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マッチョヒゲと遭遇

「俺、もうお嫁にいけない…。」

「元気だしてください。」

ぐすぐすと泣いているラグをサフィーナが慰めている。

「そんなアホほっとけ。」

「でも、ちょっとかわいそうで。」

ラグの隣を歩くサフィーナが答える。

「さすが幼女、心優しい…。」

その言葉を聞いてラグがサフィーナに抱きつこうとするのを、ニアが止めた。

「…優しくするとつけあがるよ。」

「その通り。」

「誰かやざしくじでぇええ!

ラグが泣き叫ぶが全員無視した。

俺たちはサフィーナの指示を聞きながら森の出口を目指していた。しばらく森の中を歩いていると、開けた草原に出た。

「ここが森の出口です!しばらく行くと、学者たちが集まる学術都市のモリアルゴンがあります!」

「俺、勉強嫌いだから、その街は行かないこととする!」

「馬鹿言うな。とりあえず街に行って休むぞ。装備やら食料やらも買わねーといけないしな。」

「あたしはオレグに賛成。」

「私も…賛成です。」

「誰がやざしくじでぇええ!」

「うるせぇえ!」

またわめきだしたラグにげんこつをくらわす。気絶したラグの足を掴んでずるずると引きずって行くことにした。


「まて。」

俺たちを呼び止めたのはサフィーナの親父のジジィエルフだった。

「今度はなんだよ?」

ほんとにどいつもこいつも邪魔しやがる。

「…行くのか、サフィーナ。」

「はい、お父様。私は外の世界を見てきます。そして、帰ってきたらこの森のために働きたいと思います!」

「もういい。お前など娘とは思わぬ。出ていけ。」

「お父様…。」

「…行くぞ、サフィーナ。頑固なジジィには何言ったって無駄だ。結果見せねーと。」

落ち込んでるサフィーナをニアが慰めながら先に促す。

俺も行くかとラグの足を持ちなおす。

「…娘を頼んだ。」

「あぁ?」

突然ジジィが俺に話しかけてくる。

「本当に母親にそっくりだ。心優しいサフィーナ。どうかあいつを守ってやってほしい。」

「娘に直接言えよ。」

「立場が私に父であることを許さぬ。」

「ちっ、めんどくせーな。」

「俺が守るから大丈夫だ。心配すんなよ、じいさん。」

いつの間にか目を覚ましていたラグが勝手に約束する。

「お前、適当なこと言うな!」

「いいじゃねーか。女を守る男ってかっこいいじゃんよ。」

俺たちのやり取りを見てジジィエルフがクスっと笑い、いつの間にかその場から掻き消えた。


「でけー!」

初めて見る高い建物にラグが大声をあげる。モリアルゴンに着いたので、とりあえず宿を探してるんだが、初めての都会にラグとサフィーナが大興奮してしまっている。

「あたしもこんな都会に来るの初めてだよ。あんたは来たことあるような顔してるね。」

「まぁな。」

ぷはーとタバコをふかす。戦線に出ていた時にちょっと寄ったぐらいで、ほとんど覚えてねーけど。

「おい、いつまでそうしてんだ。さっさと宿探すぞー。」

「おぉぉ!あの建物でかいしすげえきれいだぞ!」

「ほんとだ!」

ラグとサフィーナが突然走り出す。ほんとに話聞いてんのかあいつら。

二人が入って行ったのはどうも学校のようだ。

「国立の学術大学みたいだね。」

「…あいつら連れ戻すぞ。」

「わかったよ。」

立派な大学の門をニアと二人でくぐると同時に「ほぎゃああ!」というラグの悲鳴が聞こえた。

「…たまに俺はあいつの頭を魔法で吹っ飛ばしたくなる…。」

「…同情はするよ。」

なんで俺の幼馴染はこんなに厄介ごとばっかり持ってくんだ!

ラグたちの所に急ぐと、二人は天井にステンドグラスがはめ込まれた美しいホールにいた。

「頼む!俺を助けてくれ!」

「ぎゃああ!男が抱きつくなあ!」

「ラグさん!」

しかし、その下ではマッチョでヒゲの男に抱きつかれたラグが泣きながらサフィーナに助けを求めているという訳の分からない状況が繰り広げられている。

俺はその場に崩れ落ちた。

「いったい何の騒ぎだい?」

ニアがマッチョヒゲの腹に一発蹴りを入れる。相変わらず喧嘩っ早いな。

「ぎゃあ!」と悲鳴を上げて仰向けになったマッチョヒゲの下から逃げ出したラグが俺のところまで走って逃げてくる。

「地獄だ…地獄だった。」

「日頃の報いだ、馬鹿たれ。」

はぁはぁと息を荒げているラグに言葉を返す。

「たっ、頼む!どうか俺の話を聞いてくれ!」

「きゃあ!」

マッチョヒゲは今度はサフィーナに縋り付いたので、とりあえずかかと落としをくらわして止めさせる。

「変態の頼みなんか聞く義理ねーわ。行くぞ。」

「はい!」

マッチョヒゲに抱きつかれたのがよっぽど怖かったのか、ラグが珍しく素直についてきた。

しかしマッチョヒゲはしぶとかった。

「まてぇ!頼む!聞いてくれぇ!」

「おわ!離せ、変態野郎!」

「たのむぅ!」

ラグばりのしつこさで、ラグに縋り付いてる。

「頼む!頼む!」

「なんだってんだいったい。」

幼馴染といると、ほんとに退屈しねーな。思わずははっと笑ってしまうとラグが「笑ってねーで助けろ!」と叫んでいた。


エンカウント:マッチョヒゲ


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