#44 窮鼠、慌てました。
「こーたー。盛安から手紙だよーなんかちょっとやばそうだよー」
「ちょっと所ではありませぬぞ鬼姫様!安東愛季が三千騎を率いて湊へ入り明日にも角館へ発つとの忍びより報せに御座います!!つきましては……」
盛安の伝令が悠香の後から飛び込んで来たかと思えばその直後、自分の伝令を突き飛ばして盛安が飛び込んでくる。
「航太殿!安東愛季が攻めてくるとの事だが航太殿横槍をお頼み致したく……!」
「航太殿!最上がとうとう攻め寄せるようだ!ついては助けを……」
そこに輝道が加わり……
「殿!大宝寺が我が仁賀保県に攻め入る仕度をしていると加賀屋から連絡が……」
「まてまて待て!同時に言うな!一人ずつ喋ってくれ、俺は聖徳太子じゃねぇからな!」
仁賀保県知事の重挙まで入って来てもう何が何だかわからない。
「取り敢えず来た順に、喋ってくれ。まずは夜叉さんから」
また盛安の呼び方が変わる。なんか『夜叉九郎』って呼ぶの長いからな……
「安東愛季が角館を落とすべく四千騎を率いて湊に入ったと報せが入った。念のため航太殿にも援軍を送ってほしいという事だ」
「大方殿の申し上げた通りで御座いますが、私は前田の殿様から三千騎と聞かされております。要件は殿と同じですが……」
角館の盛安の情報と大曲での情報に少し食い違いがあるものの愛ちゃんが本腰入れて戸沢、仙北攻略に乗り出したという事か……
「次に輝道殿は?」
「最上義光が八楯を下し一万の大軍で丁岳の南から山中に入って行っているとの事、丁岳の山中はかつて小野寺の臣であった鮭延秀綱が先鋒となり進んで居る。明日にも有屋峠を越えるだろう」
有屋峠!でも有屋峠の戦いが発生するには早すぎるし何より小野寺はどこかの橋本家が包囲殲滅したせいで兵力は集められても3000人。矢島氏を含めても4000人弱だと言う。橋本が加わっても倍以上の差がある。
「なんとなく嫌な予感がしてきたが……重挙は?」
「も、申し上げにくいのですが……加賀屋から大宝寺も兵糧やら武器やらを買い集めたがっていると……」
つまりは戦支度か……確かに今まで手の及んでいた由利が突然奪われたからな……
「なるほど、つまり三家同時に相手取らなきゃならない……と?」
……
無理げー。
安東と最上は下手すると連携して攻撃してそうだし、そこに大宝寺がついて来るから仁賀保県軍700人も動かせない。そして問題の大沢、大森、沼館の兵は旧十二頭の諸勢力を総動員しても1300人。小野寺が4000人、戸沢も4000人動員できるのに何なのだろうこの差は……
で今、俺が取れる選択肢は……1、盛安の救援をする。2、輝道の救援をする。3、諦めて突っ込む。
「夜叉九郎、愛ちゃんの撃退、任せていいか?」
「愛……?愛季か。わかった、やるだけやってみよう」
盛安が愛季に負けなければ橋本軍を最上戦に注力させられる。それでも倍近い差はあるのだが……
「輝道、全力で支援するが……できるだけ時間を稼ぎながら、何とか八口内城を確保しておいて欲しい。そこが確保できると最上軍を誘導しやすくなる。それとできるだけ八口内から草井崎までの間の山の斜面の木を切っておいてくれ」
八口内から草井崎というのは恐らく想定される最上軍の侵攻ルートで、有屋峠の次に通るルートだ。鮭延秀綱が最上に降った時に一緒に最上に寝返った城で確実にここで最上軍は補給をするはずだ。そのため、最上軍を何とか足止めしつつ八口内城を制圧したい所だ。
それでも八口内城は守り切れないだろうけどな。一万人に山の小城が囲まれちゃひとたまりもないがそれでも時間稼ぎが重要だ。戦場の工作もさることながら、それ以上に『新戦力』の用意ができる可能性が高まる。
「悠香、舞が城に居たよな?呼んできてくれ」
「りょーかいっ」
「伝令!大森の工場に居る工場長の相沢にこれを届けてくれ。それと届いた事を確認するため、相沢から別の伝令を送ってもらって来い」
「承知いたしました!」
「重挙は念のため防衛線の準備を、長期間籠城するつもりでも用意しておけ。望ましくはないけどな」
「承りました。では直ちに……」
「輝道は八口内から草井崎の事を頼む。部隊は成武辺りに任せるが、俺もすぐに後を追う」
「了解した。援軍、待っておるぞ」
「殿、お呼びでしょうか?」
戸沢、小野寺、橋本、仁賀保の各領主が解散した後、舞が来る。悠香はどっかに落としてきたみたいだ。
「甚兵衛と成武と信本に通達。甚兵衛には『銃砲』を調達するようにと、成武には大沢軍と仁賀保県軍を除く旧由利十二頭の1200人を率いて西馬音内城から草井崎城へ向かうように、陣立ては任せると、信本には成武に軍を任せたことを伝えてくれ。それと舞は終わったら大森の工場に来てくれ」
「わかりました。では行ってきますね」
「頼むぞ」
……相沢さん、休む暇はなさそうですよ……




