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64.宮沢賢治(4)

 「……君、になった夢、を見ていた。星の運河で漂う蛍の光で青白く染まる列車に乗って。得難い人に手を伸ばすと、届かず、泣けてしまう、夢」


 そこまで、口にしてしまった俺は、はっ、と顔をそむけた。


 ……何、初対面の相手に、俺は……。恥ずかしい。


 少女が、戸惑ったような空気を発するのが嫌で、俺は身体を縮めて。そして、はっと気づく。


 俺は、顔をそむけたままに何故、彼女がここに居るのかを問いただそうかとしたとき、空気が震えるような気配のままに、彼女は



 「っ……」


 ぼろぼろと泣き出してしまっていた。


 耳元で聴こえる、彼女の静かでいてそれで、耳を捉えて離さない静かな嗚咽は、俺の心を混乱させるに十分な破壊力で俺は戸惑った心地のままに、そのまま身体を固める。



 「……それ、私が、お父さんに手を伸ばすときの夢ににてる。宮沢賢治、でしょう?」


 「???」


 俺は、宮沢賢治?をちゃんとは知らなかった。


 無理もない。本なんて、教科書すらあんまり読みたくないんだ。


 宮沢賢治という人の名前を聞いたことはあっても、アメニモマケズ の人だろ?


 という印象しかなかった。


 「ほら、銀河鉄道の。功労さん、好きだったから、あなたももしかして、好きなの?」


 その言葉を聴いて初めて、銀河鉄道999という昔のアニメ?の絵をどこかで目にしたような気がして、ああ、あれ?え、宮沢賢治ってあれ書いてたんだ?アメニモマケズの人じゃねえの?という疑問が頭の中で爆発しそうになった。(今思うとアニメと小説は別物だし、俺は昔の物知らずな俺を殴りたい)


 「宮沢賢治は、やまなし も、私、好きだな。ほら、国語の教科書にも載ってる。私、教科書開いた時に嬉しすぎて、どきどきしたの」


 やまなし???なんだそりゃ?俺は彼女の言葉が殆ど理解出来ずに、これ以上聞いてられんと、むくりと起き上がった。


 「俺、まず、君が何故、俺の前に突然現れたのかを解明したいのだけど」


 俺の言葉に、彼女は、目を見開くとこういった。


 「君、俺じゃなくて、僕、でしょう?言い直して」


 俺は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。

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