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僕が言うのも何ですが、勇者が魔王の子を育てて大丈夫ですか?  作者: 日昇
第1章 幼少期

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1 魔王の言葉を信じて、大丈夫ですか?

一人の魔族が魔王城の窓から、人族と魔族の戦いを見物していた。

その顔は何を考えているのかわからないほど無表情だった。

「魔王様、すぐそこまで勇者軍が迫ってきています」

「・・・そうか。下れ」

魔王は部下の報告を聞いてもなお、窓の外を眺めていた。

「セヴァス」

「はい、魔王様。何でしょうか」

セヴァスと呼ばれる男は長身の白髪で、見た目は七十ぐらいの老人に見え、左目には黒いレンズのモノクルをかけていた。見えている右目は魔族特有の赤い瞳をしていた。

「・・・あの子を守れ」

「承知しました」

セヴァスは自分の影に手を当てた。すると、影に吸い込まれていき、跡形もなく消え去った。

「・・・やってくれたな」

魔王は大きなため息を吐きながら、再び窓の外を眺め、誰かを待っているようだった。




「やっと来たか・・・遅かったな、勇者」

魔王に剣を向けていたのは、勇者アーサーとアーサーが従えている勇者パーティーの者たちだった。

「魔王、なぜ人族の領に攻めてきた!なぜ罪のない多くの民を殺したのだ!」

アーサーは怒りに燃えていた。アーサーの怒りに呼応するかのように、アーサーの持つ剣は大きな炎に包まれていた。

「・・・勇者アーサーよ。二人だけで話がしたい」

「俺はお前に話すことなどない」

魔王は相変わらず、窓の外を見ていた。

(泣いている?)

ちょうど雷が落ちた時、魔王の顔が照らされた。アーサーの目には魔王が涙を流しているように見えた。

「もし私の話を聞いてくれるのならば、私の力の全てをもって、この戦争をとめる」

「アーサー、魔王の話など聞いてはなりません。どうせ私たちを騙すための嘘に決まっています」

たしかに仲間の言うことはもっともだが、アーサーには魔王が騙そうとして嘘をついているようには思えなかった。

「・・・わかった。話を聞こう」

「アーサー!」

「お前の話を聞いたら、本当にこの戦争を終わらせてくれるんだな」

「あぁ、約束する」

「お前たちは下れ」

アーサーの仲間たちは心配そうにアーサーの後ろ姿を見ながら、魔王の部屋から出て行った。

アーサーの仲間たちが出て行くと、ようやく振り向き、顔を見せた。

(この男が魔王・・・?)

アーサーは魔王の姿に驚いていた。

(本当にこいつが魔王なのか・・・?どう見ても・・・)

「勇者アーサー・・・私は・・・」




アースノロード大陸。この大陸は五種族がそれぞれの種族で国を作り暮らしている。エルフ族、ドワーフ族、獣人族、人族。そして魔族である。長年、魔族と他の種族は領地を巡って争っていた。数百年に一度、魔族の長である魔王が変わるたびに、大陸全土を魔族領とするため、他の領土へ戦争を仕掛けてきた。その度に各種族の王は人族の王に助けを求めた。人族だけが唯一魔王に対抗できる勇者を有していた。人族の王は神に救いの手を差し伸べてくれるよう願い求め、神により勇者が選ばれ、魔王を討伐していた。


五年前、魔族が侵攻してきた時、人族より勇者に選ばれたのが、アーサー・デイヴィスだった。

アーサーはデイヴィス公爵家の長男であり、妻ミディアン、息子アベル、娘レアの四人家族だった。

その頃、妻ミディアンは妊娠していた。出産日が近づいた日、アーサーは魔族領へ向かうことになった。


「必ず生きて帰ってくる。心配するな」

アーサーは泣きじゃくるレアの頬にキスをし、優しく頭をなでた。

「レア。レアはもうすぐお姉さんになるんだ。アベルと一緒にお腹の子を守ってくれるか?」

レアは涙を手で拭きながら、大きな声で、私とお兄様で守ると力強く宣言した。

「アベル、お前は男だ。母さんと妹を守るのだぞ」

「お父様、安心してください。僕がお父様の代わりに守ります」

まだ五歳であるアベルは泣くのを我慢しながら、しっかりした目でアーサーを見つめていた。

「ミディアン、子供たちを頼む」

アーサーはミディアンと抱擁し、後ろを振り返ることなく、馬に乗り、魔族領へと向かって行った。

(あなた・・・必ず帰ってきて・・・)

ミディアンはアベルとレアを抱きしめながら、アーサーの姿が見えなくなるまで見送った。




◇◇◇五年後◇◇◇


「カイン様、起きてください。カイン様」

カインは侍女のマリーの透き通るような美しい声で目が覚めた。いつもならもう少し遅い時間に起こしに来るのだが、今日はいつもと違い早かった。

「マリー、なぜ今日はこんなに早く起こしたの?」

「何をおっしゃているのですか、カイン様。今日はカイン様の五歳の誕生日ではないですか」

(そうだった・・・)

カインはまわりの五歳の子供とは違っていた。子供らしさの欠片もなく、いつも淡々と話し、笑顔を見せることもない。礼儀作法もわきまえているため、半年前にカインの専属侍女になったマリーも、まだ五歳にも満たない子供が大人の対応をしていることに終始驚いていた。

誕生日だからと言って、プレゼントを楽しみにするわけでもなく、カインはいつもの日常を変わらないような態度だった。




「カイン、おはよう。今日はお前の五歳の誕生日だ。お前を祝うために夜はパーティーを開く。早くお前を皆に紹介したい」

父アーサーは息子のカインより楽しみにしているようだった。

(お父様は本当に勇者だったのか?)

カインは父アーサーの子供への溺愛ぶりを冷めた目で見ながらスープをすすっていた。

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