ルミナ、復活ッ!
リカルドの一撃を防ごうと瞬間、ルミナが俺の前に現れた。
そして、不意を突くとリカルドへ自身の刀を一閃。リカルドの横っ腹から肩にかけて鮮血が飛ぶ。
「声が大きいんですよ。鼓膜に響きすぎて、おかげで体力回復に時間がかかりました。」
ルミナがいつものように俺に喧嘩腰に言う。
顔の表情を見ている感じ、とても全快とは言えない。
「遅かったじゃん。もう、くたばったかと思ってた。」
俺はルミナに言い返す。
ルミナは、血の付いた刀を振るい血を飛ばす。
「一度、貫かれてみることですね。いくら、丈夫といってもそれなりに痛いんですよ。」
「嫌だよ。痛いと言うことをわざわざするかよ。」
俺はそう言うと、ルミナの隣に並ぶ。
「行けるのかよ?」
俺は一応、ルミナに確認する。
正直、それでやっぱり無理ですなんて言われても困るが。
「当り前です。我が名はルミナ・ランスフォード。ランスフォード家の次期当主です。この程度の傷でくたばりませんよ。」
そう言うと、刀を構える。
「馬鹿な女だ。そのまま寝ておけば、苦しまずに死ぬことが出来たのに。まあ、いい。手間が1つ増えただけの話だ。」
リカルドはそう言うと、両手と両足に生えている爪をさらに鋭くさせる。
ルミナの与えた傷もほとんど効果はないと言わんばかりである。
「どうやって倒す?」
俺はルミナに尋ねる。
「リカルドは、純粋に肉体強化のみのタイプです。ただ、問題はどうして確実に胴体を真っ二つにする勢いで叩き切ったはずなのに無傷でいるかということです。」
そう、そこである。
肉体強化のみなら、確実に仕留めたはずのあの状態で無傷でいるのはおかしい。
「幻術の類なのか。そうだとしても、あのレベルで騙せるような魔道具は聞いたことがないですし。」
ルミナは呟く。
「まあ、どうしてかを考えるかは後の方が良さそうだぜ。」
俺はリカルドを見ながら、ルミナに言う。
リカルドの体がさらにデカくなっていく。
どうやら、先程までは本気ではなかったと言うことだろう。
「剣殿!避けてください!」
ルミナが叫ぶ。
俺とルミナは同時に、二手に分かれるようにしてリカルドの攻撃を避ける。
そして、そのままリカルドを両側から挟むようにする。
同時に、大剣と刀を振るう。
ガキン!!!
金属音が鳴り響く。目の前にリカルドの姿はなく、俺とルミナの互いの刀身が触れ合っていた。
頭上を見上げると、巨体のリカルドが俺達を押しつぶそうとする。
「ふんッッッ!!!」
ルミナがリカルドの両足を刀で受け止める。歯を食いしばりながら、必死に耐える。
俺は気配を消して、リカルドの背後に回る。
そして、リカルドの背中を大剣で斬りつける。
しかし、斬った感触はほとんどなかった。逆に、不意を突かれて俺はリカルドの右手で弾かれ、後方に飛ばされる。
それを見ると、リカルドは踏み潰そうとしていたルミナにより一層体重をかける。
「はあッッッ!!!」
ルミナは声を上げると、耐えていた刀を上に押し上げてギリギリの所で抜け出した。
「斬った感触がほとんどないんだけど。何と言うか、フワフワした感じで。」
俺は、呼吸を整えながらルミナに言う。
ルミナの方も息絶え絶えと言った感じである。そして、傷が痛むのか貫かれた部分を気にする素振りを見せる。
「誰かがもう1人魔術を行使していると言うことでしょうか。ただ、そうなるといるのは…。」
ルミナはそう言うと、俺を横に弾き飛ばした。自身は刀で不意の一撃を防ぐ。
地面に転んだ俺は体勢を立て直し、立ち上がった。眼前にはザドキエルがいた。
俺は横目でリカルドの場所を確認する。リカルドは先程の位置から動いてはいないようだ。
「闇属性の魔術の影響か。何度か、術が乱されている気がするな。地味に厄介だ。」
ザドキエルはそう言うと、鬱陶しそうに俺を見る。
「リカルド、こちらとしてはそう何度も手助けをする気はない。早く、貴様が殺したい女を仕留めろ。」
リカルドの方に視線を移すと、ザドキエルが言う。
どうやら、完全に共闘関係というわけではないらしい。
「正直、2人で一緒に来られる方が楽なんですけどね…。」
ルミナが俺の隣で呟く。
「剣殿。まずは、リカルドを。その後に、あの片腕の男を何とかしましょう。片腕の男に関しては、あまり積極的に戦わないならば私に策があります。」
ルミナの言葉に俺は頷く。
俺とルミナはリカルドに向かって走り出す。
交互に入れ替わるようにしてリカルドに斬りかかる。少しでもリカルドの視界を邪魔すると言う意図だ。
「本当に小賢しい奴らだ。そんな小手先だけの真似で勝てると思っているのか。」
リカルドが苛立つ様子で言う。
正直、この苛立ちで動きが単調にならないものかと思う。
ルミナは、素早い動きで巨体のリカルドを翻弄する。
体をさらに巨大化させてパワーは明らかに跳ね上がっているが、その分先程までの素早さが身を潜めている状態だ。
身軽なルミナはそれを逆手に取るようにして、右へ左へとトリッキーな動きを繰り返す。
俺は、ルミナに気を取られている隙を狙って攻撃を叩き込む。
ただ、やはりこの巨体だ。正直、大したダメージを与えれている感触はない。
「えーい!ちょこまかと!」
リカルドはそう叫ぶと、両手を広げ、自身の周りに風圧を出す。
俺は、魔力を纏うとその風圧をリカルドに対して弾き返す。
リカルドの胴体に幾分か、切り傷のようなモノが付き血が飛び散る。
しかし、それを物ともせずにさらに自身の周りを覆う風圧を強める。
「剣殿!下がってください!」
ルミナが俺に指示を出す。
俺はそれに従うと、後ろに下がる。
リガルドは逃さぬと言わんばかりに俺との距離を詰めようとする。しかし、そんなリカルドの動きが何かによって止められる。
リカルドの周囲には無数の意図が張り巡らされていた。ルミナが愛用している相手の動きを封じ込める魔道具。
そして、先程と同じくリカルドの周囲にはお札がばら撒かれる。
「起爆!」
ルミナの叫び声と同時にお札が光り輝き、爆発音と共に土煙が立ち上る。
「どうせ、出てくるんだろうな…。」
俺は炎が燃え上がる光景を見ながら呟く。
「まあ、十中八九出て来るでしょうね。リカルド本人の生命力を考えても…。」
ルミナは俺の隣に立つと言う。
その背後に、誰かがいる気配を感じた。
俺が振り向いた瞬間、目の前には一歩早くルミナがいた。
リカルドは右の拳を思いっきり振り上げるとルミナに対して殴りつける。
ルミナもそれをギリギリで防ぐと、俺と共に吹き飛ばされる。
「さっきから、何でこうもリカルドの動きが読めないのでしょう。明らかに、あの巨体で動ける速さじゃない。」
ルミナが立ちあがると悔しそうに言う。俺は、ルミナの手に捕まると地面から起き上がる。
速いと言うより、何と言うか騙されている感じがする。
「ようやく、気づいてきたか。」
リカルドは俺達に言う。直後、周囲に白い霧のようなモノが現れる。
俺達はその霧を見渡す。ルミナの姿も目視だと見えずらいレベルだ。
「私の持つ魔術は、精神魔術。“絶対不可侵の世界”。これより、貴様らの攻撃はあの男には届かぬ。」
ザドキエルの声が聞こえる。
しかし、どこから声を発しているのか場所を特定出来ない。
「剣殿。出来る限り、お互いの距離は近いままでいましょう。下手に離れると、危険です。」
ルミナが俺に声をかける。
俺としたら、すでにルミナの場所がどこにいるのかいまいち分かっていない状況だ。いまいち、とは言ったが何となくの勘でこの辺りにはいるんだろうなくらいのフワフワした感触だ。
「ルミナちゃん、俺の姿視認出来てる?」
俺はルミナに問いかける。
「正直、どこにいるか分からない状態です。こう見えても視力は相当いい自信あるんですけどね。多分、この霧そのものが幻術を発動するトリガーのようなモノかと。」
ルミナはザドキエルの能力の説明をする。正直、説明をされたとこでどうこう出来る類のモノじゃないなと思った。
サタンかルルならどうにか出来るかもしれないが…。
突如、目の前に誰かが立っていた。
そして、それはいきなり斬りかかって来た。
「何だこれ!」
俺は叫ぶと、それを切り裂く。白い煙のように消えていく。
同時に複数体の同じようなモノが現れる。
直後、背中に激痛が走る。
何かしらの刃物に斬りつけられた痛みだ。
俺は後ろを振り向く。一瞬、リカルドの姿が見えた気がした。
どうやら、この霧に紛れて攻撃を仕掛けているようだ。
正直、どこにいるのかまるで分らない状態だ。
「はあっ!!!」
突然、ルミナの声が響く。そして、ルミナの刀が俺を襲う。
「違う!俺だ!」
俺はルミナの刀を防ぐと、叫ぶ。
「すみません!間違えました!」
ルミナはそう言うと、すぐに後ろを振り返る。
俺はルミナと背中合わせの状態で大剣を構える。
「俺はまだリカルドの姿は追えてるけど、そっちは?」
「正直、全く…。ハッキリ言って、今背中の向こうにいる剣殿ですら誰か分からない状態です。」
どうやら、視覚も聴覚も全て奪われた感じのようだ。俺の方はフンワリとした状態だがまだ多少は見えて、そして聞こえてるのが不思議だ。
しかも、先程から何だか大剣の様子がおかしい。まるで、今まで握っていたモノと違う感覚のようだ。
「くっ!」
ルミナが声を上げる。どこかを斬られたようだ。
俺の体にルミナの血が流れ落ちる感じがした。
「やはり、貴様は出来損ないだ。魔術での戦闘では全くもって使えない。」
リカルドの声が響く。趣味の悪い魔術だと思う。
明らかにルミナの精神を蝕んでいるように思う。
「ルミナちゃん!」
「大丈夫です!ただの幻聴です!この程度、何の効果もありません!」
ルミナが苦し紛れに叫ぶ。同時に再び、リカルドの持っている大剣がこちらに来る感じがした。
俺はそれを防ぐ。しかし、ルミナは何も見えていないのかまたどこかを斬られたような音がする。
「魔力を持たない魔術師などこの世界に必要ない。貴様は、我々魔術師を侮辱していることがなぜ分からぬ。」
リカルドが大剣を振るいながら、霧の中からルミナに向けて言う。
ルミナも何とか防ごうとむやみやたらに刀を振るうが全て空を切る。
「私は…。私を大切にしてくれる人のためにこの刀を振るう義務がある。例え、魔力がなくても、魔術がなくても…。私は、私の夢を諦めない!」
ルミナはそう叫ぶと、カキンと金属音が鳴り響く。
そして、背後でバランスを崩したリカルドが立っていた。
「ルミナちゃん!頭を下げて!」
俺はそう言うと、ルミナが頭を下げてくれることを前提として大剣を振るう。
そして、リカルドの胴体から血しぶきが飛び散る。
その瞬間だった…!俺の大剣が黒く輝き始めた。
そして、周囲を覆っている霧が少しだけ晴れた。
大剣は先程までの銀色に輝く刀身ではなく、黒く輝いていた。そして、先程よりも細く、そして柄の部分も形が変わっていた。
「“退魔の剣”!!!」
リカルドはその大剣を見ると、声を上げた。




