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~ラスト・マイル・アサシン~ その配送師、国の臓腑を駆け抜ける   作者: 秤乃 うさぎ


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第五話 未登録貨物

落ちる…!?



風がうるさい、うるさいなんてものじゃない。

顔面、いや身体全体に風圧が叩きつけられている。

落下の勢いで息をするのもままならない程だ。


「……っ!?」


なにが起きているのか理解が追いつかない。

視界が回る。

空と雲と…暗闇がめまぐるしい勢いで回転している。

平衡感覚が完全に失われている。


落ちている。


(……は?)


意味が分からない。

先ほどまで俺は得意先への打ち合わせの為、飛行機で移動中だった。

それが今は身体一つで空に投げ出されている。

真っ暗な雲の中、稲光があちらこちらで瞬いている。


「な、なんで……っ!?」


叫んだはずだがその声は風の音にかき消される。

息が出来ない……全身が風圧で潰されそうだ。

ただ為す術もなく無様に空中でもがく。もがき続きける。

何も出来ないし何か起こる訳でもないのに、それでも陸上に打ち上げられた魚のようにもがく。



それしか出来ない。


「kっっそ……ふっffっざけんな……!!」


悪態をつくがそれも何の意味もない事だ。

己の無力さをこれほど痛感した事はない。


その時、闇と雷に満たされた雲の中、僅かに裂けた雲間から見えた。飛行機が。

片翼あたりから僅かに黒い黒煙を引きながら機体の横腹にも穴が空いている。


それでも……まだ飛んでいる。


そこで改めて理解する。

俺はあそこから落ちたんだ…。


「ま、待て!!!」


あり得ない言葉が口から出る。

戻ってくる筈がないしこの声が届く訳もない。

それでも賢明に徐々に遠ざかる飛行機に手を伸ばす。


「待て……!!俺は……ここに……」


機体はどんどん遠ざかる。

乗客も乗員もあの中にいる。

自分だけが取り残される。


「なんで俺だけ…!?」


怒りなのか恐怖なのか分からないがそんな事をただ叫ぶ。

その間にも落下は止まらない。どんどん加速していく。

物理法則は裏切らない。

地面は確実に近づいている。

真っ暗な雲の中、視界の端を白い何かが通り過ぎその風圧で煽られ体勢が崩れる。


「……っ!?」


俺を通り過ぎた白い何かを視界に捕らえる。

真っ赤に燃える塊。


(い、隕石?)


それを境に隕石が次々に降り注ぐ。


(な、何だよ!!これ!!)


状況が理解出来ない。


飛行機は飛んでいる。

自分は落ちている。

隕石が降ってくる。


この状況での答えは単純だ。

隕石が飛行機に接触し、俺は機外に投げ出されたのだ。

俺一人だけ……。


(何でおれだけ……!?)


己の不運を呪う。

落ちている。

それがこの後、どのような結果を招くか……確実な”死”だ。

必死に身体を捻る。それが意味があるのかも分からない。

しかし先ほどまで耳をつんざく程の風切り音が響いていたが、今は完全なる無音だ。

何も聞こえない。

ただ真っ暗な雲の中、稲光と隕石が降り注ぐ中、まるで俺だけがこの場で異物。


(死にたく……っ!!)


そう思った刹那、光の輪が突如として目の前に現れた。


「な……なん」


理解する前にただその輪に吸い込まれる。

落ちているのに、落ちていない。

まるで宇宙空間の無重力にいるかの様に。


光の輪に吸い込まれていく。

無意識に吸い込まれた入り口に視線を送ると遠ざかる飛行機が最後に見えた。

もう豆粒程の大きさで…小さく……遠く。





(あぁ……もう……戻れないんだな…。)



そう諦めの言葉を呟くと、俺の意識はそこで途切れた。


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