第10話 人に優しくない街づくり
最近の百円ショップは気が利いている。
ヘッドランプも売っているのはちょっと想定外だった。
せいぜいゴム手袋と軍手、ヘッドランプ用の電池位だと思ったのだけれど。
「雨具と手袋はもう少しいいのをホムセンで買うから買うなよ。ヘッドランプは面倒だからこれでいいぞ。あと日用品で欲しいものがあったら別途購入な」
そう神流先輩が言うので店を隅から隅まで探して文房具だのを色々追加。
ノート等も含めてそこそこ買い込んでしまう。
さて、佳奈美と雅は浮かれている感じだ。
ただの浮かれ様ではない。
盆踊りの夜店を物色中の小学生くらい浮かれている。
佳奈美は家がうるさくて思うがままお買い物なんて事は出来なかった筈。
雅もまあ似たような感じなのかもしれない。
「探検の時に武器に使えるかもしれないので、これは買っておくのです」
そう言って佳奈美が取ったのは昔懐かしい銀玉鉄砲。
「いや常識で考えろ。銀玉鉄砲で倒せる敵なんていると思うか」
「銀玉鉄砲っていうんですか、これ。弾はどれくらい飛ぶのですか。百メートル位ですか。鳥の狩猟で使えますでしょうか」
「いやこれおもちゃだから。五メートルも飛べばいいんじゃないか。子供同士が遊んでも怪我しない程度の威力だからさ」
そう雅に説明している間に佳奈美は次の獲物を持ってくる。
「おいおい佳奈美、次はなんだ」
「昔懐かしいけん玉なのです」
「あれこれ実家近くの民芸屋さんにもありましたわ。おいくら位でしょうか。二千円円程度でしょうか」
「ここは百円ショップだから値札が無ければ百円です」
「まあ、お安いのですね。お店は大丈夫なのでしょうか」
「日本のデフレの象徴なのですよ」
こんな感じで全然進まない。
そして背後で微笑ましく見ている神流先輩。
見てないで少しは突っ込み&止め役手伝ってくれ。
放っておくと動けなくなる位買い出しそうだ。
そんな訳で怪しい安物コスメとかにもどっぷりはまった結果として。
戦利品でディパックぎっしりにした佳奈美と雅がなんとか店を出た頃には、僕はラーメン屋の出汁がら状態という感じに疲れていた。
しかし更に追い打ちがまっていたりする訳だ。
「次のホームセンターはどっちですか」
「その国道をひたすら真っ直ぐだな。だいたい一キロくらいだぞ」
おい。
「そんなに遠いんですか」
「探検には体力も必要ですわ」
「そうなのです!」
2人はお買い物ハイになっているからいいけれど、僕は既に疲れ切っている。
我ながら田舎を舐めていた。
田舎は車移動が普通で常識。
だから歩く人の事なんて気にしない店配置なのだ。
まわりの店も駐車場完備で車前提の感じだし。
「さあ、行くのですよ!」
絶好調の二人と笑顔の先輩に挟まれ、殺風景な四車線道路の歩道を渋々僕は歩き出すのであった。
はあ。