ゾンビ軍団の襲来4
漆黒のマントを身に纏った魔道師・舞鶴ジャクソンは、被った尖り帽子をブーメランのように投げて馬上から飛び降りた。鳶のように高々と風に乗り、フワリと父親の元に落ちた帽子……、その下の地面から湧き出すように魔道師は登場する。その髪と髭は黒い衣装とは対をなすように白く、どこまでも長かった。
「これは神官からの頂き物でね……」
呆気に取られた父親の前になると、聖水で満たされた青い小瓶をゾンビの群れに投げつけた。
「呪われし死せる者達よ、己の眠る地を思い出し、いずこへと去るべし」
舞鶴ジャクソンが早口で呪文を詠唱すると、聖水を中心に円状の衝撃波が伝播し、一瞬で死者達の骨肉が粉微塵に瓦解した。不思議な事に父親の肉体には何の影響も及ぼさず、波だけが通過していくようである。
立ち尽くした父親の周囲には、生臭い吹きだまりが黒い霞のように舞っていたが、やがて風によって森の方へと吸い込まれていった。
「ま、魔道師様、私より先に娘の方を……!」
舞鶴ジャクソンは微笑を浮かべると、金属と木を組み合わせた杖の頭で城の方向を示した。そこには槍を振るう青騎士ルンバ・ラルがゾンビどもを薙ぎ倒していた。
「そら、そら、そらあああ!」
ルンバ・ラルはダフニーを乗せた子馬の手綱を掴むと、自身の馬と並走させながら城まで導いて行ったのだ。
「この娘と後から来る父親を頼むぞ!」
「はは! 青騎士様」
城門を護衛する兵士にダフニーを託すと、ルンバ・ラルは手綱を引き、嘶く愛馬の頭を元来た道へと向けさせた。
「さて、再び化物達を蹴散らしてくるかな!」
すぐにゾンビ達が群がってくる。つい最近ゾンビになったばかりの新鮮な遺体は、鎧を着たままだった。
「魂無き者達は、手応えがないのう……」
ルンバ・ラルが魔法力を乗せて槍を水平に振るうと、数十体のゾンビが吹き飛ばされてバラバラになりながら宙を舞った。
「雑魚とは違うのだよ、雑魚とは……!」
その頃、団長の無頼庵と魔道師・舞鶴ジャクソンは、たった二人で夥しい数のゾンビ軍団を蹴散らしていた。
「怖い……!」
馬上の無頼庵は、そう呟きながら朽ち果てた兵士姿のゾンビの首を飛ばした。
「ああ、怖い怖い!」
団長は汚い返り血を浴びながら、『怖い怖い』を連発している。彼の馬が通った後にはゾンビの手足や首を始めとする、もげたパーツの山が堆く築かれていった。
「ああ~! 怖い、怖い、怖い~!!」
「団長殿、やめて下され! こっちまで怖くなってきます!」
ネクロマンサーの魔法を中和しながら進む魔道師・舞鶴ジャクソンは、思わず大声で叫んでしまったのだ。




