#11 お友達、できました。
薄井城を本陣とすると言ったものの、連れてきた兵はとても城には入りきってはいなかった。
もともと館を塀と堀で囲っただけの簡単な城には臼井殿と呼ばれる開発領主、俺みたいに空き巣狙いをした元村長のような人が住んでいたらしい。残念ながらそれ以上の事はほぼ何も残っていない。
しかし薄井城は小野寺からすると小野寺の城、戸沢からすると戸沢の城とどっちの城なのかわかりにくい事になっている。つまりはどちらに付くかはその場その場で決められた独立領主だったみたいだ。
「こちらです」
橋本航太の名を伝えると戸沢家臣の黒川縫殿助と言う者が盛安の居る本陣まで案内してくれた。黒川、というのだから黒川館主なのだろうか?ゲームにすら登場していない人についてはまるで知識がない。
縫殿助に再度案内されると前には当世具足を着た凛々しい若武者が机のお誕生日席の場所に立っている彼が盛安だろう人物がいた。
「橋本家初代当主、橋本整備士航太です。かねてより治部殿のお話しは伺っておりましたのでご挨拶に参りました」
「そなたが橋本航太という者か、面を上げてくれ。聞けば小野寺の兵を見慣れぬ得物で追い払ったそうだな」
レーザーか?流石にそれは言えないので投石器の方にする。なぜか日本ではあんまり流行らなかった兵器だからおそらくは知らないんじゃないかな?。
「はい、投石器という物でございましょうが、如何せん川を渡らせるのには少々重すぎる故に本日は持ってまいりませんでした」
「いやいや、助勢だけでも有難い。それと家臣でもないのにそこまで畏まらなくとも良いぞ。橋本殿は俺と同じ当主である上に俺と同い年だそうじゃないか、水上の和尚様から聞いたぞ」
心なしか少し嬉しそうな盛安、別に今の戸沢家中は若手が少ない訳でもないと思うんだけどな……?
しかし生まれた年は違えど数え年なら確かに盛安と俺は同い年だ。しかし何というか……にじみ出るオーラが違う。精鋭のオーラというか……
「そうでしたね、私など治部様には到底及ばない才しかないもので……」
「俺の事は九郎で良い。それに、僅か30人の槍すらも持たぬ者で100の兵を退けたのだ。それこそが才の証となってるのではないのか?」
「そう言っていただけると助かります。して、私どもはどのように動けば良いでしょうか?」
いえいえ滅相もない。俺なんてただレーザーチートとゲーム知識チートと数学チートをしていただけですよ。
「まだ固いのが気になるが、追々だな。まずは敵の手勢が出てくる筈だ。大築地の下の小清水が何もせず籠城するとは考えにくい。それを破ってから本格的に沼館を攻める。だがあまり時はとれない。あまり長居できない事情があるのだ。せいぜい五日が限度だろう」
時間をかけられない事情というのは安東への備えもだろうが、小野寺方の大森城が沈黙していることと関係があるのだろう。もともと楢岡氏の手引きで盛安は沼館の攻撃をしている。勝手な想像だが楢岡氏が大森城主を動けない状態に陥らせ、攻撃の機会を生んだ……のだろうが、ここで俺の知っている歴史と異なる点に気づく。
本来盛安が沼館を楢岡右衛門の手引きで攻撃するのは1587年の『阿気野の戦い』の後の話であり、しかもその時は『三千余騎を率いる』と伝わっている。しかしここにいる兵は俺達橋本家220人の軍勢のせいぜい五倍程度であり確実に3000人はいない。その事について盛安に尋ねてみる。
「そうですか……素早く速攻を仕掛けたい所ですが……九郎殿の軍勢はどれほどいるのでしょうか?」
「千程だな、これ以上動かすとなると流石に安東が黙っては居まい」
1000人、つまりこの戦いは歴史に残っていない戦いだ!どう転んでも大きな問題はないと共に勝てる確証もなくなったけどな。
「でしたら城に火を放つのはどうでしょう?引き籠るようなら何度も放ってしまえばいいのです。流石に城を燃やされるのを大築地も黙って見過ごすわけにもいかないでしょう」
かの徳川幕府の初代征夷大将軍、徳川家康も松平元康を名乗り今川の先兵として織田家と戦った時にも使われた『火付け作戦』だ。
ただ元康と違う点は強襲して燃えたら撤退、ではなく敵に気づかれないように接近し放火、その後放火グループは一目散に戸沢橋本軍に逃げ帰ってくる、というものだ。
詳細を話すと盛安は
「それではまるでただの火付けではないか!」と言ったものの
「航太殿……でも差支えないだろうか?そなたに火付けの役を頼みたい。如何せん俺が攻めてくるという事は大築地もよく知っておろうからな」
盛安の軍勢が動くのは確かに目立ちすぎるだろうし下手すると気づかれる危険性が高い。
それに対し橋本家の軍勢は敵に気づかれないように軍を進め、今も森の中に隠れて布陣している。
もともとこんな少数で小清水や大築地の部隊に見つかり正面からぶつかったら全滅間違いなしだから雄物川を渡ってからは本隊は隠れて森と畑の境目あたりに見張りの兵を出していただけなので、もしかすると敵はまだ俺達の存在には気づいていないかも知れない。
そういうことを踏まえると俺達が火付けを担うのは当然だった。
「航太でいいです。火付けの役、任されました。今夜にでも参りましょう」
「よろしく頼む。大丈夫とは思うがくれぐれも見つかるなよ」
「お任せを、九郎殿も戦備えをお願いします」
こうして俺は橋本の本陣に戻ったのだが、この時の俺はまだ知り得なかった。この戦いがもたらす影響を俺は全く考慮していなかったのだ……
今回から少し読みやすくなるようにと試行錯誤の結果を入れさせて頂きましたーですので少し違っても驚かれないようお願いしますー
以上、水饅頭からの告知でしたー
次回もぜひよろしくお願いいたしますー




