儂へも報せよ!」


「「「承知!」」」


「殿!大手門に槌を打ち付けられております!」


「少しだけ門を開き槌を持った兵だけを城の中へ入れ討つのだ!『空き城の計』と同じ手際なら門も傷めずに済むはずだろう!」


「っ!承知!」

 兵が走って行き少しだけ門を開け、再び閉め、突入した敵兵との切合いが目の前で始まる。


「これも航太殿の入れ知恵か?成武殿」


「殿の奇抜な策を脇で見ている内にいつの間にやら私も妙な戦い方をするようになっていただけに御座います」




「最後の櫓が焼き落とされました!もはやこれまでです!」


「まだだ……必ずや航太殿が来て下さる……!」


「殿、そうそう都合よくは行かぬようで御座います。ここはお逃げ下され、お守りできる保障が僅かにもありませぬ……」


「城の裏手からも牛の無い鋼の牛車が突っ込んでまいります!矢を放ってもまるで効きませぬ!」

 牛の無い……鋼の牛車?


 城内の士気が一段と下がる。もはや全方向に敵が居るという事か……


「私が見よう!どこだ!?」

 成武が慌てて向かう。矢が効かない、牽引する馬や牛も無いなら何を狙うべきなのか判断するためだ。


 だったのだが……



「あれは最上の旗印ではない!丸に違い鷹の羽紋!我等が橋本の旗印ですぞ!!!」





「何だ……あれは……」

 草井崎城の土塀を内側から破って登場した『援軍』に戦慄する義光と守棟。


「鋼の……牛車で御座いましょうか……?」

 何故だか虎に睨まれた兎の心持ちを味わう二人。驍将、義光はその原因にすぐに気が付く……


「守棟、鋼の盾を貫く矢など我が軍に在るか……?」

 鋼の盾の中央からこちらへ覗く火縄銃より大きな銃砲。撃ち手は盾の向こうに居る筈だが、盾を破らなければ攻撃が通らず、しかもその鋼の牛車には車を曳く牛が居ない……


「守棟、どうすれば勝てる?」


「負けですね、こちらが守り手なら何とかなったかも知れませんが」


 鋼の牛無し牛車が火を噴く。


「ぐはっッ!」

 鎧を着こんだ武将を一撃で葬り去る牛車(牛行方不明)。


「今だ!敵は前に出てくるぞ!」


 しかし出て来ない。銃が引っ込んで再び出てきたかと思うと第二射が放たれる。


「ぐっッ!!」

 再び断末魔が最上軍から放たれる。

 そして止めを刺すかのように次々と朝日を反射させながら鋼の戦牛車が続けて飛び出す。


「な、な……!なんだあの牛無しの戦牛車(いくさぎっしゃ)は!!」

 絞り出した声は義光自身も今までに聞いたことがないような驚きの声。


「白虎か玄武か……私達は勝てない何かに出くわしてしまったのでしょう……」

 冷静に冷静さを失う守棟。四神が現世に現れ、ましてや戦に関わるなど在り得ない事だとよく理解している守棟の動転する様も言葉に表れる。


「守棟、どうする……?」


「三十六計逃げるに如かず。逃げられればですが……」


 全車両の射撃を合図に城から駆け下りてくる『最強の兵器(えんぐん)』に航太はご満悦だった。



「一級戦場整備士冥利に尽きるってものだ!しかも自動ヒールチート付きで運動せずに羽州探題との劣勢の戦いで戦ってるよ!どうだヘルメス!宣言通りに運動せずに戦ってやってるぞぉぉぉ!!!」


「こうたー!装填したよー!」


「振り子の力って凄いんですね!まさか私の居た世界にできたばかりのものを戦国時代に再現するとは思いもよりませんでしたよ!」


「航太さん……何処から質問すればよろしいのかわかりませんが……何かが確実に間違っている事だけはわかります……」


「これが時代の差ってやつだ信本!俺もやってみるまで『戦車』を再現できるなんて思ってもみなかったけどな!」


 まさか自分を轢き殺したものが俺の主戦力になるなんて転生した時に考えたか!というか転生した時にはまさか城持ちになってしかも達成したい目的を持って領主になって戦うなんて……白状すると全然考えてなかった。

 せいぜい商人でもやって現代知識無双とかするものだと思ってました!だって安全かつ運動しなくていい頭脳労働中心だし。


 たったの戦車六両に蹂躙される最上軍。だが実際にはこの戦車たちはそんなにスペックが良いわけじゃない。

 車体は木製の板に履帯を内側から支えるために垂直に付けた角材のみ、そこに正面から見える所に鉄板を張っただけのシンプル構造。


 履帯は実は似たような構造の物が戦国時代にも存在したので作れるか一番不安だったが設計図さえ作ってしまえば簡単だった。竜骨車という灌漑用具、これの構造が実は戦車の履帯と共通する部分があるのでそんなに苦労せずに作れたという訳だ。


 そして戦闘を行う部分だが、若干傾斜させておかれた鉄板。これを木材で支え一部に穴を開けてそこから買い集めた士筒を突き出す。まさかたった六丁しか手に入らないとは思わなかったが、六両でも相当な威力があるようなので良しとしよう。


 で残念ながらこの時代の銃は世界中のどこを探しても前装式。つまり、撃つ側から火薬と弾を詰めないといけない。これを改造するには時間も経済力も足りなかったので撃ったらすぐに銃を引っ込められるような構造を付けた。

 構造は机の引き出しとほぼ同じでレールに取り付けられた銃を引っ張ると戻って来るというものだ。


 一つ問題なのは俺は悠香パワーでなんともないが、銃を引っ張るときにめちゃめちゃ重い。そりゃ18.3mmの曲がりなりにも主砲なんだからそりゃ重いのだが、戦いが終わったら改良を施そうというフラグを立てておく。


 そして最大の工夫が必要となったのがこの戦車たちの動力だ。なんとこの戦車たちは温室効果ガスの排出量を極限にまで抑えたエコ仕様で射撃時以外に一切の排出を行わない。

 というのも相沢パワーも過分に含まれているが、振り子とからくりを駆使した結果。なんとか動くようになったのだ。


 しかし振り子を一両に付き横幅ギリギリの六基を必要とし、その上最高速度は僅か時速6キロ。さらに急斜面を上ると壊れるかもしれないというおまけ付きだ。

 実際、草井崎城に登るときに壊れないかひやひやしていたがまともな神の加護を受けた相沢パワーが勝ったようだった。構造から考えたら間違えなく壊れてるけどな。


「熱っ!?そうか、そりゃ連続で撃ってたら銃身が冷めないよな。けどそんな事を言ってる場合じゃないな」

 ズドン


「雷神って凄い言われてたけどこっちの方が本職に近いんだよなー」


「そーなの?射撃上手いからFPSのプロか何かだと思ってたー」


「あ、あれ適当に撃ってるだけだからな。俺に戦場で馬を走らせながらしっかり狙うなんてできないから。たまたま命中確実って表示された奴を撃ってるだけだから」

 ズドン


「何それずるーい」


「お前のヒールスキルの方がチートだろ。俺なんて転生特典なーんも貰ってないんだからな!」


「未来技術があってスキルがあるのもバランスが良くない気もすると思うけどねー」

 ズドン


「殿!最上の兵が退いていきますぞ!我々の勝利です!」


「このまま一気に八口内まで解放する。輝道に食料の援助だけ頼んでおいてくれ」

 燃料を必要としない戦車、つまり操縦手だけが起きていれば移動し続けられるのもメリットの一つだからな。ハンドルなんて使わず、右側の振り子と左側の振り子の振れ幅の調整という異様に難しい作業をこなさなきゃならないが。


「しょ、承知しました!では」


「あと成武の橋本軍も連れてきて貰えると助かる。じゃ頼んだぞー」

 そう言って最上軍の後を追う戦車六両。と足軽約90人。よくよく考えるとこの足軽たちは歩きの速度とはいえここまで常に不眠不休で追いついてきているのか。流石に休ませよう。ブラック大名家にはなりたくないからな。


「ま、俺は休むけどな。悠香ー川沿いにまっすぐだぞー」


「さすがにわかってますぅーこれでも歴女やってたんだから!」

 口をとがらせる悠香。そういやそんな設定もあったな……


「さーて俺は休んでいる間にこれからの作戦でも考えてますか……最上攻め込む?」


「それには言い訳が必要だよねーなんもないのに攻めるんじゃとったあとが大変になるよー」

 なんだ、流石歴女。割とわかってんだな、普段からほんとこんな感じでいてくれよ……


「じゃ羽州探題でも自称するか。どうせ最上食べればそうなるだろうしこれなら安東とも最上とも戦うには十分だろ」


「……はい?」


 羽州探題、空き城大名、橋本航太。そしたらまずは羽州の敵を全部従えないとな……でもやっと統一への道が見えたかな?


 ……これ本当に俺が生きている間に終わるのか?定年寸前になって統一完了なんて嫌だぞ?どのみちまだまだ先は長そうっていうのは間違いなさそうだけどな……ま、悠香ぐらい気楽に行くぐらいの気持ちの方がいいか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ