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~ラスト・マイル・アサシン~ その配送師、国の臓腑を駆け抜ける   作者: 秤乃 うさぎ


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第一話 終業間際の無理難題

「社長!!第4区画の積み込み、終わりました!」

「オッケー、次、南門ルート回して、時間押してるから、軽い方から先に出してこ」


怒鳴るでもなく淡々と支持を飛ばしていく。

それだけで現場は動く。

荷車がきしみ、怒号と掛け声が飛び交い、箱が積まれていく。

昼食後の昼下がりの石造りの倉庫群、その一帯……そこが俺の…いや、俺たちの拠点だ。


「……全く、今日もフル稼働だな。ま、ありがたい事ではあるか。」


静かに額の汗を手の甲で拭った。

元日本人、34歳でこっちにくる前も運送業界で働いていた。

そして今は……


「社長!こっちの伝票にサインをお願いします!」

「はいはい」


異世界で運送会社を営む、その代表だ。

しかもただの運送会社じゃない。

今では街の物流の7割を握り、貴族からも軍からも依頼が来る。

気が付けば街と街を繋ぐ物流の要となり、これまで国交がなかった国や種族とも繋ぐ重要な地位まで上り詰め、国の重鎮たちからも一目おかれる存在になっていた。


「……そんな大層なもんじゃねぇんだけどな」


ぼやきながら、伝票にサインを入れる。


(結局やってることは同じだ)


荷物を受けて、運んで、届ける。

それだけだ。

ただ……


「社長!!北側ルート、魔物の出没で遅延が出てるみたいです!!さっき帰って来たリボの奴が言ってました!!」


そう、ここには魔物や魔獣が出没しこの世界の大部分を支配する世界…。

俺がいた日本では熊の被害が頻発していたが、ここではその熊も子猫レベルに感じるほどの凶悪な生き物がうようよしている。


「回避ルートを使え。第3林道から抜けれるからあそこならまだマシだったハズだ」

「了解!!」


その指示を受けた従業員は走り去っていく。

どこに何があって、誰が動いて、どこが詰まっているか…

運送会社と言えば異世界転生ではトラックに撥ねられた方ばかりが異世界に転移したりしてトラックの運ちゃんが不憫でしかたなかったもんだ…。


異世界物は俺も好きで良く読んだりアニメも観てたが…。まさか自分がそんな境遇になるとはな…。

ぼんやりとそんな事を思っていると…。


「社長~!!貴族様の追加依頼来てます!!急ぎの便らしく転移便です!!」

「内容は?」

「時間厳守で、城内への直送依頼です!」


溜息をつく…だが断らない。

運べるなら、運ぶ…それだけだ

そして俺が運べない場所、物は……ない。


「後で俺が運ぶから荷物を例の場所に回しといて」

「はい!!」


そして昼から時間が経過し日が傾き始めている。

空が橙に染まり、作業もひと段落し終盤に入る。

そろそろ営業終了時刻だ。


「……よし、今日もなんとか終わりそうだな。残りは例のお貴族様宛だけか。」


そんなことを思案しつつ肩を回す。

ほんの少しだけ、気が緩んだその時だった。


「お!おい!!やめろろって!!」


倉庫の入り口の方から、怒鳴り声が響いた。

眉を顰める。


(トラブルか?)


声のする方に視線を向けると……


見慣れない一団が受付カウンターの前に陣取っていた。

豪奢な鉄鎧に身を包んだ戦士やフードを被った魔法師、それに軽装な身なりの斥候職やら総勢6人パーティの一団だ。


そのリーダー格と思われる鉄鎧の男が大声で怒鳴っていた。

しかしこの辺りでは見ない連中だ。

おそらくこの街に来たばかりの『広域探索機構』通称”広機こうき”と呼ばれる異世界ものでよくある冒険者ギルドみたいな連中だ。


そいつの足元には崩れた木箱。


「さっさと俺たちの荷物を運べってんだよぉ!!」


そう怒鳴るとまた梱包されていた木箱を蹴り上げ破壊する。


中身が散らばる。


木箱が粉々になる乾いた音。


そして静まり返る現場。


やれやれ…まだ仕事が残ってるってのに…

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