46.外出
「私と、百合姉さんと、私が呼んでいた彼女が出会ったのは、私が小さな頃、入院していた病院だったんです。その頃の私は、よく解っていなかったのですが、肺と心臓を患っていた私とは違い、彼女は、精神的な病を疑われたのですが、精神科へ移る前に先ずは全身を見る為に脳神経内科にかかっていたんです。そこの医療センター病院はとても大きな病院で、私は、知り合った彼女に会う為によく彼女の病室に出かけていました」
「彼女は、すごく不安定なところのある女性でした。精神的にも不安定なところのある方でしたが、弟さんが亡くなられてからより一層その状態がひどくなったようでした。入院しているうちに彼女の脳に重大な欠陥が見つかったらしく、……その時の私は知らなかったのですが、弟さん以外既に肉親も居なかった彼女は、余命宣告まで受けていたらしいです。彼女は、外出出来るぎりぎりの時だったのだと思います。……その時は解りませんでした。ある日、彼女は、私に言ったんです」
「綺麗な場所に行きたくない?って。私が、私はお外に出られないから、と断ると、良い方法があるわ。と、彼女はそういって、私を大きなキャリーバックに入るように言いました。その頃の私は、とても小さかったので……、容易に入れたんです。彼女は、半日の外出許可を取って、病院を出ました。私を連れて」
「彼女が運転する車に私を乗せて連れてきたのは、この場所です」
私は、ぼんやり、あのつり橋を見つめた。今でも、苦しい思いがする。ここに来てから、血の気が下がって仕方がない。一瞬、足の力が抜けそうになって、田邊さんに支えられて何とか持ち直す。
田邊さんの顔を見たら、田邊さんの方が真っ青で倒れそうだった。
急におかしくなる。この田邊さんという方は、なんとお人好しで……優しい方なのか。




