63.宮沢賢治(3)
ほんの少しだけ、の気持ち、で、俺は、畳にごろんと横になった。ばあちゃんが、畳を新しくしたばかりのようで、緑色の畳は、イグサの柔らかな香りを放っている。俺は、いつの間にかうとうとと、溶けそうな瞼を落とした。
瞼を落とすと、先ほど出会った、あの、天使のような少女の小麦色の肌と、アーモンドアイの魅力的な瞳、小さな薄紅色の唇が目の前に浮かぶ。
そのまま、俺は、とろとろとした夢の中に、柔らかく沈んでいく。
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目を開くと、そこは、美しい星の運河のような場所で、俺は、星がきらめくような美しい青い蛍のようにぼんやりと光る列車の中に居た。
そこから窓の外を見ると、列車の窓に映る顔がある。それは、俺の顔ではなくて、あの、見惚れてしまった小麦色の肌の少女の顔だ。
俺は、少女になってしまっていた。けれど、俺は、そのことには何の疑問も持たずに、ただただ、窓の外の星が密集した運河を見て、涙を流す。何が哀しいのか、俺には解らないけれども、その小麦色の肌をした少女が窓ガラスに映った目じりからは、いくつもいくつも涙のすじが落ちて。
俺は、考えている。必死につかもうとしている。それはあの、列車の向こうに見える、溶けそうな運河の中の星たちの中に、俺の大事な人が星になって隠れているのだと、何故か確信しているからだ。俺は、哀しく、とても、苦しい思いをしている。
一瞬のうちに、ぱっと広がった星の粒が、いくつもいくつも列車の中に入り込んできて、俺はその、美しさに目を奪われる。
--それは、どこまでも、美しく、俺は、哀しくて、美しくて、ただただ涙を流す。
消えないようにと、必死で手を伸ばすと、柔らかな手で覆われたような気がして、俺はそのやわらかさにゆったりと安心した心地になる。
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はっ、と、目を開けた時、目の前に居たのは、先ほど夢見ていた、俺、否、少女の小麦色の肌、アーモンドアイの魅力的な瞳、小さな薄紅色の唇だった。
俺は、思わず、目をぱちぱちと、何度か瞬きをして。
ふっ、と、目をやると伸ばした俺の右手は、心配そうな少女の柔らかな手に包まれていて、俺は、一気に顔が赤く染まる。
少女は、心配気な顔で、そっとその可憐な唇を開いた。
「大丈夫、ですか?……すごくうなされて、泣いていたけれど、怖い夢、でも見たの?」
俺は、状況を全く読めずに、それでも、慌てて、顔を左右に振った。




