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そうして旅は続いていく

 そうして旅は順調に進み、隣国へと辿り着いた。

 ジオナール殿下方は既に到着していて、私達の事を首を長くして待っていたらしい。

 周囲にいる魔物達については、レオナール様からの手紙を読んでいたおかげでジオナール殿下方も、隣国の王族や重臣の方々も驚く事はなかったけれど、その数の多さには顔をひきつらせていた。

 それを見て、私は少し申し訳ないなと眉を下げ、改めて、視線だけで周囲を見回す。

 そこには道中仲間になった、数十匹にも及ぶ魔物達がいる。

 うん、多すぎである。


「……凄いな。圧巻の眺めだ。これを全てナツメ様が行なったのか……」

「はい、兄上。それで、私の提案については?」

「ああ、大丈夫だ。父上からも了承を得ている。人選を考慮し編成するとの事だ。先駆けとして、この者達が遣わされた」


 そう言ってジオナール殿下が視線を背後に向けると、騎士様らしき人達が五人、一歩前へと出て右手を胸に当てた。


「ご無沙汰しております、殿下、聖女様」

「騎士団長に近衛隊長か。それと……既に編成済みの隊員、か?」

「左様にございます。まずは我々を慣らさせて戴きたく」

「団長自らが来たか。まあ、当然と言えば当然だが。……ナツメ様、しばらくの間この者達も貴女様の近くに侍り旅をします。よろしいですか?」

「え、はい……構いませんが……えっと、どうしてか、聞いても……?」

「勿論です。……今後、私が騎士団の一隊長となり、新たな隊を立ち上げるんです。魔物をも隊員として迎える、新たな隊を」

「えっ。そ、それって……。……じゃ、じゃあ、この子達……?」

「はい。私の隊の隊員となります。……貴女も、ですが。了承して戴けますか?」

「! 私も……」


 ……ま、まあ、当然と言えば当然だよね。

 魔物を仲間にする能力を持っているのは、私なんだし……。

 な、なんか、この旅が終わった後の私の生活方法、早くも決まったみたい……。

 うう……専業主婦には、なれなかったかぁ……。

 ……まあ、仕方ない。

 せめて、素敵な旦那様は見つけよう……!!


「……それは、レオ殿下では、駄目なのですか?」

「えっ!?」

「私が言うのはおせっかいというものですが……どうか、考えて差し上げて下さい」

「かんがえて…………?」


 いつの間にか近くにいたセイシン様に囁かれて、その言葉の意味を理解しようと頭を働かせる。

 考える。

 何を?

 レオナール様の事を。

 何について?

 "それ"……素敵な旦那について…………??

 ……素敵な旦那様、が、レオナール様じゃ駄目なのか、って、考えて、って、言われたの……!?

 驚いてセイシン様を見上げると、にこりと微笑んで頷かれた。

 それを見て、ボンッと、一気に私の顔が熱くなる。

 すると次の瞬間、レオナール様に手を引っ張られた。


「ナツメ様! お疲れでしょう、今日はもう休みましょう! さあ早く!」

「えっ、えっ? あの、レオナール様……!?」

「ああ、レオ殿下、大丈夫ですよ。ナツメ様のそのお顔は私に対してではありませんから、ご心配なく」

「へっ……!?」

「!!」


 セイシン様の言葉に、レオナール様の動きがピタッと止まる。

 そして、振り返って恨めしげな視線をセイシン様に向けたレオナール様は、再び口を開いた。


「……どちらにしろ、ナツメ様がお疲れであろう事は変わりない。休んで戴く。……よろしいですね、兄上?」

「ああ。だが、ナツメ様をお部屋に送り届けたらお前は戻れ。話の続きをする。ナツメ様、この魔物達に待機の指示だけして戴けますか?」

「あっ、はい! 皆、今日はここで宿泊だから! 大人しくいい子で休んでね!」


 私がそう声をかけると、魔物達がそれぞれ一声鳴く。

 そして各々が自由に動き始めた。

 ある者は草むら、もとい緑がある庭園へ。

 ある者は水辺、もとい噴水へ。

 ある者は木の上へ。

 ある者は屋根の上へ。

 私の部屋へ一緒に来る者や、警護のつもりなのか、部屋の扉の前を陣取る者もいる。

 それを一瞥して、『ほう』と感心したように、殿下方や隣国の方々は声を発した。




 それからの旅は、隣国の第二王子様と第三王子様が加わった。

 隣国の国王様と王太子様は美形だったのに、この王子様方は至って普通の容姿で、日野春菜さんは全く興味を示さなかった。

 なので、お二人は私の近くにいて一緒に歩いてくれる。

 レオナール様も、変わらず隣にいる。

 日野春菜さんはレオナール様の事は自分の側にと望んでいるようで、すり寄ろうとしては私達の周囲にいる魔物達に唸り声を上げられて威嚇され、悔しそうに断念していた。

 他の人には全く何の反応も示さないのに……どうやら魔物達は、日野春菜さんだけは敵だと認識しているようだ。

 頼もしい魔物達の壁に守られ、私の心は平穏に保たれている。

 しかしレオナール様は、そうでもないようだ。

 隣国の王子様方が、時々必要以上に私に接すると、すかさず私の手を握ってより近くに立ち牽制している。

 ああもう、可愛い。

 ……王子様方お二人は、そうやって牽制するレオナール様と、その度に顔を赤らめる私の反応を見て楽しんでるのだと思う、絶対。

 だって、目がそう語ってるし。

 先日、『そろそろ想いをうちあけて安心させて差し上げては如何ですか? 我々は今のままでも楽しいから良いのですが』と囁かれた。

 ……そうですね、王子妃を務める、その決心がついたら、その時にはすぐにでも。

 それまではもう少し、この可愛さを、堪能したいと思う。

 ちらりと横目でレオナール様を見て、それから空を見上げる。

 今夜は夜営。

 見上げた空には綺麗な月と星が浮かんでいる。


「レオナール様。月が、綺麗ですね」


 そう呟いた私の言葉につられるように、レオナール様は空を見上げ、『そうですね』と、微笑んだ。

こんな終わりとなりましたが、どうでしょう……。

話があまり広がらなかった……反省。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 [気になる点] でも主人公が前世の記憶持ちである必要があまり掘り下げられていなくて、ないと思いました。 専業主婦になりたいだけだったら、別の理由でもいいと思います。
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