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こちら学園探検部 ~別名指輪物語、正確には『ハーレム王と指を指される僕と変人女子高生達の輪による同好会の物語』~  作者: 於田縫紀
プロローグ 旅の仲間~正しくは『幸か不幸か集まってしまった高校生活という旅の仲間』
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第6話 人生とは残酷だ

 午前中は生徒会によるオリエンテーションだった。

 内容は課外活動の紹介だ。

 野球やバスケ等の一般的なスポーツ系は勿論ある。

 爽やかすぎて僕にはきっと縁が無いけれど。

 ああ、あっちの世界に行きたかったなという憧れは既に捨てた。

 この前の入会届記入とともに。


 さて、この学校の特異なところ。

 それは異様な文化部の多さだ。

 文化部が異様に多いのではない。

 異様な文化部、が多いのだ。

 正直なところ学園探検部などまだまだ甘かった。

 黒魔術研究会とか踊り念仏愛好会、○○○宗○○会に○○○○教まである。

 いや最後の二つは無かったかもしれないけれど。


 さてオリエンテーションの後は昼飯休憩。

 飯そのものは佳奈美とカフェテリアで一緒に食べた。

 でもカフェテリアが混んできたので別れて教室へ戻ってきた。

 別に佳奈美一人でも教室内でうまくやれない訳ではない。

 奴は変人だがそれなりの処世術は心得ている。

 中学時代も会話をする程度の友人は結構いたし。

 僕に対してその処世術を使ってくれないだけだ。


 さて、僕は現在近くの席の男子同士で会話中。

 具体的には前の席の交野、隣の席の小宮と三人。

 今は僕と佳奈美との涙々の関係を説明したところだ。

「そんな訳でさ。腐れ縁というか疫病神というかそんな間柄なんだ。わかってくれ」

「なるほどな」

 交野はうんうん頷いてくれる。

「なるほど、柏も苦労しているんだな」

「未だにここにいるのが冗談みたいな感じだよ。今朝起きてみて何処だと思った」

 二人とも頷いてくれる。

 ああ、こういう普通の友達がやっぱりいいんだよな。

 僕にそう思わせてくれる。

「まあそうだよな。俺みたいに親が転勤族だとすぐ慣れるけれどさ」

「そうなのか。それで」

「ああ、転勤して高校変わったり独り住まいになるよりはましだと言われてさ」

「俺は家がうるさかったからなあ。寮の方がまだ楽しめると思ってさ」

「ああ、よくある動機だよな、それ」

 そんな感じの会話で僕は交野達の誤解を解く事に成功した。

 そして幾ばくかの普通の友情を育むことに成功した。

 人間話せばわかるものだ。

 よしよし、そう思ったところだった。


「柏朗人さんというのは貴方ですね」

 右前から声がした。

 顔を上げると長い黒髪のいかにも日本風美少女という感じの女子がいる。

 同じB組の石動(いするぎ)(みやび)だ。

 名前は自己紹介の時覚えた。

 何分この人の自己紹介、なかなかに印象が強烈な代物だったからだ。

 それに僕も一応健全な青少年男子。

 美人を憶えない方がおかしいだろう。


「僕だけれど」

 取り敢えず呼び止められる理由はわからない。

 だからそう、当たり障りない返事をしておく。

「今日の放課後からご一緒します石動(いするぎ)ですわ。(みやび)とお呼び下さい。宜しくお願いしますね」

 なぬ!

 こういう自己紹介をされる憶えは無い。

 過去にも現在にも多分無い。

 というか直接話をしたのも今が初めての筈だ。


「あれ、何か……」

 間違いじゃ無いよね、と言う前に彼女はそそと立ち去ってしまう。

 そして生まれるのは誤解という訳だ。

「柏、よくわかった。昨日の佳奈美ちゃんは彼女では無い。つまり石動が彼女だった訳なんだな」

 おいおい、交野の声が妙に冷たいぞ。

「二股かもしれませんぜ、旦那。これは吟味しないと」

 おいおいおい小宮それは無いんじゃないか。

「誤解だ」

「何処が」

「いやこれには……」

 何せ理由がわからないから説明もごまかしも出来ない。


「僕はなにも知らないんだ」

 二人の視線が厳しくなる。

 かえって藪蛇になったようだ。

「そうか。君はいい友達だと思ったんだがな」

「人生の成功者め。呪われるが良い」

 そこまで言う事は無いだろう。

 さっきまで育んだ友情は何処へ消えたんだ。

 どうやって弁解しようかと僕が思った時、無情にも休憩終了のチャイムが鳴り響いた。

 すぐに教師が入ってくる。

 ああ、僕の弁解が。

 誤解だと叫ぶ僕の心の声は勿論友には届かない。

 所詮人は人とわかり合えない物なのだろうか。

 人生は常に残酷だ。

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