シュナミティズム2
ダケヤマは上体を起こすと、冷静に周囲の状況を確認した。だだっ広い寝室に天蓋付きベッドが一つ、ぐるりとレースに覆われていた。これだけでも、まだ異世界にいる事がはっきりした。
戦いの中、自分の操作するフォークリフトが城壁へ衝突寸前に宙を舞い……その後の記憶がない。シートベルトは装着していたが、たぶん全身を強打して大怪我したはず。まだ体に残る青アザや痛みが、それを証明していた。
改めて見ると、ダケヤマのすぐ隣にいる裸の少女は、シーツに包まってベッドの中で震えていた。
「はっくしょぉい! ……あっちゃん、何で俺と一緒にベッドで寝てんねん?」
うつ伏せになったアビシャグは、頭に被った枕をちょっとどかすと、ダケヤマの方をチラ見した。眼鏡を外した顔は真っ赤に染まっている。
「いやあ! 何で足が3本あるのですか!?」
はっとしたダケヤマは、股間を押さえながら必死で弁明する。
「い、いや、これは男なら誰でも……朝になったら起こる生理現象みたいなモンで……。そうや、俺はそっちの趣味はあんまりないし、決して子供みたいな裸を見てコーフンした訳では……。いやいやいや、どう言うたらええねん、コレは!?」
「……ひ、酷い! 触っておきながら……! わあああ!」
「ち、ちゃいますねん! 決して、あっちゃんはセクシーさが足りず、幼児体型でしょうもないって言うてる訳じゃなくてですね! もう十分に魅力的な女性ですよって……あああ――っっっ! 何を言うとるねん、俺は! 何を言わせんねん、君は!」
左手に残るアビシャグの柔肌の感触。何だか甘い香りが漂う天蓋内。目の前には健康的な太さの美脚。しかもシーツの届かない先には、意外と丸みを帯びたお尻が見え隠れしている。ダケヤマは頭を打った後遺症なのか、美少女に当てられたのか、何だかクラクラとしてきた。
「そんないやらしい目で、私を見ないで下さい……」
「見るなってアンタ……そりゃあ無理やで。――ていうか、このシチュエーションは一体何やねん? 寒いから猫みたいにベッドに潜り込んできた訳やないやろ? 俺には何が何だか、さっぱり分からへんわ……」
「……ごめんなさい、そうですよね……」
ようやく大人しくなったアビシャグは、ベッドの上にぺたんこ座りすると、大きなふかふか枕を抱いて体を隠し、代わりにシーツをダケヤマに譲り渡した。
「あっちゃん…………」
「怪我人に向かって、色々キツい事を言ってすみませんでした」
そしてアビシャグは枕の端を太股に挟むと、照れながらも少しずつ語り始めてくれた。
「これが私のヒーラーとしての真骨頂。シュナミティズムです」
「しゅなみてぃずむ……?」
「魔法使いアビシャグはディアブルーンにおける、究極の回復魔法の使い手なのですよ……」




