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森の大きなクマさんは  作者: ふとん
9/22

お嬢さんは働き者

「――良い子でしょう?」


 ウルを見送ったユーディトがそんなことを言い出すのでテオは頷きもせず叔父の新しい妻を見遣る。

 派手な女だ。わがままで奔放で、物静かだったことは一度もないが不思議と人に嫌われない。しかしテオはユーディトが苦手だった。正論は時としてうっとおしいのだ。


「無愛想を地で行くあなたのところに居るなんて驚いたけど、ウルが元気そうで良かったわ」


 素直ではないユーディトにしては珍しく素直に心のうちを吐露しているようだった。姪のウルを本当に心配しているのだ。


「無愛想と分かっている俺のところに、どうしてあの娘を寄越した?」


 可愛い姪を食い違いがあったとはいえテオのところへ寄越すなど、普段のユーディトからにしても強引な方法だった。しかし当のユーディトの答えも曖昧なものだった。


「さぁ…。何となくあなたのところがいいと思ったの」


 こういう勘は外れないのよ、というユーディトという女がやはりテオにはよく分からない。理屈で片付かないところこそラウレンツ叔父がこの女を愛する理由の一つらしいが、その境地をテオが目にすることは無いだろう。

 遠い目をするテオにユーディトは嫌な顔で笑う。


「で、あの子はどう? 結婚したいと思ったでしょう」


「時期を見て実家に返す」


 どうしてテオの周りには下世話な人間が多いのだろうか。

 だが色々な理屈をつけてでも、よく知りもしない遠い親戚の娘を助けてやりたいと思ったのは本当だった。

 その衝動にも似た感情はテオの中で今でもくすぶっている。

 それをユーディトに明かすつもりはないのだが。

 森の屋敷に襲来したユーディトはウルに出された茶をたっぷり一時間かけて飲み、森をようやく去ってくれた。


「やっぱりいつも素敵です。ユーディ姉さん」


 ウルはそう憧れの視線でユーディトを見送ったが、テオはうんざりと肩を竦めた。ウルまで台風のような女になられてはテオの手に負えない。


「お茶を入れ直しますね」


 そう言って春風のように駆けていくままであって欲しいと思うのは、テオのわがままかそれとも得体のしれない何かなのか。

 それに名前をつけるのは、テオにとってもウルにとっても良くないことだろう。

 テオは春風の後ろをのっそりと追って、穏やかな我が家に帰れればそれでいいのだから。



 

                       

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