ライオンの騎士
円卓の騎士団長が、気も新たに戦闘に加わってきた。信頼していた宮廷魔道師の舞鶴ジャクソンを失ったショックがまだ癒えないのだろうか、この期に及んで、まだ何かを口走っている。
「ああ~、ヘカテ怖い、怖い、怖い…………」
「団長! 今が千載一遇のチャンスです! ヘカテを挟み撃ちにしましょう!」
穴金が叫びながら、剣の切っ先から電光をスパークさせた。
一方ヘカテは構えたまま、差し出した右手で円を描くような不気味すぎる動きで呪文を詠唱する。
そして団長の無頼庵は、我に返ったように気合いを入れ直すのだ。
「い、行くぞ、穴金! 仇討ちだ! 管理職ヒートショック威力マシマシ!」
「うおおお! サンダーボルトレベルMAX!」
穴金は一瞬で間合いを詰めると、剣先から放電しながら袈裟斬りを決めた。が……当然のようにかわされる。かわす方向に返す刃先で一撃を加えると見せかけ、絶妙にヘカテを誘導した。
「今だ! チェストォォォー!」
ついにヘカテの背後から団長入魂の一撃が決まり、鋭い剣先の突きがヘカテの体を貫いた。
『やったか?』
手応えに勝利を確信した刹那、ヘカテを構成する黒い塊がパンクするような音を立てて捻り裂けた。
「な、何とおおお!?」
魔法技の威力が残っている無頼庵は勢い余って、そのまま穴金に向かって突き進んでゆく。
「避けきれない!?」
冴えた反射神経で穴金は防御姿勢をとったが、モロに団長の重い突きを食らってしまった。
その場にいた全員が、赤騎士の断末魔のような叫びを聞く。
火花散らし、穴金の兜が宙を舞う。円卓の騎士の同士討ちを受け、甲冑の赤い塗装が剥げ落ちた。
「だ、大丈夫か!? 穴金?」
トラックにはねられたように転がり続けた赤騎士は、ようやく大の字になってショックを受けきった。
「大丈夫じゃないっすよ、団長……」
囮を使ったネクロマンサー・ヘカテは、くくと短く笑いながら騎士団を翻弄している。当然、一筋縄ではいかないような正真正銘の化物だ。
ようやく駆け付けたライオンの騎士ことアスカロンは、ダイナゴンに向かって意外な要請をした。
「ダイナゴン! さっきの風魔法をフルパワーで俺に向かって放ってくれ!」
「ええ!? コントロールが難しいし、ただでは済まないような……」
「かまわん! ターボをかけて、ヘカテの呪文が完成する前に懐に突っ込むんだ!」
ダイナゴンは意を決したのか、自らのMPを削り取るように技に集中する。その力に呼応するかのごとく、細身の剣に光が帯びてきたのだ。




