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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅰ.空き城にはご注意を! 南羽後に湧いた新大名
22/91

#22 SOS、届きました。

「うーん?その『デンチ』というのは未だわかりかねますが『電気』の方はわかったようなわからないような……」

大沢への帰り道の途中、俺は信本に試しに電池の構造について、高校でやる程度の内容だが説明してみた。


「まぁ電気について戦国時代に理解できるだけでも尋常じゃないんだけどな」

その結果、電気が雷と本質的には同じでこれを利用して電球など明かりを放つものを作れる……という所まではわかったらしい。

物質を酸化させるのは電子が動くのと同じだ……とかいう所は実演しないと流石に納得はしてくれないだろうが……


本気で世界は木火土金水(もっかどごんすい)でできていると信じられている所もあるこの戦国日本でそこまでわかれば上出来だろう。


「殿!一大事にござりまする!」

城に入るや否や吾六が城へ駆け込んでくる。


「吾六、何があった?」

「赤尾津家保と羽川義稙めの軍が大曲へ向けて出陣したとの事!ついては航太殿にもお助け頂きたいと夜叉九郎様、前田利信様の連名と大曲城の留守を預かる前田利宗様からそれぞれに文が来ておりまする!」


 ……教育とか以前にやらなきゃならない事はまだまだ山のようにあるみたいだ。


 何が日本統一じゃぁぁぁ!!!




転生してまだ二か月ほどしか経っていないというのに何故か大忙しの俺。

大名というのは危険手当は勿論、安定した報酬は支払われなければ、そもそも商品は絶対的に不足するわ第三次産業はほとんどないわで事実上お金があっても個人的には使えない。

結果、ボランティア精神溢れる無報酬労働という性質がとても色濃く出ている。そりゃ封建制度の支配者階級は沢山納税して欲しい訳で取り立てる量も現代からは考えられない事になってる、というわけか。


そして俺はそんなブラック企業が可愛く見える職場に今日も出勤する。

今日の顧客は徒歩で片道六時間ほど行った所に住んでいるようでその内容は「暴力団に囲まれた自宅の警備(包囲軍からの解放)」。もちろん今回も危険手当は一切なし。交通費以前に交通機関すらない状態だ。


「ブラック傭兵でもここまで酷くはないだろうに……」

翌日の日が昇る前に俺は橋本軍300人を率いて大曲城救援のために出陣。日の出頃には小野寺方の大森城にほど近い川沿いを進んでいたのだが……


「どうしたのでしょうか……大森城に全く動きがありません……」


信本が訝しげに呟く。俺もこれは良い方に予想外だ。

今回は沼館城夜合戦とは異なり存在を隠していない。移動速度を少しでも速くするためなのだが……大森城の足元を通過するというのに応戦はおろか城さえ戦闘態勢になっている様子すら無い。


「罠……だろうか?この先には伏兵がひしめいておる……と」

成武が可能性を挙げるが……


「無いな。あっしが会った時の大森殿は夜叉九郎殿よりもお若く邪道を嫌う方だった。八柏あたりが居なけりゃそんな手は思いつかねぇと思うな」

意外にも断言したのは元商人の甚兵衛だった。

甚兵衛は盛安を治部と呼んでたと思うのだが『夜叉』の方が有名になったせいかその呼び方が伝染している。


「裏をかかれる可能性もあるんじゃ?」

一応、甚兵衛に聞いてみる。大森殿というと輝道の三男、小野寺康道(おのでらやすみち)。知略は平均以下であるものの兄である義道よりも圧倒的に高かったと記憶している。


「先の戦でもなんもしてこなかったんだろ?なら無駄にここで様子見して攻められてると思われちまうならそのまま通り過ぎた方がちょっかいをかけられねぇとあっしは思いまっせ」

甚兵衛の言う通り、ここに長居すると大森城を攻めに来たと思われかねない。それで打って出て来られたらそれこそ無駄な犠牲が多くなるだろう。


「よしわかった。各部隊このまま前進。ただし特に横からの奇襲と伏兵に備えて戦闘態勢で進め」

本当は部隊を二列にして進めさせたいんだけど『複縦陣』って言ってもまだ伝わらないからな……




「卯の方(東側)に丸に輪貫九曜の旗印!お味方です!」

伝令が報せる。

恐らくは沼館城を攻めた盛安の部隊がこちらも赤尾津羽川襲来の報を聞いて飛び出してきたのだろう。


「あの軍に伝令を出せないか?戸沢の誰の部隊か確認したい」


「はっ!相手には何と?」


「橋本航太が連携を図るためによこしたと言っておけ。誰であっても門前払いはされない筈だ」


「承知!」


頼もしい伝令が戸沢の家紋の軍へと向かって行く。


ゲームとは違ってしっかりと確認しないと旗で敵か味方かはわかっても誰の部隊でどれだけの戦力なのかがまるでわからない。その事はこの世界に来る前からドラマとかを見て気づけていたから情報交換を重視している。


しばらくして伝令が帰って来た。


「大将は前田利信殿!50ほどの兵を率いている次第とのことです!」


え、五十……?


「足軽を含めて50人か?そんなに少ない訳が……」


「はっ!確かに50人程と利信殿が仰せでした!」


えーと……


橋本軍、300人。


味方総戦力350人。


敵方、少なくとも城を囲める規模の兵数。多分倍は居る。


どう勝てと……

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