魔族軍
(こんな弱い生き物なら、もっとおら、人間と戦える………………………)
元サルマレアの奴隷であり、被験者であった、現在は各集落のリーダーだった五人。その内二人は、名目的には魔族の軍勢を率いる者として今新たに認識する。自分達が既に普通の存在ではないこと。遥か昔のような灰色の記憶。あれほど自分達を捕らえた人間を憎悪していた。エルフを憎み。自分を自分達を蟻の手足をもぐように。あの眼差しを思い出すや、うっすらと底知れぬ怒りが、魔力となり体を覆う。今や素朴な巨人の青年はいない。そこに立つのは異形の生物。モンスターのような外見。巨人族だった体格。底知れぬ体力+物理高防御を持つ甲殻類。それも巨大種の細胞が組み込まれ。たった一人生き残り、村人はみな死んでいる。幼なじみの優しい少女も。隣りの気のよい木こり、狩人のじいさん、村長、雑貨屋のおばあちゃんもみんな実験材料にされた…………………。
合成人間として、ただ一人村の生き残り…………………、
新たな生を得た巨人と甲殻モンスターのキメラ、アザルゼシアは、眼下に広がる無数の死体を眺めながら、戦意を上げていた、怒りと悲しみを抱きながら。右は甲殻類のハサミ、左手は巨人の拳を打ち付け、好戦的に笑う、笑う、暗い眼差し。底知れぬ闇を奥底に。ただ楽しそうに虫の息である。国境軍であった人間の頭を。グシャリ果物を砕くように足で踏みつけていた。
「フハハハハハハハハハハ、人間の血も赤いのか、糞虫どもの癖に生意気だな」
狂気じみた歪んだ愉悦が、口元を歪めさせていた。
元々、アザルゼシアは、大国の干渉地帯にあった小国の辺境の村に住む。巨人族の農夫であった。小巨人族と呼ばれる種族で、彼等の多くは温厚な性格の優しい気性をしており、巨人族でありながら平均身長は3m前後と。巨人族にしては小柄で、素朴で純情な青年であった、しかし小国の王は、エルフに金で村を売った。対面を気にしていたのか、人間の奴隷狩りに任せ、女は慰み者にされ、一夜にして絶望的な光景が与えられた。
やがてアザルゼシアは知った。本当の絶望があることを。まだ来る日も来る日も実験に次ぐ実験。苦しくて、辛くて、痛みにのたうち回る日もあった。
しかし……………………。
あの日…………………………。
アザルゼシアはエルフに連れられて、巨大な地下施設を訪れ。あまりの光景に。血が沸騰する程の怒りと悲しみのあまり。咆哮していた。
アザルゼシアの眼前で、幼なじみが、異形のモンスターに、まぐわされ狂態を見せていた。しかもモンスターの子どもすら身籠り、腹部が膨れていた。あまりな光景は現実とは思えず。ただ慟哭した。
アザルゼシアの正気を無くすこと。それこそがエルフの科学者の狙いである。今は存在しない巨人族の復活。またはそれに準ずる能力を持たせた合成モンスターを産み出すこと。その研究素体。それが巨人族を被験者にした理由であると。慟哭するアザルゼシアに。実に楽しそうに笑い。語っていた。
『覚醒』
後に。エルフの研究者が名付けた技術。因子を投与した被験者の正気を無くさせる。狂気によって産み出された手段は、人間の持つ危機感を煽ることによって、急激な変格を与えること。それによって投与された細胞によって『覚醒』させる。そして産み出されたかのが、古き種族のなかでも戦闘民族と知られた。赤き巨人の一族の因子を目覚めさせること。いわゆる巨人族に備わる底知れぬパワーが、自在に操れたら。終結として、先祖帰りをさせることを思いつき。
巨人族の村に目を付けた。
ただひとつの成功例。それがアザルゼシアである。その姿は異形である。
「おで達強い。強くなった!」
興奮したように鬼人族をベースにしたキメラ。ゴウゼルアが、獰猛に笑う、ただ普通のオーガと違って、背には透明な羽が生えていた。
「少し逃がしたが…………、おら達なら、セドロアだって滅ぼせるだ」
本当は自分達を実験したエルフではないことは知っていた。だがそれでも止まることはできなかった。アザルゼシアは人間に対しての復讐心から。ゴウゼルアはただ戦う事がただ好きなオーガの身体に。人間の子どもの脳を移植された存在である。純粋たる。子ども故に身体から発する。戦闘意欲に引きずられていた。危うい均衡。心と肉体のバランスがまともだったのが、ゴウゼルアだけで、彼が率いる軍勢は、心が壊れてしまっていたが、モンスターよりもましな知能があった。何故か5人に従うため。それぞれが集落を作り出し。地下施設の外にあっは廃棄場から程近い場所で、集落を作っていた。それが終わりと始まりの物語りにつながっていた。二人が率いる被験者達。元人間、巨人、モンスター、魔族、各種族のハーフ、獣人。多種多様な異形達。その数10万を使い。国境砦を僅か数日で落としていた、
その砦でで、足りない武器・防具を手にした、二人は、恩人である。魔族を王と崇めた。当初こそマークアは渋った。マークアは魔族の侵攻軍の将軍の一人でしかないと。異形であるアザルゼシアに話してくれた。今までエルフ達、人間達から異形の怪物と謗り、侮蔑されていた合成人間達は、冷淡でありながら一人の存在として扱ってくれた。住む場所と。腐っていない当たり前の食料を与えられた。それだけでも涙を流し。心が壊れていた者すら。涙を流し焼きたてのパンを食べた。
だからではないが、一個人として扱ってくれた魔族の方が、人間よりもましであると悟る。
「さておでたちは、マークア様の作戦通りに行動する」
言葉すら満足に話せない者が大多数である。魔族軍は、砦を放棄して、巨大な橋を渡り。セドロア国内に侵入する。
数日後。河川を渡り、何故か河川を背にするように。陣地を敷いていた。理由は分からないが、二人にとってどうでも良かった。ただ人間さえ殺せれば死んでもよいとさえ。思ってるもの達の集まり。それが魔族の庇護を求めた大多数の願いであった、それゆえに戦いの末に無数の人間を殺したが、二人にとって、戦うごとに生きる喜びを見いだしていた。




