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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅰ.空き城にはご注意を! 南羽後に湧いた新大名
46/91

#46 前哨戦、危なげでした。

「突っ込めェ!父上を侮辱した罪!贖わせてくれよう!」


「若殿が先陣を切られた!後に続け!これぞ好機だぞォ!」


 頭痛が痛い……

 ただでさえ若殿は馬鹿の一つ覚えのように突撃一筋だというのに何故殿は大井五郎殿(矢島満安)を若殿の補佐の片方に付けてしまわれたのか……


「裏切り者には死をォォ!大井五郎見参!死んで悔いるが良いィィ!」

 既にあれほど離れたというのに未だ大井殿の怒号が聞こえる。金砕棒を振り回し矢を弾きながら進むその姿はさながら鬼、いや鬼よりも鬼らしい。


「道家殿は続かずに残っていてよろしいのでしょうか?」


「何故わざわざあの猛者二人に合わせて戦力すらわからぬ敵城の的にならねばならぬのだ島之助。そもそも猛者の御二方は何故傷一つ付けられずに大手門に張り付けて居るのだ……」


 若殿、小野寺義道殿の率いる手勢は殿の指揮のもと八口内城に籠る八口内尾張守貞冬を1500の兵で囲み降伏を促す……手筈だったと記憶しているが……

 若殿と大井殿で盛り上がったかと思えば城の足元に着いたかと思えば我先にと城へ駆けて行かれてしまい……


「御味方さえなるようにしかならぬもの……か」

 早くも城から火の手が上がるのが見える。若殿と大井殿は張り付くや否や大手門を破ったのだろうか……落城が早ければ早いほど良い事には変わらぬが、何とも無鉄砲な……


「申し上げます!最上の先鋒が有屋峠を越えた模様!八柏殿を追ってこちらに向かって参ります!」

 八柏殿の足止(あしどめ)が予想より早く抜かれてしまったか……


「八口内城は(じき)に落ちよう。八柏殿の救援に向かい、足止役を引き継ぐ!皆の者、続け!」


「「「応!」」」




 僅かに時を遡り八柏道為の陣。

 八柏は草井崎での最後の軍議で攻め入る最上軍の先鋒の足止を提案し足止役を担う事となった。


「そろそろじゃ……皆、密かに得物を取れ……」


 狭い峠で待ち伏せる道為。切通しの上に射手を、今隠れている最上の先鋒である鮭延軍の進路上に足軽を伏せて待ち受ける。


「今じゃ!者ども、かかれぃ!」


 岩上の射手が最上の兵に次々矢の雨を降らしめる。慌てた鮭延軍の兵士たちが目の前に突如現れた敵兵に向かって走って行く。狭い切通しの後方からは味方が続いているので前にしか道がないからだ。そうして冷静さを失った軍勢は見ればわかる簡単な罠にも嵌まるようになる。


「うがっ!!」


「落とし穴だ!ぐっッ!」


 切通しの出口の真正面に仕掛けられた即席の落とし穴に引っかかり敵兵の勢いが殺がれた所に道為の足軽が襲い掛かる。単調に槍を突き出すだけでも弓を持つ兵が現れるまではひたすら倒され続ける鮭延軍。


 しかし鮭延軍もただやられるだけではなく……


「うっッ!」

 岩上の弓兵が狙い撃たれ切通しに落ちる。更に悪いことに多めに持たされた弓矢も撃ち尽くす兵が現れてきた。


「一人たりとも通すでないぞ!岩や土さえも投げつけ、少しでも歩みを遅らせよ!」


 僅か450人で足止を引き受ける道為の『土さえも投げよ』という老将とは思えない発想は迫り来る2000人の鮭延軍に対して善戦したが、鮭延軍の大将、秀綱が近づくにつれて徐々に劣勢が否めなくなる。最後には鮭延軍が討死した味方を盾にしてとうとう落とし穴を越え、乱戦を仕掛けてきた。


 切通しを通過されては多数の兵に囲まれてしまい、兵数が圧倒的に少ない八柏軍の壊滅は誰の目にも明らかであった。


「ここまでじゃな、皆の者!退けぃ!」


 最上侵攻軍との初戦となった『有屋峠の戦い』は八柏軍に300、鮭延軍500の損害を出し、史実とは大きく異なり小野寺軍の僅かな時間の足止めに成功したという戦いになった……




「四つ目結の旗印!先鋒、鮭延秀綱の手勢に御座います!!」


「弓隊!秀綱めの軍を狙い撃て!」


 まだ矢が届くか分からぬが、少しでも気をこちらに引く事が出来れば八柏殿が戦場(いくさば)を離れる事もできよう。その上、僅かでも敵を減らせば後の戦いの運びの助けにもなろう。


「敵軍、我が軍勢へ向かって参ります!」


「槍隊構え!!若殿が城を落とすまで守り抜くのだ!ここが踏ん張りどころぞ!!」


 鮭延軍の先駆けの兵が到達するとすぐに乱戦になる。その中で道家は必死にこの軍の大将の姿を探していた。討ち取れるかはわからないが上手くやれば一息に先鋒を退ける事が出来るからだ。


「鮭延秀綱!怖気づき逃げ出したか!逃げ隠れせず堂々出て来い!」




「道家殿!これ以上は持ちこたえられませぬ!八口内城へ向かいましょう!」


「だが未だ八口内に追洲流(おおすながし)の旗が立たぬという事は未だ若殿が戦って居られる証拠、若殿を差し置き退くなど!」


「申し上げます!我が方、八口内貞冬を討ち、城は我が方に降りました!小野寺の勝利です!!」

 ほぼ同時に追洲流(おおすながし)の旗が城に翻る。旗印ではなく、橋本の若大名が考案した大きな緑地の追洲流(おおすながし)の旗が……


「全軍、八口内城へ退け!島之助!殿(しんがり)を頼む!」


「承知!まだ戦える奴は俺に続け!道家殿をお守りするぞ!」


 八口内城の戦いは小野寺義道と小野寺に従属する矢島満安の猛攻と八柏道為と黒沢道家の決死の足止めで小野寺方が八口内城の制圧に成功した。

 小野寺方は八口内攻めの兵の三分の一にあたる500人の被害で最上軍の先鋒、鮭延秀綱の軍に倍の1000人の被害を与え、鮭延軍に後続の部隊の待機を強いることで更なる時間を稼ぐ事に成功したのだった。

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