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朝礼の前に、簡単に高圧洗浄機でコンクリートの床を流す。いつもの作業をいつもよりも若干早く行いながら、ぼーっとしていると、行き成り、肩を叩かれて、びくっと肩を跳ね上げて、驚いて、右斜め後ろを見る。
俺の反応に逆にびっくりした矢和目さんの顔に、内心、やべっと思った俺。顔を引きつらせながら、おはようございます。……と、言った。
——俺は、工場長のこの矢和目さんに日々、しごかれている為、若干苦手としている。
「おはようさん。坊、早いな。感心」
矢和目さんは、俺がガキの頃からここで働いている一番長い方だ。俺と二人の時は、盛んに坊と
呼ぶ。俺は、正直やめてほしいが、そんなことは絶対に矢和目さんには言えな……言いたくはない。
「……いえ、あ……、経理の沢さん、今日、休みでしたよね……。朝方、社長から電話が来て……手術が無事成功したみたいで……社長がいつ退院するのか気にしてたから言おうと思うんですけど……」
矢和目さんは、ぱっと顔を明るくして、渋めの顔をほころばせた。
「おー、良かったな……おやじさん、流石、こりゃ、退院もすぐかもしれねえな!」
家の工場で、親父のことをおやじさんと呼ぶのは、働いている方では、矢和目さんだけだ。……俺はよく知らないし、知りたくもないけれど、親父が頼りにしているこの矢和目さんとは昔色々あったらしい。
はい、と俺が、軽く受け答えして、矢和目さんは、休憩所で一服する。タイムカードを早めに押そうとしない矢和目さんは、硬くて真面目な人だ。仕事中は、煙草を吸うことをしない。夕方頃入った、
大型の修理が入っていて、矢和目さんは、きっと届いた部品のチェックでも一服しながらしているところだろう。矢和目さんが帰った後、頼んでいた部品が届いたため、休憩所に置いておいたから、気づいた筈だ。
あらかた、トイレ掃除も含めて清掃をした工場に、出社してきた方たちと軽く掃除をして、朝礼をする。
——俺はどうも潔癖で、親父の工場に働き始めてからすぐ、このようなパターンが日常化した。忘れたいことも多いし、俺が一番下っ端だし、……何より、なんだかんだ言って、俺は、工場の雰囲気が好きなんだ。……居ると落ち着く。……まあ、だから、長くいすぎて逆にきちんと休めと矢和目さんには怒られるが……。
朝礼で簡単なその日の予定などを皆でチェックして、お決まりの流れを終わらせた。その際に、親父のことを説明して、仕事を始める。
——仕事を始めてしまえば、忘れたいと思わずとも忙しさに思考は溶けていく。そのまま、夕方まであほみたいに仕事に一生懸命で一日は終わった。
そのまま、一日が死んだように終って、ふと、自動車の由宇哉に、目をやった。……今朝方の自分の様子が何故だかひどく微妙な気がして、今日は一日奴と話していない。
――由宇哉の声が初めて聞こえた時の出来事が俺の中に染み付いているからなのかもしれない。
……俺は、きっと声だけでもまた、愛美の声が聞きたいんだ。
苦しさに俯いた




