97 七歳の子供には少々荷が重すぎるような気がしますが、大丈夫ですか?
父アーサーに呼び出されて王宮に戻ると、特別室に案内された。
扉を開けると、そこには父と父の側近アルバート、そして、国王ダタンと宰相ハワードもいた。重々しい空気にカインは少し怪訝な表情をしながら、用意された椅子に座った。
「何かあったのですか?空気が重いのですが・・・それで、お父様。お話とは何ですか?」
アーサーのは眉間にしわを寄せ、なぜかカインをじっと見つめ、今にも泣きそうな顔をしていた。
「お父様?」
なかなか本題を切り出さないアーサーの様子を見ていた国王ダタンが、見るに見かねて話しを切り出した。
「カイン、余から話そう。実は・・・」
国王ダタンはスチアート王国以外で起きている事件の詳細について話した。国王ダタンはカインをただの七歳の子供と見ていないのだろう。特にオブラートに包み隠すことなく、大人への対応と同じように話していた。
カインは国王ダタンの話でおおよその状況は把握した。しかし、それに対してなぜ父アーサーがそこまで悲しい表情をしているのか理解できなかった。他国の王が苦しんでいるのを悲しんでいる表情では決してなかった。
「それで僕を呼び出したのは、何か役目があるということですよね?」
「さすがカインだ。状況を飲み込むのが早いな。カインには・・・」
「待ってください、国王様。そこから先は私がお話いたします」
アーサーは立ち上がり、カインに近づき、カインの目線に合わせるように屈んだ。そして、カインの両手を握った。
「カイン、父様はカインのことを誇りに思っている。これからカインに頼むことは父親としては失格なのかもしれない。でも、カインにしかできないと思ってる。だから・・・その・・・つまり・・・」
「もしかしてお父様は僕にイエッツェ国を攻めるための囮になってほしいのですか?」
「えっ・・・」
アーサーがなかなか言い出せない言葉をカインがあまりにもあっさりと言ってしまい、戸惑いと驚きがアーサーの中で交錯していた。
「驚いたな。カイン、そこまで理解できるとは」
カインの理解力の早さに、国王ダタンだけでなくハワードとアルバートも驚愕していた。
「それで、お父様。僕は何をしたらよいのですか?」
「カイン、わかっているのか?イエッツェはお前を狙っているんだ。それに、国王セシルの側には魔族もいるのだぞ。怖くないのか?」
「その魔族は僕を魔王にしようと企んでいるのでしょう?殺されることはないはずです。それに、お父様たちはイエッツェへ攻めるのに乗じて、奴隷にされている人たちも救出する作戦でしょう?僕が囮になってその人たちが助かるのであれば、僕は喜んで協力しますよ」
カインがあまりにも淡々と話すため、アーサーは呆気に取られていた。
「アーサー、どんな育て方をしたらこんな子に育つんだ?カイン、お前はまだ七歳の子供だ。わかっていてこんなことを頼んでいる国王もどうかと思うが、余はスチアート王国の民も大切に思っているが、他国の民もこの国と同じように大切に思っている。情けない国王で申し訳ない。カインの安全は余が保証する。協力に感謝する」
国王ダタンと宰相ハワードが深々と頭を下げていた。国王が頭を下げることはまずない。特にスチアート王国の国王はアースノロード大陸の頂点に立つ人物である。その人物がほんの七歳の子供に頭を下げている。この意味はカインにも理解できていた。
「国王様、頭をお上げください。僕は国王様には感謝しています。僕には魔王ベザレルの血が流れています。本来なら、排除すべき人物です。ですが、国王様は僕を一度も魔族を見るような目で見ませんでした。勇者アーサーの息子として、スチアート王国の民として扱ってくださっています。それに、最愛の娘であるアイビー・スチアート第二王女殿下を僕の婚約者としてくださいました。僕は父の名と国王様のみ名を汚さないよう全力で協力いたします」
「カイン・・・お前は本当に・・・俺にはもったいない息子だ」
アーサーは泣き笑いながらカインを力強く抱きしめた。
カインはアーサーに抱きしめられながら、あることを考えていた。
(国王様にも紹介しないといけないよね・・・)
カインはアーサーの耳元でコソコソとある提案をした。
「カイン、それは・・・」
アーサーは驚いた顔でカインを見ていた。
「でも、お父様。僕を守れるのは・・・」
「どうした?アーサー?」
急に複雑な表情をし、下を向き、何かを考えているアーサーを国王ダタンは心配そうに見つめていた。
「そうだな・・・カイン、呼び出せるか?」
「はい」
アーサーは大きく一呼吸をし、立ち上がり、意を決して、国王ダタンに告げた。
「国王様、私とカインには国王様に隠してきたことがございまして・・・」
「何だ?そんな怖い顔して」
アーサーはカインに目で合図した。
「国王様、お初にお目にかかります」
国王ダタンは驚きのあまり椅子ごと後ろに転げてしまった。




