ゾンビ軍団の襲来5
城の正門の高台に位置する見張りが、絶望感を口にする。
「何て数のゾンビどもだ! 城壁は突破できないだろうが、いつまで城内を守り続けることができるのか……」
数千から数万体規模のゾンビの集団が、蟻の大群のごとく城外まで押し寄せて来た。
逃げ遅れた領民は、ことごとく醜い化物の餌食となり、その仲間の一員となったに違いない。
付近からの避難民を城内に受け入れたのはいいが、食料や物資は限られている。ゾンビと変わらない人数の領民を長期に渡って養っていけるはずもない。やがて兵糧攻めのようになり、閉じ込められた城内にも地獄絵図が広がっていく事は明らかであった。
このような状況の中でも、積極的に打って出る一団があった。
シンニフォン王国の守護者である、かの円卓の騎士達だ。
アスカロンと忍者カゲマル、ハーフエルフののべ太は、かつての仲間達と共に戦える喜びに息巻いていた。先頭の忍者が何か叫んだ。
「これだよ、これ! パーティー復活おめでとう。アスカロン」
場違いのような長髪忍者、カゲマルの高速移動にも鎧装備で後れを取らないアスカロンは、彼に大声で言った。
「四人パーティーには、大事なメンバーが一人欠けているがな」
背に弓を装備した聡明なハーフエルフ、のべ太も並走しながら答えた。
「魔法使いティケだろ? 彼女どこ行ったんだろうな。依然行方不明のままなんですけど」
「パーティーに魔法使いは不可欠だ。バランスが悪すぎる」
「僕の魔法だけじゃ不満だって言うのかい? まあ、仕方ないかな。でも~、ティケを探す旅も、しばらくお預けって感じかな?」
「残念ながら、そういう事だな! 喰らえ! ――ホリゾンタル・スラッシュ!」
屈強なアスカロンが、魔法力を上乗せしながら長剣を水平に薙ぎ払うと、眼前の生々しいゾンビ数十体の胴体が真っ二つとなって宙に舞った。
「珍しい攻撃型忍者の技を見よ! 忍法・火炎地獄車!」
カゲマルが東洋系魔法の術を使うと、火の玉が火炎車となって、押し寄せるゾンビの波をナパーム弾のように焼き払ったのだ。
最期にハーフエルフの摩訶不思議な弓術が炸裂した。
「醜い者達は、僕の美的感覚にそぐわない!」
のべ太の放つ矢は直進するだけでなく、右に左に曲がりながら確実にゾンビの首を飛ばしていた。
おまけに彼は剣技にも優れているので、懐に飛び込んでくる斧を振り回すゾンビの腕を、すれ違いざまに胴体ごと切り裂いてゆくのだ。




