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椿の花が枯れるまで【ノベル大賞2次落選作】  作者: 衍香 壮
第1章「緋色のウィッカとアジュールの魔女」
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第6話「紅唐の質問」

「ねぇ、リク」


「う、うん」


「単刀直入に聞くわ。貴方〝永遠の命〟について何か知らない?」


「え……そんなの聞いたこともないよ」


「そうよね。分かってて聞いたからいいの。じゃあ貴方のお客さんに〝老人〟はいなかった?」


「老人なんて沢山いすぎて……えっと、探し物ってのは人なの?」


「人であり物でもあるかもしれない。……アッシュはね、私と契約した悪魔なの」


「悪魔!?」


「それは驚くんだ」


「当たり前じゃん!? 見た目人過ぎない!?」


「〝人過ぎる〟って表現が些か引っ掛かるけど、まぁいいわ。悪魔はね、人間と契約すると人の寿命しか生きられなくなるの」


「どういうこと?」


「要約するとね。私が死ぬとアッシュも死んじゃうから、なんとか生き永らえたいってこと。それで異世界を旅してるの。永遠の命を探してね。それで〝三賢者〟の存在に辿り着いた。三賢者はね、それぞれ決まった容姿をしているの。メルキオールは青年の姿の賢者。バルタザールは壮年の姿の賢者。カスパールは老人の姿の賢者。カスパールは大の甘党らしくてね。異世界を渡っては菓子を求めて旅をしてるんだって。それで私は〝アジュールの魔女〟を探してたの。まさか、その対象に声を掛けられるとは思って無かったんだけどね。お陰様で探す手間が省けた。それでね、大量に菓子を買って行った老人とか、変なことを口走る老人とか、私みたいに変な格好の老人がいなかったか覚えてない?」


「ゴメン。それには協力出来そうにない」


「どうして?」


「協力したくないとかじゃなくてね。俺はだいぶ前から店を閉めてるんだ」


 まさか彼が菓子を作るのを辞めていたとは。それに考え及ばなかった自身を恥じる。落胆に身を染めていれば、アッシュが優しく手を握ってくれた。


「色々あってね。今は城で大魔女として働いてる。だからお客さんと接することは無くなっててさ。出来れば協力してあげたかったんだけど……」


「辞めたわけじゃなかったの?」


「俺、一言もそんなこと言ってないけど?」


 小首を傾げる彼に希望が湧く。それでも、手掛かりがないことには違いなかった。


「じゃあお菓子って作れる!?」


「え!? 今!?」


「そう今!」


「無理だよ!? 厨房も道具もないし!!」


「道具なら借りれば良かろう?」


「いや、いや、いや!? 第一、人様の厨房を借りるだなんてね!?」


「たまには、そういう経験をしてもいいんじゃないか? ビギナーズラックというやつじゃ」


「無茶ぶりにも程が……」


「待ってリク、話してるの私じゃないわ」


「え?」


 少年の声が聞こえ、声の主を仰ぐ。リクの傍らにはいつの間にか、可愛らしい姿の少年が座っていた。

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