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おわコン!~お笑い芸人は異世界で最高のコンビ!~  作者: 印朱 凜
第4章 トンカツで婚活
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シュナミティズム3


 ベッドの上に神妙な顔つきで座るアビシャグ。その寝癖がついた黒髪には、朝日に伴う光沢が宿った。


「シュナミティズムの魔法を掛ければ、どんな傷病も立ち所に回復できます。その方法とは、術者が一晩の間、患者と同衾する事です。お互いが裸となって抱き合えば、どんな傷でも癒やす事ができるのです」


「は、裸で抱き合うって、まさか……」


「勘違いしないで下さい。真面目な話をしてるのですよ!」


「はい、すんません。続けて下さい」


 更に赤面したアビシャグは照れ隠しなのか、枕をギュッとした後に顔を伏せた。


「この術式には厳しい条件があって、術者の魔法使いには絶対の純潔さが求められます。お互いに肌を触れ合いますが、決してエッチな事をしてはダメなのです」


「ていう事は……何や、若い未婚の魔法使いにしかできない秘法って事か……」


「そうなりますね。男女の仲になったとたんに、シュナミティズムは効力を失い、術者は二度と同じ魔法を使えなくなります」


「そうか……やっぱり、あっちゃんは処女やったんや」


「ぶふっ! 当たり前でしょ! どさくさに紛れて何を言うんですか!?」


「別に怒らんでもええやん。要するに、今しか使えない特別な魔法という訳やな」


「でもダケヤマさんが術式の完成直前に中断させてしまったので、中途半端な回復となってしまいましたよ。どうして朝まで大人しく寝ていなかったんですか……」


「そういや、まだ首が鞭打ち症みたいやし、体のあちこちが痛むなあ」


 アビシャグは、暫くダケヤマの肉体を観察すると、ドキドキしながら意を決したように言う。


「ダケヤマさん、もう一度だけ一緒に寝ましょう」


「えええぇぇぇ! まだ続きをやるんか?」


「いいですか、今度は絶対に……分かっていますよね?!」


 アビシャグの迫力に、ダケヤマは黙って従う他なかった。再び横になると、彼女はいそいそとシーツを掛けながらシュナミティズムの呪文を詠唱し始める。細い指先で、宙に逆三角形の複雑な図形を描いた。


「ダケヤマさんはリラックスしていて下さい。私が動きますから」 

 

 アビシャグは、急に大胆となってダケヤマにのしかかると、体を隠していた枕を抜いて全裸でぴったりとくっ付いてきたのだ。

 

「ぐぐっ……!」


 ダケヤマは、何とか心を鎮めようと努力したが、魔法少女の薄い胸から伝わってくる心臓の鼓動を感じるにつれ、共鳴するように昂ぶってしまう。

 直接触れ合う肌と肌の温かさが、何とも心地よい。おまけに清らかで透き通るような長い黒髪からは、蘭奢待もかくやと思わせる香りが、ほのかに漂ってくる。

 ふと見ると、ぺたんこ座りしていたシーツには、一筋の涙のような跡が細い毛と共に残されていた。



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